村上頌樹に続くのは? プロ野球「入団2年目以降」の新人王&ブレイク候補の選手たち(セ・リーグ編)
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月26日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、今季のプロ野球で期待の若手選手のなかから、セ・リーグの「入団2年目以降で新人王資格を持つ選手」にまつわるエピソードを紹介する。
いよいよオープン戦も始まったプロ野球。この時期の楽しみは、1軍定着を狙う若手選手の必死のアピールが見られること。そのなかに、今季のブレイク候補や新人王選手がいる可能性は十分にある。
ルーキーの活躍も楽しみだが、より注目すべきは2年目以降の若武者たち。昨季(2023年)もセ・リーグは大卒3年目の村上頌樹(阪神)が新人王に輝き、優勝の原動力となった。そんな「ルーキー以外の新人王候補」をピックアップしてみたい。
なお、新人王の資格は……(1)海外のプロ野球リーグに参加した経験がないこと。(2)初めて支配下選手登録されてから5年以内。(3)【打者】前年までの1軍公式戦での打席が60打席以内。(4)【投手】前年までの1軍公式戦での投球回が30イニング以内。これらを満たすなかから注目選手を球団別に取り上げていく。
◆阪神タイガース
阪神で「今季ブレイク候補」と声があがるのは高卒2年目左腕、門別啓人(2022年ドラフト2位)だ。
きっかけは、岡田監督が昨秋キャンプで門別をキャンプMVPに選んだこと。実は2022年の秋季キャンプで、岡田監督は当時まだ無名だった村上頌樹を絶賛。その評価通り、昨季は新人王とMVPを受賞して優勝の原動力になっただけに、「次なる岡田イチオシ投手」とファンも注目を集めることとなった。
17日に行われた楽天との練習試合では3番手で登板し、3回2安打無失点の好投。まだ「7~8割の状態」でありながら自己最速タイの151キロをマーク。自ら武器と語る右打者の内角をえぐるクロスファイヤーで、今季、どれだけセ・リーグの右打者を苦しめるのか、楽しみでならない。
一方、春季キャンプで一気に評価を高めたのが大卒3年目の岡留英貴(2021年ドラフト5位)だ。岡田監督が「若い投手は1年でこんなに変わるのか」と驚く最速152キロ右腕は、分厚いブルペンの一角を狙う。
阪神では他にも、昨年(2023年)11月に支配下契約を勝ち取った2022年育成1位の野口恭佑、同じく2023年育成2位の福島圭音も岡田監督が気にかける注目株だ。昨季、日本一を達成した不動のメンバーに切り込めれば、ブレイクの可能性も大いにある。
◆広島東洋カープ
広島の注目は高卒3年目、20歳の田村俊介(2021年ドラフト4位)で決まり。昨季、1軍出場は10試合と少なかったものの打率.364を記録。今季はオリックスへ移籍した西川龍馬に代わって外野手のレギュラー候補一番手として注目されている。
そんな田村の名がさらに響いたのは、欧州代表と戦う来月(3月)の侍ジャパン代表戦のメンバー入りを果たしたこと。これで自信をつけたのか、初の対外試合となったロッテとの練習試合(17日)で4番に抜擢されると、初回の第1打席、ファーストスイングでいきなりホームラン。23日のオープン戦でもセンターオーバーの三塁打から始まり、レフト前、ライト前と打ち分ける技術を見せるなど、早くも今季の活躍を予感させるプレーを見せている。
この他、投手では2022年ドラフト1位の斉藤優汰、西川の人的補償でオリックスから移籍してきた日高暖己(オリックス2022年ドラフト5位)の「高卒2年目右腕コンビ」、さらにはオープン戦開幕投手を務めた社会人出身の2年目・益田武尚(2022年ドラフト3位)もチャンスを伺う。
◆横浜DeNAベイスターズ
DeNA注目は、まだ1軍出場経験がない2人の「高卒ドラ1コンビ」だ。
2021年ドラフト1位の小園健太は、2年目の昨季、2軍でチーム最多の16試合に先発し2勝5敗、防御率4.21。この成績自体は平凡なものだが、11月に台湾で行われたアジアウィンターリーグでは、4試合に登板して2勝0敗、防御率1.42の好成績をマーク。試合のMVPに選出されるなど確かな爪痕を残した。
そして、もう1人は2022年のドラフト1位、大阪桐蔭時代には世代最強捕手と言われた松尾汐恩だ。昨季はファームで104試合に出場し、打率.277、7本塁打、51打点。史上12人目のサイクル安打を達成するなど、さすがの存在感を示した。
昨季のDeNAの捕手陣は、山本祐大(67試合)、戸柱恭孝(57試合)、伊藤光(56試合)と明確な正捕手はいなかっただけに、まずはこのなかに割って入ることができるかどうかに注目だ。
◆読売ジャイアンツ
昨季、高卒新人ながらプロ初本塁打を記録するなど、確かな存在感を放ったのが2022年ドラフト1位の浅野翔吾。昨季の打席数は合計41打席で、今季もまだ新人王にチャレンジすることが可能だ。
ただ、同じ「外野手」「プロ2年目」として浅野にとってもライバルになるのは、大卒2年目、ドラフト2位入団の萩尾匡也だ。昨季、1軍では11試合の出場で1安打のみだったが、2軍ではチームトップの打率.283をマーク。台湾でのアジアウィンターリーグでは一時首位打者に立つなど打率.326と結果を残している。
外野手のレギュラー争いでライバルとなる2人がどう切磋琢磨するのか。萩尾にとっては同期入団で同学年の門脇誠が先にレギュラーの座を掴んだだけに、もう遅れを取るわけにはいかない。
◆東京ヤクルトスワローズ
ヤクルト不動の4番・村上宗隆が「いずれはヤクルトの4番を打つ選手になってもらいたい」と評したのは、大卒2年目の外野手、同じ左バッターの澤井廉(2022年ドラフト3位)だ。ルーキーイヤーの昨季は1軍で16試合に出場し、打率.156、1打点に終わったものの、2軍では90試合出場で打率.262、18本塁打、56打点をマーク。イースタンリーグの本塁打王に輝いている。
その澤井ができなかった「1年目の1軍アーチ」を昨季叶えたのが同期入団の北村恵吾(2022年ドラフト5位)。昨季は1軍12試合で打率.190と苦しんだが、8月9日の広島戦ではプロ初安打を満塁本塁打で記録。これはNPB史上5人目の快挙だった。
同じ大砲候補の2人、先にどちらが1軍の水に慣れるだろうか。
◆中日ドラゴンズ
中日でとにかく待望論が大きいのは大卒2年目の田中幹也(2022年ドラフト6位)だろう。昨季、オープン戦では一時、首位打者に立つなど躍動。侍ジャパンとの強化試合では今永昇太からヒットを放つと、持ち前の俊足ですぐに盗塁に成功。そのまま先制のホームを踏むなど、侍ジャパン撃破の立役者となり、SNSでは「#田中幹也」がトレンド入りしたほどだった。
ところが、その後のオープン戦で右肩を脱臼。手術を受け、2軍で実戦復帰するのがやっとだった。
田中幹也と言えば、大学3年の夏に国指定の難病「潰瘍性大腸炎」を患い、大腸を全摘出。「もう野球はできない」と覚悟しながら、プロ入りにこぎつけた不屈の精神の持ち主でもある。その生き様をプロでも見せられるか、多くの中日ファンが期待を寄せている。
もちろん、ここで挙げた選手以外からもブレイク候補が出てくる可能性はある。日増しに成長する若人たちの伸びしろに期待したい。
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