トランプ氏 立候補資格めぐる裁判も「生き残って」出馬できる背景
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月10日 11時59分
米ニューハンプシャー州ラコニアで演説するトランプ前大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ラコニア)
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月9日、ニッポン放送「小永井一歩のOK! Cozy up!」に出演。トランプ氏の米大統領選への立候補資格をめぐる裁判について解説した。
トランプ氏の立候補資格めぐる裁判が最高裁で開かれる
小永井)トランプ氏の大統領選挙の出馬資格をめぐる裁判が進行中で、立候補する資格があるのかどうかを問われています。口頭弁論が2時間余り続いたそうです。
宮家)アメリカの最高裁はご承知のとおり、三権分立ですから、立法・行政・司法のうちの司法府です。日本であれば行政府だけを政府と言うけれど、アメリカでは3つとも政府なのです。当然、最高裁も政治的判断をすることがあります。これが第一のポイントです。今何が問題になっているかと言うと、トランプさんが大統領選挙に出るわけですが、コロラド州の最高裁が「それはおかしいのではないか」と言っているのです。
小永井)コロラド州。
宮家)合衆国憲法修正第14条に基づき、2021年の連邦議会襲撃事件に参加しようとした、もしくは先導したトランプさんには「そもそも資格がない」とコロラド州では判断され、この問題が今連邦裁判所で審議されています。連邦レベルではいま連邦最高裁には9人の判事がいますが、6人が保守系です。トランプさんが大統領在任中に相当多くの保守系判事を送り込んだから、本来連邦最高裁はトランプさんに有利なはずなのです。ところが最高裁もアメリカ政府の一部である司法府なので、いくら何でもあからさまにトランプさんを支持することはできません。
コロラド州だけで決めることはできない
宮家)ポイントは2つあります。1つは、「トランプさんの出馬資格はない」とコロラド州は言うけれど、他の49州はどうなのか。コロラド州だけで決められるわけがありません。それもあって、「おかしいのではないか」という議論が今の連邦最高裁のなかにはあるようです。
トランプ氏は本当に連邦議会襲撃事件に加担したのか
宮家)更には、合衆国憲法修正第14条に関して、トランプさんは本当に反乱に加担したのかどうか、仮に加担したとしても、大統領には免責特権があるのかどうか。この2つの問題があるわけです。コロラド州の判断の是非の方は何とか判断できるけど、残りの二つの方は判断が難しい。今連邦最高裁がトランプさんに「あなたには出馬資格がありません」などと言ったら、それで選挙が終わってしまうでしょう。
最高裁は憲法修正14条には踏み込まず、トランプ氏が大統領選に出る可能性が高い
小永井)出馬できなくなってしまうのですか?
宮家)そうなれば逆に司法府の判断がが、立法、行政、特に大統領選挙を含む連邦レベルの政治全体を、ある意味で左右するようなことになります。大統領選挙前に連邦最高裁が判断してしまうのが本当にいいのかどうかを考えたら、いくらトランプに近い保守系の判事が多くても、そこまでは踏み込まない。だから、今回連邦最高裁は憲法修正14条の話はあまりしないのではないかというのが、いまの流れです。流動的ではあるけれど、一言で言うと、おそらくトランプさんは生き残ります。選挙には出るでしょう。やはり選挙をやらないと結果が出ませんから、今回最高裁はあまり踏み込まないのではないかという印象を持っています。
共和党を「トランプ党」にしてしまったトランプ前大統領
小永井)これだけ裁判を抱えているのに、共和党支持者のなかでトランプ氏の人気はなかなか衰えないですね。
宮家)トランプさんには強烈なキャラクターと、政敵に対する攻撃的姿勢がある。それがトランプさんに反対する人に強く向かうわけです。そうすると、見事にみんな倒されてしまう。いまの共和党はトランプ党になってしまった。要するに乗っ取られてしまったのです。トランプさんに反対する人は今は静かに黙って、攻撃されないようにしている。萎縮し、ある意味では忖度しているのかも知れません。ですから、共和党内でトランプさんは圧倒的に強いのです。ただ、本選挙がどうなるかは別の話で、今はわかりませんね。
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