トランプ氏とバイデン氏の「最も懸念されるところ」 米世論調査が示す「それぞれの問題」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月1日 18時30分
二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が3月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。トランプ前大統領の共和党予備選への参加を認めない判断を示した米イリノイ州裁判所について解説した。
イリノイ州裁判所もトランプ氏の予備選参加を認めず
アメリカ中西部イリノイ州の裁判所は、3月19日に予定されるアメリカ大統領選の共和党予備選にトランプ前大統領の参加を認めない判断を示した。2021年の連邦議会襲撃事件で反乱に関与したとして、合衆国憲法修正第14条の規定に基づき大統領就任資格を失ったと認定した。同様の判断は西部コロラド州、東部メーン州に続いて3例目で、コロラドの事案をめぐっては連邦最高裁で審理が行われており、最高裁の判断で論争は決着する見通し。
飯田)トランプ陣営は28日に声明を出し、憲法に反する判断であり、すぐに上訴すると述べています。
トランプ氏とバイデン氏のどこが最も懸念されるか
合六)アメリカ大統領選挙は当然、世界にも影響を及ぼすので、世界中が注目しています。2月上旬にアメリカで「トランプ氏とバイデン氏のどこが最も懸念されるか」という面白い世論調査が行われたのですが、トランプ氏は法的な問題で訴追されているため、アメリカ国民全体の半数以上がそれをトランプ氏の問題として指摘しています。他方で、バイデン氏に関しては健康問題なのです。
飯田)健康問題。
合六)約4分の3、70%強の人が肉体的なことだけでなく、バイデン大統領のメンタル面を懸念しています。民主党支持者のなかでも、半数以上がバイデン大統領の状況を懸念しているのです。トランプ氏の場合、特に同盟国からすると、これまでNATOを問題視するような発言もしてきました。日本も以前の政権では日米関係が安定的に推移しましたが、次はどうなのかという問題があります。
飯田)そうですね。
合六)しかし、バイデン大統領なら安心かと言うと、必ずしもそうではない。いまの状況が示している通り、例えば議会がねじれてしまうと、議会の制限によってバイデン大統領が自由に対外政策、安全保障政策を動かせなくなる可能性もあります。バイデン大統領のウクライナ政策を見ていても、いい部分と問題のある部分があって、アメリカ全体として内向きになっている。それに対して今後、日本として、同盟国としてどうするのか考えなければならないと思います。
自分たちの貢献を増やすことで「有利な安全保障環境を創出する」ことが各国に求められている
飯田)既に「トランプ政権になったらどう対応するのか」が議論されています。いろいろな見方がありますが、オバマ政権のときから既に内向きであり、そこは変わっていないという指摘もあります。日本は防衛費を増やそうとしていますが、より「自分の国は自分で守る」という考えで対応する必要があるのでしょうか?
合六)いまはアメリカやヨーロッパの同盟国も含めて、どの国も「1ヵ国で自分たちを守れる」という状況ではないわけです。そのため、負担ではなく自分たちの貢献を増やす、あるいは責任を増やすことによって、「自分たちに有利な安全保障環境を創出する」という方法が求められていると思います。その意味では、単に防衛力を強化するだけではなく「防衛費をどこまで増やし、我々が負担するのか」という、ある種の覚悟が必要です。
GDP比3%以上の防衛費を「さらに上げるべきだ」という国民の声が大きいロシアの隣国エストニア
合六)先日、NATO内でも特に東側の、ロシアと国境を接しているエストニアに行き、まさに「トランプ氏が大統領になったらどうするか」ということも含めて議論してきました。エストニアは既に国防費をGDP比3%以上に費やしていますが、世論調査を見るとウクライナ戦争の影響で、さらに上げるべきだとする国民の声が多いのです。
飯田)それだけエストニアの一般国民は、肌で感じている部分がある。
合六)距離が近いこともありますが、陸地でつながっているのです。ロシアがウクライナに勝ってしまった場合、「次は自分たちの番ではないか」という危機感は、ものすごく高い。今回、首都タリンだけではなく、ロシアと国境を接するナルヴァにも行ってきたのですが、川を挟んで目の前にロシアがあります。それをつないでいる橋には「竜の歯」という、戦車が攻めてこないような障害物を置いているのです。
飯田)鉄筋コンクリートの構造物ですね。
合六)「自分たちはNATOに加盟している」ということが最も大きな安心感なのですが、トランプ氏が大統領になった場合、NATOの将来もどうなるかわかりません。そのため、「自分たちで自分たちの国を守らなくてはならない」という意識が高まっているのだと思います。
家族や国を守るためにボランティアで軍隊に参加する制度があるエストニア
飯田)例えばエストニアのなかで、自分たちで独自の核を持ちたいという議論はあるのですか?
合六)まだその議論はありませんが、実際に攻められた場合は小国で人口も少ないため、正規軍だけでなく、領土防衛軍のようなボランタリーの軍隊に参加するという制度があります。歴史的に古いのですが、そこに参加する市民の数が増えているそうです。「自分たちで家族や地域、国を守らなければいけない」という意識はかなり高いと、向こうの専門家がおっしゃっていました。
飯田)日本としても、集団的自衛権の組織がないアジアで「どうするか」は今後の課題です。
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