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SLIM月面着陸後、成果着々……

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月12日 17時20分

SLIM月面着陸後、成果着々……

「報道部畑中デスクの独り言」(第360回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、「SLIM」の月面着陸について—

10バンド詳細観測を行った岩石(JAXA、立命館大学、会津大学 提供)

10バンド詳細観測を行った岩石(JAXA、立命館大学、会津大学 提供)

1月20日、日本初、世界で5ヵ国目の月面着陸という快挙を成し遂げたJAXA=宇宙航空研究開発機構の実証機「SLIM(スリム)」。エンジンの異常で想定と異なる姿勢で着地したことから、太陽電池が発電できない状況になりました。

しかし、その後、太陽の角度が変わり、太陽電池に光が当たったことで発電を開始。28日、休眠状態から目を覚ましたSLIMは搭載された「マルチバンド分光カメラ」と呼ばれる特殊なカメラで月面の岩石を分析する任務を果たしました。

物質には必ず光を放射または吸収する性質があり、その光の波長を分析すると、その物質固有の波長が現れます。これを俗に「スペクトル」と言います。化学的な「指紋」のようなものですが、これにより、その物質が何でできているか、成分が分析できるというわけです。マルチバンド分光カメラはさらに望遠機能を持ち、狙いを定めた岩石を詳しく計測できるということです。

今回、SLIMが挑戦したのは、マントルという地中深くにあったとみられるカンラン石の成分。いわゆる「月の石」はアポロ16号などが採取したことで知られていますが、マントルの内部までは掘り下げていません。SLIMは着陸後の限られた時間のなかで、岩石に“ズームイン”。これも月周回衛星「かぐや」などで、マントル由来の岩石がありそうな場所に“あたり”をつけ、ピンポイント着陸できたことでもたらされたものと言えます。

電力回復後に観測された月面 その名も「あきたいぬ」(JAXA、立命館大学、会津大学 提供)

電力回復後に観測された月面 その名も「あきたいぬ」(JAXA、立命館大学、会津大学 提供)

JAXAのXからは続々と情報が発信されました。秋田犬、甲斐犬、セントバーナード、柴犬、ビーグル、土佐犬、ラブラドール、ダルメシアン、パピヨン……犬の名前が付けられた地点の観測に成功。1月31日までにSLIMは再び“休眠状態”に入りましたが、JAXAによると、運用の間に10バンド分光画像の撮影に成功。333回のフルスキャン画像を異なる波長で2回、13ヵ所の観測対象に対して実施したということです。画像の一部も公開されました。「お犬様の観測結果に興奮冷めやらず」とXは記しました。

カンラン石の鉄とマグネシウムの比率を調べることによって、月のマントルと地球のマントルの成分が「似ているのか? 違うのか?」がわかります。それによって月がどうやってできたのか、重要な手掛かりが得られるということです。

ちなみに両者が似ていれば……地球に惑星が衝突して、その破片が集合して月が形成された「ジャイアント・インパクト説」という学説を後押しすることになります。詳細な分析はまさにこれからです。

JAXA山川宏理事長の記者会見(2月9日)

JAXA山川宏理事長の記者会見(2月9日)

「非常にうれしかった。データに基づいてしっかり光学的な技術に基づいて、その通りになったことは非常に素晴らしい」

JAXAの山川宏理事長は2月9日の定例の記者会見で、太陽光が太陽電池に当たり、運用が再開したときの心境を率直に語りました。その上で「国際競争力の観点で大きな成果だった。ピンポイント着陸は今後の月探査で必須となる技術。極めて大きな一歩だった」と、今回の快挙を改めて評価しています。

休眠後、SLIMは2月中旬に再びの運用再開を期します。ただ、月面の温度は110度からマイナス170度まで、気温差が280度もあると言われます。SLIMの機器、特に半導体は100度を超えると損傷する可能性があり、今度ばかりは厳しいかも知れません。そうした激しい温度変化から、数日間の運用を想定した設計になっていると言いますが……。

さらに高みを目指すのか……月面探査への挑戦は続きます。(了)

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