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中国・習近平氏が表明した「産業システムの改善」には「産業構造」が必要

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月8日 11時50分

中国・習近平氏が表明した「産業システムの改善」には「産業構造」が必要

中国の習近平国家主席(中国・北京)

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席が表明した「産業システムの改善」について解説した。

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年9月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年9月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国・習近平国家主席、全人代の分科会で「産業システムの改善」を表明

中国の習近平国家主席は3月5日、全国人民代表大会(全人代)の江蘇省の代表を集めた文科会のなかで「イノベーションを促進し、新興産業を育成し、産業システムを改善しなければならない」と表明した。

飯田)李強首相の演説では、政府の「5%前後の成長率目標」を変わらず主張していました。

産業システムを改善するためには産業構造を変えなければならない

宮家)国家主席が「イノベーションを促進し、新興産業を育成し、産業システムを改善する」と言ったとしても、それで経済が言った通りになるわけではないですよね。経済は、政治家ではなく、普通の人々が回しているのです。彼らが民間の知恵と努力を使い、初めてこのような経済成長が起きる。

飯田)国家主席が言えばそうなるものではない。

宮家)中国はいま経済的に、非常に厳しい状況に置かれています。バブルが弾けて不動産価格が低迷し、若者の失業率も高い。それに加えて、「中所得国の罠」に嵌まっているのです。中所得国の罠とは、1人当たりのGDPが1万ドルを「超える・超えない」辺りになると、世界の工場として低賃金で輸出していた方法がコストに見合わなくなるので、産業構造を変える必要があるという話です。そのとき行うべきなのは自由化であり、規制緩和、民営化、国有企業の改革、イノベーションなども進めなければならない。

「民間企業を活用する」と言っておきながらIT企業を規制 ~このままでは経済成長は2~3%か

宮家)それはわかっているので、習近平さんも「イノベーションをやれ」と言っているのです。でも、そのためには規制緩和を行い、もっと民間に自由に経済活動をやらせなければいけません。確かに「民間企業を積極的に活用する」と言ってはいますが、一方でインターネット企業などを規制しているではないですか。

飯田)アリババなど。

宮家)アクセルとブレーキを一緒に踏むようなものなので、どちらかが暴走するに決まっています。それで政府の経済成長率目標を5%前後に設定できるのでしょうか。5%どころか、IMFは4.6%と予測していますよね。このままだと、実態は2~3%だと思います。

日本のバブル期と同じ状況になりつつある中国

飯田)産業構造の転換というのは、いままで外需に頼っていたのを内需に変えるということですか?

宮家)そうです。本当はお金をばら撒けばいいのですが、習近平さんはやりたくないのです。文革時代にひもじい思いをしたし、党のイデオロギーから考えても、そういったバラマキは戒めているという話を聞きます。でも、マクロ経済的に考えれば、絶対に内需を拡大しなくてはならず、そのためには財政支出が必要ですよね。それができないのか、やりたくないのかはわかりませんが、十分にやっていないという指摘はまだあるようです。

飯田)財政支出を。

宮家)日本が嵌まった1990年代の失われた30年と同じだと言うつもりはありませんが、これはもう悪循環であり、似たような状況が起きています。10年くらい前、中国の人たちは「我々は日本のバブル崩壊を徹底的に研究しているから、同じような間違いは繰り返さない」と言っていたのですが、「やっぱり、日本と同じではないか」と言える状況になってきたと思います。

飯田)財政支出を。

宮家)日本が嵌まった1990年代の失われた30年と同じだと言うつもりはありませんが、悪循環であり、似たような状況が起きています。10年くらい前、中国の人たちは「我々は日本のバブル崩壊を徹底的に研究しているから、同じような間違いは繰り返さない」と言っていたのですが、「同じではないか」と言える状況になってきたと思います。

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年9月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年9月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

台湾を統一するには武力行使せざるを得ない中国

飯田)今回の全人代では、台湾に関する表記で(従来の)「平和統一」から「平和」という表現が消えたなど、いろいろなことが言われています。周りの国々は警戒しますよね。

宮家)気持ち程度に抜いたのでしょう。ただ、統一が平和につながるとは思えません。そもそも、台湾がいまの中国と一緒になりたいと思うでしょうか?

飯田)台湾側の世論調査などを見ると、そうは思っていないですよね。

宮家)「平和的に統一する」ということは、中国のシステムを受け入れるということです。それは無理だと思いますし、私だって嫌ですよ。台湾も10年くらい前なら、「中国経済に飲み込まれるのも仕方ないかな」と人々が思う時期があったかも知れません。しかし、彼らも香港やウイグル、チベットなどを見ています。台湾の人たちは自由を謳歌し、日本よりもきちんと政権交代しているので、民主主義のシステムです。きちんと民主主義をやっている人たちが、中国大陸のやり方を受け入れたいとは思わないですよね。

武力行使すれば経済は立て直せない ~だから産業システムを改善したい

宮家)だから、中国がどうしても統一したいと思ったら、武力に頼らざるを得ない。しかし、そんなことをしたら中国経済は終わります。ロシアのように経済制裁が待っていますし、石油も止められます。そうなったら、苦しい経済を立て直そうとしているときに、一体どうするのでしょうか。しかも軍の内部では汚職がまん延しているそうです。そんな状況で、どうやって戦争をするのでしょうか……となっているからこそ、産業システムを改善したいのだと思います。

ASEANとの関係を強化するオーストラリア

飯田)周りの国では、オーストラリアとASEANの首脳会議が行われました。このようなネットワークを広げていくことが重要ですか?

宮家)オーストラリアは中国に資源を売っていた良き時代もあったのですが、最近の中国のオーストラリアの扱い方は酷いですから、オーストラリアも堪忍袋の緒が切れたのでしょう。インド洋と接しているオーストラリアは、海洋国家としてASEANとの関係を強化したいのだと思います。

飯田)この辺りの思考は、日本も当然同じですか?

宮家)同じです。

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