トランプ氏、免責特権めぐり上訴も「判決が覆ることはない」米最高裁の重みと権威
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月14日 12時45分
米ニューハンプシャー州ラコニアで演説するトランプ前大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ラコニア)
双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が2月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2020年のアメリカ大統領選挙をめぐる事件で免責を求め、最高裁に上訴したトランプ前大統領について解説した。
トランプ前大統領、免責特権求め最高裁に上訴
2020年のアメリカ大統領選挙をめぐる事件で、連邦高裁がトランプ前大統領の在任中の行為に関する「免責特権」を認めない判決を下したことを受け、トランプ氏は2月12日、判決を保留するよう連邦最高裁に訴えた。
飯田)議事堂襲撃事件に絡む話ですが、これが大統領選挙にも影響を及ぼす。
吉崎)ややこしいのが、コロラド州の最高裁が出した「州の予備選挙からトランプ氏の名前を外すべきだ」という訴訟も最高裁に持ち込まれ、口頭弁論が行われていて、最高裁に2つのトランプ氏の案件があるのです。コロラド州の方は多分、門前払いになると思います。放っておいたら全米で大混乱が起きますからね。実際、コロラド州の投票用紙にも既に「トランプ」と記入して印刷されています。3月5日はスーパーチューズデーですから。とりあえず入れて、もし判決が出ても上から消せばいいのです。
飯田)二重線で消せばいい。
トランプ氏、自らの裁判で「大統領は退任後も免責されるべきだ」
吉崎)ただ、免責特権の方はとんでもない話なので、トランプさん側が負けると思います。日本でも国会議員には不逮捕特権がありますよね。議員の言論の自由を守るため、国会会期中は逮捕されませんが、国会が閉会すると東京地検に逮捕されてしまうわけです。それは当然なのですが、トランプさんが今回言っているのは、「大統領は退任後も免責されなければいけない。なぜなら、トルーマン大統領が原爆を投下したときのような決断は、あとで自分が逮捕されるかも知れないと思ったらできないだろう」と。それを聞いたときに「面白い理屈を考える人だな」と感心したのですが。
飯田)でも、それを言ってしまうとウォーターゲート事件はなくなってしまいますよね。
吉崎)「大統領は何をやってもいい」ということになるので、いくら何でも無理だと思います。また、トランプ前大統領はいま候補者としてトップを走っており、「その訴えを有権者に聞かせないのは問題だ。司法は選挙妨害をしている」という話まで出ているので、正直どうかなと思います。
バイデン大統領の機密文書の持ち帰りについてはおとがめなし
飯田)トランプ氏とバイデン氏の一騎打ちになったら、トランプ氏が勝つのではないかと言われています。普通は経済がよければ現職有利と言われますが、そうならないのですね。
吉崎)バイデンさんの方にも面白い話があります。以前、トランプさんが機密文書を家に持ち帰っていたことが問題になりました。これも別途5月20日ぐらいから初公判の予定ですが、バイデンさんも副大統領時代、自分の自叙伝を書くために機密文書を持ち帰っていたそうです。こちらはわかった時点ですぐに「ごめんなさい」と言って返したし、本人は記憶力にも問題があるのでおとがめなし、という話になっています。
飯田)警察がわざわざそれを認定したのですよね。
吉崎)そうなのです。そうしたら本人が「私の記憶力に問題はない」と言いながら、エジプトのシーシー大統領を「メキシコ大統領」と間違えて呼んでしまった。「ピラミッドは両方にあるけれど、えらい違いだぞ」とツッコミを受けていました。
飯田)そういうエピソードは豊富にありますが、きちんと論戦できるのでしょうか。
歴史ある最高裁の権威のためにもトランプ氏に忖度するような判決が出ることはない
吉崎)アメリカの最高裁には、やはり重みがあるのです。最近、9人の最高裁判事のうち6人が保守で、3人がリベラルであるということが言われています。だから今回も「トランプさんに有利な判決になるのではないか」と思う人も少なくないのですが、最高裁判事の立場になってみれば、すぐにわかる話だと思います。三権分立はアメリカによる発明で、司法の地位を高めたのもアメリカなのです。特に最高裁長官の立場になると、綿々たる200年を超える歴史があって、自分の代で変な判決を出そうものなら何を言われるかわからない。やはり歴史を自覚するわけです。
飯田)最高裁長官の立場では。
吉崎)しかも、長い歴史のなかでは最高裁の権威が落ちて、取り戻すのに苦労したことが何度もあります。ですから、ここでトランプさんにおもねるような判決を出したら「立ち直れないな」という思いがあるので、「変な判決は出ない」と申し上げておきたいです。
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