子育て世帯とそうでない世帯との「分断」につながる可能性も 子ども・子育て支援法などの改正案が閣議決定
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月19日 17時30分
元日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が2月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。閣議決定された子ども・子育て支援法などの改正案について解説した。
政府が子ども・子育て支援法などの改正案を閣議決定
少子化対策の強化に向け、政府は2月16日の閣議で、子ども・子育て支援法などの改正案を閣議決定した。法案は児童手当の高校生の年代までの拡充など、少子化対策「加速化プラン」を実施するためのもので、財源として新たに支援金制度を設けることが盛り込まれている。
「子どもが増えない現状を変える」ための政策をするべき
飯田)「異次元の少子化対策」と言われるものですが。
片岡)見方によっては異次元だと思いますが、少子化対策と銘打つのであれば、少子化をなくすような対策でないといけません。現行の少子化対策は子どもができた段階で、教育などのサポートをどのように充実させるかという話であって、子どもが増えない現状を変えるための政策ではないと思います。若年層の所得を含めた経済状況をどう改善させるか、また結婚したいと思う方々が安心して結婚し、生活できるような環境をいかに整えるのかが、少子化対策のメインになるべきだと思います。現状だと、そのような話にはなっていません。
今回の政策が子どもがいる世帯とそうでない世帯との分断につながる可能性も
飯田)お金を出すにしても、財源確保のために保険料が上がるのではないかと思うのですが。
片岡)理屈を言えば、子どもは成長すると経済成長に寄与し、大人になれば所得税も含めて税を払います。ですので、子どもが幼いうちは政府がお金を出し、支援するということです。ただ、支援するお金は負担ばかりで戻ってこないお金ではなく、将来は「税収」という形で戻ってくるわけです。
飯田)将来的には。
片岡)今回、月500円というような話が出ていますが、お子さんがいない世帯の方も含めて徴収し、それを原資にするのは、現役世代を将来の子どものために犠牲にするという政策なので、私は非合理だと思います。なおかつ現状、お子さんがいる方々がそのような政策をどこまで求めているのか。そこにも疑問を感じます。お子さんがいない方々の生活が楽で、「余分にお金があるから何とかしたい」と思っているわけでもないのに、そのようなところからお金が出され、自分たちの子育てを支援されていると思うと、気持ちがいいものではないですよね。今回の政策は、お子さんがいる世帯とそうでない世帯の分断につながるのではないかと懸念しています。
飯田)「俺の金をふんだくって子どもにばかり使いやがって」と思うかも知れませんよね。
増税して社会保険の名のもとに財布をつくれば、どのようなお金にも使えるという前例を残してはいけない
片岡)例えば社会保障において、このような名目で予算を取れば何にでも使える、増税して社会保険の名のもとに財布をつくれば、どんなお金にも使えるというような先鞭をつけるのはよくないと思います。
飯田)税金を上げる際は法律を通す必要があるけれど、社会保険料に関しては「法律までは要らない」と思っているとしたら、許し難いですよね。
片岡)そこは国民として、厳しい目で見ていく必要があると思います。
将来、受益するのはいまの子どもなので、今回の場合は国債を発行するべき
飯田)まずはお金を出して支援し、将来的には税金なり何なりで戻ってくる。いわゆる長期投資のような形ですか?
片岡)そうですね。よく、国債は将来世代の負担が発生するから、子どもに対して負担させないためにも「国債の発行はダメだ」という議論があるではないですか。ただ、今回の子どもに関する話で言うと、将来受益するのはいまの子どもですよね。いま国債を発行しても、それをファイナンスする相手は現在の子ども、つまり将来の大人であるので、負担と受益が一致するのです。こういう場合は国債を発行するべきであり、「現役世代への負担=税金」という形で行おうとするのはナンセンスです。
飯田)現役世代の可処分所得が減ってしまったら、結局は何もできなくなりますよね。
片岡)いま日本は所得と支出の好循環を達成する必要があって、その兆候はグローバルインフレ、例えば株価や物価、賃金や雇用などに表れています。所得が増え、支出を増やそうというところがスタックしているわけです。企業は賃上げで所得を増やそうとしていますが、今回のような話で税金を掛ける、負担も上げるという方針になると、可処分所得が増えず、所得から支出への前向きな循環が起こらないのです。経済の循環も途中で止まってしまうので、金融緩和や財政出動を行ってもまったく改善しません。
成長政策を含めて経済成長に舵を切るならば、国民に負担を要求するようなことはやめるべき
飯田)「対策している」と言うけれど、気持ちを冷やすようなことばかりしている気がします。
片岡)方針が一貫していないのが、いつまで経っても日本経済の停滞が続く大きな理由だと思います。財政政策、金融政策、成長政策のようなところも含めて成長に舵を切るのであれば、負担を要求するようなことはやめて、しっかりと整合性のある政策を行うべきです。
飯田)一方で税収は過去最高ですが、その還元は1年のみで1人4万円です。果たしてそれでいいのでしょうか?
片岡)非常に嘆かわしい状況だと思います。
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