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“国産”のヨーロッパ野菜はなぜ作られたのか? イタリア料理店がじわじわ注目

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月26日 12時0分

“国産”のヨーロッパ野菜はなぜ作られたのか? イタリア料理店がじわじわ注目

ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)で、ヨーロッパ野菜を特集。さいたまヨーロッパ野菜研究会・会長で、埼玉県内で複数のイタリアンレストランを経営する北康信さん、作物の出荷団体である株式会社FENNELの代表取締役で、農家としてもヨーロッパ野菜を中心に生産している森田剛史さんをゲストに迎え、ニッポン放送・箱崎みどりアナウンサーが、ヨーロッパ野菜の魅力、レストランが国産のヨーロッパ野菜を求める理由を聞いた。

ヨーロッパ野菜とは?

箱崎:ヨーロッパ野菜は、普通の野菜となにが違うのですか?

北さん:イタリア料理で使われる野菜で、主に、地中海沿岸で栽培されている野菜という風にイメージしていただければと思います。基本的には、とても色鮮やかで、味も濃く、野菜が主役になれるような特徴となっています。

皆さんにも聞き馴染みがあるもので言うと、「ロマネスコ」「ケール」、ボルシチなどで使われる「ビーツ」などがあります。「ラディッキオ」という野菜は“チコリ”の赤いタイプのものなんですが、今はスーパーとかコンビニでも見ることができます。

箱崎:たしかに、目にする機会が増えてきたように感じます。

北さん:2009年に、私たちのヨーロッパ野菜研究会のメンバーでもある、トキタ種苗という会社さんがイタリアの野菜の種を販売することになったんです。そこから、日本各地でヨーロッパ野菜が作られるようになった経緯があるので、その辺りが創世期の節目だと思っています。

イタリアの野菜「チーマ・ディ・ラーパ」

箱崎:春先の旬のものというと、どんなヨーロッパ野菜があるんですか?

北さん:「チーマ・ディ・ラーパ」という西洋ナバナが、真冬から春先までにかけての野菜で、とてもおいしいですよ。

森田さん:チーマは「先っぽ」、ラーパが「かぶ」という意味なので「株の菜の花」というイメージです。

箱崎:どういう料理に使うのでしょうか?

森田さん:イタリアだと、茹でてオリーブオイルとレモンをかけて、そのまま食べます。他にも、煮崩れるぐらいグズグズに煮込んで、魚介類などと合わせると、すごく食べやすくておいしい野菜です。

箱崎:日本の菜花はちょっと苦いイメージですが、チーマ・ディ・ラーパはどうですか?

森田さん:そうですね、苦味も若干強いですが、その分、風味や味も強いです。食材のおいしいダシを吸って、魚介類に風味を与えるので、その相乗効果が素晴らしいと思っています。

ヨーロッパ野菜を輸入する難しさ

箱崎:北さんは埼玉県でたくさんのレストランを経営されていますが、やはり、ヨーロッパ野菜を使っているのですか?

北さん:そうですね、イタリア料理を提供するということは、イコール、ヨーロッパ野菜をたくさん使うということになります。地産地消のヨーロッパ野菜ということが、私たちのお店の共通したコンセプトです。

さいたまヨーロッパ野菜研究会が作られる前は、ヨーロッパ野菜は手に入りづらく、手に入っても、イタリアから運ばれてくるので鮮度が良くないんです。さらに、飛行機で運ばれるから運送コストがかかって高くなってしまう。

最終的に、お肉のような価格で野菜を提供することとなってしまいます。鮮度と価格の面は、本当に苦労しました。

箱崎:乾燥させたもの、冷凍野菜もありますが、やっぱり生野菜とは違いますよね。

北さん:そうですね。冷凍したもの乾燥させたものは、そもそもの野菜の風味からは、離れてしまいますね。

日本のイタリア料理に感じている違和感

北さん:春になると、「菜の花とアサリのスパゲッティ」を見かけませんか?

