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「峠の釜めし」は、なぜ美味しいのか?

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月12日 11時55分

「峠の釜めし」は、なぜ美味しいのか?

【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
峠の釜めし

峠の釜めし

駅弁好きな人もそれほどでない人も、みんな知ってる「峠の釜めし」。群馬のローカル線の終着駅近くにある店を訪ねると、週末となれば、朝9時の開店と同時に釜めし売場にはサッと行列ができます。この「峠の釜めし」は、どのようにして作られているのか? そして、なぜ美味しいのか? 製造する会社に話を伺うと、その美味しさの理由や尋常ではないこだわりが見えてきました。

E7系新幹線電車「あさま」、北陸新幹線・高崎~安中榛名間

E7系新幹線電車「あさま」、北陸新幹線・高崎~安中榛名間

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第48弾・荻野屋編(第1回/全6回)

北陸新幹線「あさま」が、群馬・長野県境の碓氷峠に向けて、力強く走り抜けていきます。今年(2024年)3月16日には、金沢~敦賀間が延伸開業する北陸新幹線。1998年の長野冬季オリンピックに合わせて、ひと足早く“長野新幹線”として開業したこの区間を、敦賀発着の「かがやき」「はくたか」が走る日が、あと1ヵ月あまりでやって来るわけです。時代と共に碓氷峠を越える鉄道風景も、日々変わっていきます。

荻野屋横川店

荻野屋横川店

そんな峠越えの旅のお供として、全国区の人気を誇る駅弁といえば、「峠の釜めし」です。昭和33(1958)年2月1日の発売開始から2024年で66年となりました。釜めしの製造拠点は何ヵ所かありますが、JR信越本線・横川駅近くにある荻野屋横川店に隣接したセントラルキッチンもその1つ。「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第48弾は、峠の釜めしを製造する「株式会社荻野屋」に注目いたします。

峠の釜めし

峠の釜めし

駅弁の代名詞的な存在と言っても過言ではない「峠の釜めし」(1300円)。ネーミングは、万葉歌人の1人、下野国の防人だった他田部子磐前(おさだべの こいわさき)が詠んだ和歌に由来するといいます。この「峠の釜めし」を開発した4代目の髙見澤みねじ社長が、古典文学を好きだったこともあり、そこをヒントに、「峠の釜めし」と命名したとも云われているそうです。今回は、製造風景の画像を提供いただいて、エピソードを伺いました。

峠の釜めし製造風景(画像提供:株式会社荻野屋)

峠の釜めし製造風景(画像提供:株式会社荻野屋)

●温度管理に細心の注意を払って作られる「峠の釜めし」

秘伝の出汁で炊き上げた茶飯の上に9種類の具材を載せてできる「峠の釜めし」。どの工程も手を抜くことができないそうですが、カギとなるのは、衛生の上でも温度管理だといいます。とくに鶏肉は繊細なので気を遣っているのだそう。ちなみに米は、南魚沼産や安曇野産のコシヒカリをブレンドして自家製米、しっかり水に浸してから使用。茶飯は、数種類のブレンドした醤油と昆布だしで、ガス釜を使って炊き上げているということです。

峠の釜めし包装風景(画像提供:株式会社荻野屋)

峠の釜めし包装風景(画像提供:株式会社荻野屋)

●産地より大事な「品質」!

荻野屋によると、「こだわりは全て」と断言できるという「峠の釜めし」。食材については、産地よりも品質にこだわっているといいます。どこで作られ、どこで仕入れているかといった点も吟味しているとのこと。それゆえ、年によって産地が変わることもあり、食材の仕入れの契約を更新する際は、しっかりクオリティの確認をしているのだそう。場合によっては、トップが自ら現場へ足を運んで決めるケースもあるということです。

峠の釜めし

峠の釜めし

【おしながき】
・味付けご飯(コシヒカリ、醤油、昆布だし)
・鶏肉煮
・筍煮
・椎茸煮
・牛蒡煮
・うずらの卵
・グリンピース
・栗甘露煮
・あんず
・紅生姜
・香の物

峠の釜めし

峠の釜めし

感銘を受けたのは、荻野屋の弁当では保存料などを使用していないと話していたことです。それは保存料を使うと味が変わってしまうからなのだそう。美味しい弁当を味わって欲しいがゆえに、温度管理は配送時も徹底的にコントロールされ、製造後も急速冷却はせず、自然に冷ましながら、完全な冷蔵庫のような車では運んでいないといいます。一方でリスクが髙い、高温多湿な時期の遠隔地での販売は、きっぱり諦めているといいます。

211系電車・普通列車、信越本線・群馬八幡~安中間

211系電車・普通列車、信越本線・群馬八幡~安中間

荻野屋の本社があるJR信越本線・横川駅は、平成9(1997)年の北陸新幹線(高崎~長野間)の開業で横川~軽井沢間が廃止され、毎時1~2本のローカル列車がやって来る終着駅となりました。それから四半世紀以上経った今もなお「峠の釜めし」は、普段は鉄道にあまり乗らない人にも「駅弁」として広く知られています。なぜ、荻野屋の弁当は、広く愛されているのか。お店の歴史を紐解きながら、そのトップに話を伺ってまいります。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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