インドネシア 政治風土が日本と近く「稼がせてくれる」国 ~大統領選投票始まる
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月14日 19時10分
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好協力関係50周年特別首脳会議であいさつするインドネシアのジョコ大統領=17日午前10時15分、東京都港区のホテルオークラ東京
双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が2月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。インドネシア大統領選について解説した。
インドネシア大統領選
東南アジア最大の人口と経済規模を持つインドネシアで、「世界最大の直接選挙」とも言われる大統領選挙の投票が2月14日に始まった。最新の世論調査では3人が立候補し、現職・ジョコ大統領の後継者を自任するプラボウォ国防大臣が大きくリードしている。
飯田)3選が禁じられているため、現職のジョコ・ウィドド氏は出ず、ジョコ氏の後継者であるプラボウォ国防大臣が立候補しています。
かつては強権弾圧の印象だったプラボウォ氏が可愛いキャラで売っている
吉崎)いまやプラボウォさんが可愛いキャラで売っているのが、私としてはツボですね。インドネシアと言うと、アジア通貨危機の1997~1998年の「どうなるんだ」という時代を思い出します。当時のプラボウォ氏はスハルト氏の娘婿ですから、印象としては強権弾圧の人なのです。しかし、25年経つといろいろなことが起きる。彼は72歳ですが、可愛いキャラで売っていて、どうも勝ちそうだと言われています。
飯田)コミカルに踊る動画がSNSで拡散されているようです。
吉崎)一時期はある種の亡命状態でしたが、そこからビジネスで大復活を遂げました。
飯田)経歴を調べると、2014年と2019年の過去2回、大統領選に立候補しています。
吉崎)ジョコ氏と戦っているのですよ。
飯田)もともとは政敵だったわけですよね。
吉崎)前回の選挙で国防大臣に迎えられ、今回は息子さんを自分の副大統領候補に据えた。それで手打ちにしたのでしょうね。
政治風土としては日本に近く、細かいことを言わない
吉崎)やはりインドネシアは奥行きが深い国なのですよね。
飯田)2億人以上の人口がいて、島の数も多いですものね。
吉崎)昔、インドネシアを研究したとき印象に残ったのは、「パンチャシラ」という原則があるのです。「五箇条の御誓文」のような大方針なのですが、第1ヵ条が「信仰は大事である」というものです。普通のことなのですが、当然イスラム教なのかと思ったら、そうではない。キリスト教でも仏教でも、何でもいいのです。とにかく「信仰は大事である」というのが国是の1ヵ条になっている。でも、中身は細かいことを言いません。
飯田)共存していく。
吉崎)細かい島々を統一しようとすると、あまり細かいことを言っていられないのです。大まかでいい。政治風土としては日本と近しい、自民党的なところがあります。
飯田)いろいろなものを内包している。確かに、イスラム教の国ではあるけれど、バリは仏教ですし。
吉崎)「世界最大のイスラム教国」と言われることもありますが、そうでもないのですよね。
インドネシアは稼がせてくれる国
吉崎)インドネシアにとって、G20の1ヵ国になったことは大きいのです。ASEAN加盟国10ヵ国のなかでも「俺たちは10分の1ではなく、G20でもあるんだ」ということが、近年の大きなプライドの源泉になっていると思います。
飯田)経済成長が著しいですし。
吉崎)(2020年代の後半に)米中印がビッグ3になると言われていますが、もう少し先になると、インドネシアがビッグ5ぐらいに入る時期が来ると思います。
飯田)日本は昔からインドネシアといろいろなつながりがありました。
吉崎)商社のなかでもインドネシア経験者は多く、中国はなかなか儲けさせてくれませんが、インドネシアは稼がせてくれる国です。
飯田)そういう意味でも、気質的に合っているところがあるのでしょうか?
吉崎)インドネシアファンは多いと思いますよ。
あらゆる意味で奥が深いインドネシア
飯田)いまの首都はジャカルタですが、ジョコ大統領が移転させるという話もあります。
吉崎)カリマンタン島に持っていく案があり、「大丈夫かな」と思いますけれどね。でも、さまざまな需要を生むはずなので、日本企業にもチャンスを提供してくれるのではないでしょうか。
飯田)不動産開発などにも日本企業が入っているようですね。
吉崎)入りやすい国です。
飯田)高速鉄道は中国に取られましたが。
吉崎)やはり奥が深い相手なのですよ。
飯田)この間の上海協力機構の会議では、習近平さんのうしろにジョコ夫妻がいて、「ええ?」と思いました。一方では、岸田総理を大歓待するような場面もありました。
吉崎)BRICS首脳会議のメンバーを増やすとき、最初にインドネシアに声をかけたらしいのですが、インドネシアは「嫌だ」と。「そんなところに入ると西側から遠ざけられる」という、彼らなりの計算があるのです。
飯田)なかなか一筋縄ではいかないのですね。
吉崎)スカルノやスハルトの時代から比べれば民主化され、約2億人の直接選挙ができる国になっているので、この25年で相当変わったと思います。
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