イタリア料理から見ると、あれは、「チーマ・ディ・ラーパ」の代替野菜が「菜の花」なんです。日本で菜の花が出てくるのは、3月~4月。そこに、旬であるアサリと合わせるという組み合わせなんですが、イタリアで菜花が食べられるのは、冬なんです。

真冬にクタクタに煮込んだチーマ・ディ・ラーパを、イタリア・プーリア州の郷土料理で耳たぶ型のパスタ「オレキエッテ」にするのが定番です。真冬に温まるための料理なのですが、同じ野菜を使っていながら、季節が変わってしまうというジレンマを、なんとかできないかなと。

『あるものでいいじゃないか』と思うかもしれませんが、海外旅行先の和食店で『なんか違うな』と違和感を経験したことはありませんか? まさにそれを、イタリア料理店は感じているんです。

代替野菜では、イタリア料理を忠実に再現できない

箱崎:他にも、代替野菜と季節が違う、ということはあるんですか?

北さん:ジェノベーゼソースのパスタは「バジル」が使われていますが、日本でバジルが広まっていなかった時は、「シソ」で作られていた時期もありました。

箱崎:そういえば昔、少し紫色だったかもしれないです。

北さん:実はこれ、「バジルがシソ科だから」というだけで選ばれていたんです。こういう風に、代替野菜というのは、本物を知ると『あれ? こんなんじゃなかったよな?』って感じるものが多いですね。

箱崎:日本で食べるための工夫でしょうが、だいぶ違ったものが出来上がっていたんですね。

北さん:そうですね。野菜ではないですが、「カラスミのパスタ」のリーズナブル版が、「たらこのスパゲッティ」だと思います。

箱崎:ですが、さいたまヨーロッパ野菜研究会ができてからは、状況が変わったそうですね?

北さん:はい。さいたま市にヨーロッパ野菜の「種」を販売する会社があり、そして、その野菜を使いたいという私たちのレストランがあり、野菜を作ってくれる生産者が現れましたので、ここから本場のイタリア料理を、イタリア食文化を発信するんだ、という気概です。

日本の種苗会社はすごい

箱崎:さいたま市に「種」を販売する会社がある、ということですが、海外の種苗会社さんとなにが違うのでしょうか?

森田さん:ヨーロッパ野菜の種は、日本ではなかなか手に入らないんです。こういう時代ですから、インターネットで輸入して手に入るんですけど、やっぱり海外の種の品質って、発芽率が悪かったり……。あと、その種を買ったのに、違うものが出てくることもあるんですよ。

箱崎:えっ!

森田さん:でも、日本の種苗会社さんは本当に丁寧で、技術もあるんです。良い種・悪い種の選別から始まって、発芽率のいいもので、どんどん世代で残しています。そんな日本の種苗会社さんがそういった海外の野菜の種を出してくれているからこそ、私たち生産者側も、安定してできるのだと思っています。

箱崎:そんな森田さんの「花ズッキーニ」が、世界の舞台で選ばれたそうですね。

北さん:そうなんです。2019年にG20が大阪で開催されましたが、1日目のビジネスランチで、 森田さんの花ズッキーニが届けられ、皆さんに召し上がっていただいたんです。ただ、各国のVIPが食べるので、出荷の時も「何に使う」ということを一切知らされていませんでした。

森田さん:「すごく大きなイベントがあるので、確実に出荷してください」とは言われていて、出荷後に「無事、使われました。G20で」という報告が来ましたね(笑)。おそらく、安全上の関係で教えてもらえなかったのだと思いますが。

箱崎:「G20で使いました」と聞いて、いかがでしたか?

森田さん:もう、単純にびっくりしましたよね。広めようかな? 黙っていようかな? と、一瞬は悩みましたが、今はいい話として広めています。

――今まで日本で栽培されてこなかった為、育てるノウハウがなかったヨーロッパ野菜。その栽培は苦労の連続だったが、シェフたちの「本場の、あのおいしいヨーロッパ野菜を使いたい……」という声にこたえるため、試行錯誤を繰り返し、素晴らしくおいしいヨーロッパ野菜が完成。現在は、年間約70種類のヨーロッパ野菜が栽培され、約1200軒のレストランでも使われ、食べる機会も増えているので、ぜひ“国産・ヨーロッパ野菜”に注目してみては。

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