IEAに加盟したいインドの今後に向けた思惑
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月14日 17時45分
インドのモディ首相(インド・ニューデリー)
双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が2月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。パリで開催中のIEA閣僚理事会について解説した。
IEAがインド加盟に向け交渉へ
日本、アメリカ、ヨーロッパを中心とした主な石油消費国でつくる国際エネルギー機関(IEA)の閣僚理事会が2月13日、本部のあるパリで開幕し、非加盟国インドの加盟に向けた交渉を正式に開始することで合意する見通し。
飯田)インドはエネルギー需要も伸びゆく一方ですね。
吉崎)IEAは基本的に、経済協力開発機構(OECD)という世界の金持ちクラブの組織ですから、インドはもちろん、中国も入っていません。インドがここに加盟してくるのは面白い動きです。もともとIEAは、エネルギー関係の調査統計をつくる組織なのですが、近年は再生可能エネルギーや脱炭素に関する提言をたくさん出しています。「このくらいやらないと平均気温の上昇は抑えられない」という方針です。それにインドが食いついてくるというのは、インドはインドなりに「きちんと脱炭素に対処してお手本になる」という考えがあるのでしょうか。
飯田)いまはインドも(CO2)排出の多い国の1つですよね。
吉崎)相当、人口が多いですからね。ただ、「うちは中国とは違う路線でいく」ということなのかも知れません。
インドを含めBRICSでアメリカに対抗したい中国とその仲を裂きたい日米欧
飯田)インドは、いままでは非同盟で、どちらかと言うと「自分たちがまずは寄って立つ」というところを見せる国ですよね。
吉崎)我が道を行くというか。中国はインドやロシアを始め、BRICSを集めてアメリカに対抗したいのですが、一方で日米欧は、それほど仲がいいわけではないけれど、それぞれインドと金脈を通じており、できれば中国との仲を裂きたい。中国は「グローバルサウス」という言葉を使いたくないようです。中国の文書でグローバルサウスという言葉が出てくるときは、すべて、かぎかっこがつくのだそうです。
飯田)自分が言っているわけではないと。
吉崎)しかし、インドは「自分がグローバルサウスの盟主だ」と言いたい。いろいろなところで中国とインドの対立がありますが、エネルギー路線に関しても、そんなさや当てがあるのかも知れません。
ロシアからの原油を精製して再輸出するインド
飯田)一方でインドは、ロシアと独特のつながりがあります。
吉崎)逆に西側としては、インドをこちら側につけたい。ロシアから石油を買われては、せっかく経済制裁しているのに意味がなくなってしまいます。だからOECD加盟国ではないけれど、この際「巻き込んでしまえ」というのは大いに考えられる話ですよね。
飯田)インドの名前はロシア産原油の主な輸出先としても挙がります。
吉崎)しかも石油を精製して再輸出していますから、何がロシア産なのかわからなくなってしまいます。逆にインドからすれば、「こんなにおいしい話をやめられるか」というところでしょうね。
飯田)市場価格より安く買ってきて市場価格で売れば、それだけで差額が利益として出る。国際的には困ってしまいますね。
吉崎)西側的には困るのですが、彼らは常に唯我独尊ですので、プレイヤーとしてうまく巻き込まなければいけません。
対中制裁を意識してクアッドに参加するインド
飯田)日本との向き合い方だと、最近は名前を聞きませんが、インドはクアッドの一員です。
吉崎)昨年(2023年)のクアッド首脳会議はオーストラリアで開催予定でしたが、バイデン大統領のスケジュールの都合上、日本で行われました。今年はどうするのでしょうか。
飯田)インドとしては、クアッドには対中牽制のイメージがあるわけですか?
吉崎)当然、そういう計算をしていると思います。
飯田)他方でオーストラリアは、「中国に寄ったのか」というようなところが少し出ている気もします。
吉崎)ただ、オーストラリアの世論は変わりましたね。「いま中国の肩を持つのは難しい」という雰囲気になっているし、お金の動きでも中国離れが始まっています。
2020年代の後半には名目GDPはアメリカ・中国・インドが世界のビッグ3に
飯田)このままいくとインドは、世界第3位まで経済的に伸びるのではないかと言われています。
吉崎)名目GDPで言うと、一応ドイツと日本が3位争いをしていて、5位がインドなのですが、経済成長の勢いが全然違います。2020年代の後半には、アメリカ・中国・インドがビッグ3になっていると思います。
飯田)そうなるとインドの発言力も当然、増してきますよね。
吉崎)逆に私は、アメリカがいまでも世界の4分の1をキープしていることが奇跡ではないかと思うのです。アメリカの人口は約3億3000万人ですが、中国とインドは約14億人です。
飯田)3億人ぐらいをずっとキープして、上がりもしなければ下がりもしない。
吉崎)アメリカの世界GDPに占めるシェアは、いちばん高いときで35%ぐらい。いまは25%ぐらいですが、だいたい4分の1をキープしています。おそらく米中逆転はありません。
飯田)この流れで行けば。
吉崎)そうですね。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
脱炭素は「グリーン詐欺」石破首相は日本経済の崩壊招くエネルギー政策転換を トランプ大統領復活で〝気候変動バブル〟が一変
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月25日 6時30分
-
OPEC、24・25年世界石油需要予想を再度引き下げ
ロイター / 2024年11月13日 2時18分
-
インドネシアがBRICS加盟の意向を表明、国内からは加盟に懐疑的な声も(インドネシア、マレーシア、タイ、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月11日 0時10分
-
BRICS首脳会議、SWIFT代替機構の創設には踏み込まず(ロシア、アラブ首長国連邦、インド、イラン、エジプト、エチオピア、中国、ブラジル、南アフリカ共和国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月5日 0時30分
-
BRICS、「パートナー国」創設で拡大へ(世界、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、アラブ首長国連邦、イラン、エチオピア、エジプト)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月31日 1時30分
ランキング
-
1八戸5歳女児死亡の初公判、検察側「母親らは一日一食しか与えず隠れて食べていた女児に暴行」
読売新聞 / 2024年11月26日 15時45分
-
2【速報】共同通信の社長が外務省に謝罪 生稲晃子外務政務官の靖国参拝めぐる誤報問題で
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 19時51分
-
3求人サイトで公募した市長後継候補、原因不明の急病で辞退…あす現市長が記者会見
読売新聞 / 2024年11月26日 16時1分
-
4コロナ新しい変異株「XEC株」はどんなウイルスか 「冬の対策とワクチン接種の是非」を医師が解説
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 9時0分
-
5石川県西方沖でM6.6の地震 最大震度5弱 津波被害の心配なし
ウェザーニュース / 2024年11月26日 22時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください