我々は壮大な「出来レース」を見せられている 「政治資金問題」をめぐる与野党の攻防について須田慎一郎が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月27日 11時35分
衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=26日午後、国会・衆院第1委員室(春名中撮影)
ジャーナリストの須田慎一郎が2月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月28・29日に開催予定の衆議院政治倫理審査会について解説した。
衆議院政治倫理審査会、公開か非公開か協議継続へ
国会では自民党派閥の政治資金事件をめぐり、2月28・29日に開催が予定されている衆議院政治倫理審査会について、与野党で公開か非公開かの折り合いがついていない。岸田総理大臣は26日の衆議院予算委員会で、公開の是非については「国会で判断されるべきものだ」と述べた。
我々は壮大な与野党の「出来レース」を見せられている
飯田)政治倫理審査会については各紙が取り上げていますが、どうご覧になりますか?
須田)いま我々は、壮大な与野党の「出来レース」を見せられていると考えてもらっていいと思います。まず政治的なスケジュールを考えると、次年度予算案を年度内に成立させて4月1日からスムーズに執行するためには、スケジュールが迫っているのです。少なくとも3月1日までに衆議院で可決させなければ、年度内成立は難しい。3月1日までに成立させる意味として、本来は2日なのですが、2日は土曜日なので国会が開かれません。3月1日に成立させると、憲法上の規定によって30日経てば自然成立するのです。
飯田)予算が成立するのですね。
須田)そうすれば年度内成立の形を取ることができます。毎年大事なのですが、今年度予算がなぜ殊更に大事なのかと言うと、やはり能登半島地震が理由にあがります。復旧・復興をスムーズに進めるためには4月1日からの予算執行が必要です。それは与野党の国会議員もわかっている。従って野党は「予算案の成立」を人質に取る形で、いま政治倫理審査会の開催を求めているのです。
与野党の国対でお互いのやり取りを決めた「国対国会」
須田)今回の国会を、私は「国対国会」と呼んでいます。そもそも国会召集日から考えると、天皇陛下にお出ましを願い国会が召集されたわけですが、通常なら首相が所信表明演説を行って国会が開始されます。しかしそれをせず、つまり国会運営の方針も示さずに、いきなり衆参両院でお金の問題をめぐる集中審議が行われました。これを決めたのは与野党の国対です。野党である立憲民主党がこれを求め、与党の自民党が譲歩し、「その代わり予算審議に協力してくれ」という形で花を持たせたわけです。
飯田)野党側に花を持たせた。
須田)これがそもそもの始まりです。いま野党は「押せ押せ」になっているのですが、本来こういった政治上の大問題、大事件に関して決着をつける際は、第1段階として何が起こったのかを全容解明することが大切です。第2段階としては責任の所在を明確にし、責任を負わせる。そして、最終段階で再発防止策を講じるのです。政治倫理審査会は第2段階です。誰に責任があったのか、そのやり取りを通じて責任を負わせるという攻防をしているのです。
与野党ともに「企業・団体献金を全面禁止」、「連座制」に踏み込めない金銭的な事情から、激しい攻防をしているように「装っている」のが実情
須田)我々有権者が期待するのは再発防止策でしょう。私は2つのポイントがあると思います。1つは、この種の裏金をなくすために「企業・団体献金を全面禁止にする」ということです。そのような規定を政治資金規正法に盛り込むべきですが、そうなると困るのは与党だけではありません。野党も「人件費が出ない」というような部分があるわけです。連座制も、与野党にとっては少し厳しすぎる。そこへ踏み込んでしまうと、国民世論から「与野党は何をやっているのだ」という話になるので、前段として責任の所在を明確にし、責任を負わせるというところで激しく攻防しているように装っているのです。
飯田)本質のところには入って欲しくないのですね。
須田)与野党ともにそうです。その前段で争っている。
与党を攻めきれない野党のもう1つの理由
飯田)企業の不祥事で考えると、記者会見で突っ込まれるのは再発防止策です。「これで本当に再発防止ができるのか?」というところが問われます。
須田)下手に与野党で折り合いをつけてしまうと、「野党は甘いではないか」という話になるので、攻めているように装っている。また、野党としても全面的に「押せ押せ」の状態になれない事情がもう1つあります。野党が妨害や抵抗を行って3月1日に可決できなくなると、「野党は能登半島地震の復旧・復興を妨害した」とレッテルを貼られかねません。それが怖くて本気になれないのです。
飯田)来月の話のように思えますが、3月1日は今週の金曜ですよね。だから(政治倫理審査会が)28・29日なのですね。
須田)野党にとって、今週の前半は見せ場です。だから「政治倫理審査会を公開しろ」と求めている。「俺たちの花舞台を(国民に)見せろ」と。
再発防止策を決めるべき
飯田)いまは激しく攻防していますが、3月1日が終わったら静かになってしまうのでしょうか?
須田)おそらくそうだと思います。だから強く主張したいのは、「再発防止策をどうするのか」ということです。もう予算が成立するのだから、政治資金規正法も含めてきちんとルールを決めて欲しい。国民は怒っていると思います。
飯田)アイデアは出ますが、議員立法なり骨格のようなものはまだ出ていませんよね?
須田)政治的な意図があって言うわけではありませんが、立憲民主党・岡田幹事長のケースを見ると、政治資金パーティーで得たお金はほとんど秘書などの人件費に使われているのです。そこがシャットダウンされると、「どこで人件費を賄うのか」という問題が出てきます。別に悪いことをしているという意味ではありません。それが国会議員の実態です。政治資金パーティーは禁止になったとしても、違った形で企業・団体献金を受けざるを得ない状況になるのではないかと思います。
なぜ与野党ともに「企業・団体献金の全面禁止」にしないのか
須田)政党交付金をもらっているのですから、根本から断つためには「企業・団体献金を全面禁止」にすべきです。なぜ与野党でそうしないのか疑問です。
飯田)合区など一票の格差の話もありますが、特に地方はとても広い範囲が1つの選挙区になっていたりして、「人が足りない」と言われます。90年代の政治改革では「お金の掛からない選挙」を目指しましたよね?
須田)政党交付金をもらうための方便にすぎません。小選挙区にしたのも、お金の掛からない、政権交代の起こりやすい政治体制にするためだったでしょう。でも、「あのときの議論は何だったのか」という感じです。
飯田)もう30年くらい経つので、総括しなければなりませんよね。
須田)当時は約270円でしたが、年間で「コーヒー1杯分を出せば政治とカネの問題が起こらない」としたのは嘘だったのだろうかと思います。
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