トランプ氏再選で懸念される「2つ」のこと
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月26日 12時5分
慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が2月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米大統領選におけるトランプ前大統領の再選について解説した。
予算委でトランプ氏の返り咲き当選を念頭に置いた議論が交わされる
11月のアメリカ大統領選挙をめぐり、2月22日の衆議院予算委員会では、トランプ前大統領の返り咲き当選を念頭に置いた、いわゆる「もしトラ」について議論が交わされる場面があった。衆院会派「有志の会」の緒方林太郎衆院議員は「もしトラ」に備えるとして、令和9年度に防衛費と関連予算を合わせ国内総生産(GDP)比2%に引き上げる政府方針の前倒しを提案した。
トランプ氏再選で懸念される2つのこと
飯田)「もしも」という話を国会で議論するのは面白いのですが、「もし」だけではなくなってきているのでしょうか?
細谷)トランプ前大統領が再選した場合、前のトランプ政権とはまったく違う状況になると思います。前回はアダルトと呼ばれるマティス国防長官やマクマスター大統領補佐官など、きちんと同盟や安全保障政策を担う人たちがいましたが、その人たちがほとんど離れてしまった。プロフェッショナルがまったく居ないわけではありませんが、ほとんどいない問題が1つあります。
飯田)プロフェッショナルがいない。
細谷)もう1つ、前回は安倍総理がいたので、スタートから上手くトランプ大統領を説得し、日米同盟を維持することができた。しかし、今回はそれら2つの前提条件がありません。もしトランプ氏が勝てば、日米同盟は危機的状況になるのではないかと言われています。
日本が防衛予算を増やすのは当然のこと
飯田)「自分の国は自分で守るべきではないか」というトランプさんの意向も踏まえ、防衛費を引き上げる議論になるわけですか?
細谷)冷戦が終わって30年経ち、ヨーロッパも日本もアメリカに頼り過ぎている部分があります。これはトランプ氏の声というより、アメリカ世論の声でもあるわけです。なぜ30年経って、アメリカがこれほど支え続けないといけないのか。そう考えたときに、北大西洋条約機構(NATO)基準ですが、防衛費がGDP比で2%を超える見通しの国は、以前は3ヵ国ほどしかありませんでしたが、いまは18ヵ国に増えています。これだけ国際安全保障の環境が悪くなっているわけですから、日本が防衛費を増やすのは当然と言えば当然だと思います。
飯田)それに加えて、日本の場合は憲法9条に代表されるような法律の縛りもあります。ここを乗り越えるため、安保法制懇の議論もあったのかも知れませんが、なかなかこの頸木から抜け出せないままでいます。
細谷)日本だけは、先生から「宿題をやらなくていいですよ」と言われてきた。しかしトランプ氏は、「他の国はやっているのに、なぜ日本だけが宿題をやらなくていいのだ」と言ったわけです。ましてや、いま日本はロシアと中国と北朝鮮に囲まれ、世界で最も安全保障環境が厳しい地域と言われています。そこで日本が宿題をしない、本当に必要な努力をしないというのは、トランプ氏に限らず、アメリカ世論から不満が出るのは当然だと思います。
日英や日豪、日韓の安保協力がいままで以上に重要
飯田)トランプ氏の件はある意味、奇貨として変わらなければいけない部分でもある。ただ、岸田政権の支持率もこれだけ落ちてくると、なかなか議論が進まないですね。
細谷)ですので、アメリカ以外の国との安全保障関係を強化する。当然ながら韓国のなかでも日本との関係を改善したいという思いがあり、その遠くにはトランプ氏がいるわけです。オーストラリアも同様に、日本よりもはるかに防衛力が限られていますから、危機感を持っています。ヨーロッパも危機感が高まっているので、日英や日豪、日韓の安保協力がいままで以上に重要になると思います。
飯田)NATOの拡大など、いろいろなことが言われますが、この先は日本も集団的自衛権の集まりのようなものに入る必要がありますか?
細谷)いま「アジア太平洋パートナー(AP4)」という形でNATOとの協力が強まっていますが、もともとの端緒は安倍元総理です。そもそも安倍元総理が安保法制を進めていた最大の理由は、日本単独で軍拡すれば周囲の国に脅威を与え、また財政的にも困難だからです。一方、同盟国に頼りすぎるのもよくないので、安保法制は重要だと思います。
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