侍ジャパン井端弘和監督とラグビー日本代表エディー・ジョーンズ 「代表指揮官」の共通点
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月8日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、大学生投手の積極起用でパーフェクトリレーを達成した侍ジャパンの井端弘和監督と、ラグビー日本代表エディー・ジョーンズHCの意外な共通点にまつわるエピソードを紹介する。
新生・侍ジャパンがヨーロッパ代表相手に2連勝! しかも、投手6人でのパーフェクトリレーのおまけ付き。その流れをつくったのは、井端監督の肝入りで招集した2人の大学生投手だ。先発した金丸夢斗(関西大3年)は2回4奪三振パーフェクトと圧倒的なピッチングを披露。そのあとをリレーした中村優斗(愛知工業大3年)も150キロ後半を連発して、いい流れを継続させた。
また、守っても西川史礁(青学大3年)がファインプレーを披露し、パーフェクトリレーをアシスト。西川は打っても前日から3打席連続ヒットを記録。最注目、とも言われた宗山塁(明治大3年)は肩の骨折が判明し、残念ながら出場機会がなかったが、それぞれが見事な存在感を見せてくれた。
改めて、なぜ今回、井端監督は大学生をメンバーに入れたのか。大会前にその意図を次のように語っている。
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『ここ最近の侍ジャパンを見ても、プロ1年目の選手や1年目に活躍した選手がすぐに選出されていることがあります。また、“自分がプロの中でどれくらいの位置にいるか”を知れば、この1年の過ごし方が変わってくる。そう思ったので、大学トップレベルの選手たちを選びました。今年のプレミア12はどうか分かりませんが、今後のWBCやオリンピックの予選、本戦と代表に入ってきておかしくない選手たち。何かを掴んで帰って欲しいです』
~侍ジャパン公式サイト(2024年2月29日配信記事)より
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実際、西川史礁は事前練習を含めて印象に残ったプロ選手としてヤクルトの塩見泰隆と村上宗隆の名を挙げ、大きな刺激を受けたことを明かしている。まさに、井端監督の狙い通りだろう。
実は井端ジャパン同様の「トップ選手から大学生が何を学ぶか」という出来事がつい最近、ラグビー界でもあった。今年(2024年)1月からラグビー日本代表ヘッドコーチに再就任したエディー・ジョーンズHCのもと、2月に初めて行われた代表合宿でのことだ。
2月6~7日、ラグビー日本代表のトレーニングスコッド合宿が、福岡にある日本代表の練習拠点「JAPAN BASE」で開催。ちょうど2月上旬にスーパーラグビー勢と戦うことになっていた昨季リーグワン4強(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、埼玉パナソニックワイルドナイツ、横浜キヤノンイーグルス、東京サントリーサンゴリアス)以外のチームから34人が参加。そのうち、何と大学生は9名にのぼった。
大学ラグビーからの底上げは、エディーHCが就任会見でも「超速ラグビー」とともに熱っぽく語った重要テーマだ。
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「日本ラグビーのベースは大学ラグビーです。どうすれば彼らをより早く成長させることができるか。学生たちが『もっと上のレベルでプレーしたい』と思わせるために何ができるのか。若い才能を発掘し、育て、それを最大限に生かせるようなシステムを作る必要があります」
~2023年12月14日 エディー・ジョーンズHC 就任会見より
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今回の合宿後も、エディーHCは大学生を呼んだ意義をこう語っている。
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『若い選手は発掘しないといけない。ご存知のように(2023年の)ワールドカップは、年齢の高い選手たちが集まっていた。いうことは、次の大会では多分、ベストな状態でなくなることが予測される。だから、その世代ごとに一番いい選手たちをピックアップしていく必要がある。もしかしたら、6月のテストマッチでプレーできる選手が中にはいるかもしれない』
~『JSPORTS』2024年2月8日配信記事 より
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こうした大学生の底上げ視点だけにとどまらず、井端監督とエディー・ジョーンズHCを比べると、実はとても共通点が多いことがわかる。アマチュア事情にも精通し、とことん現場主義で試合を見続けている点だ。
たとえば一昨年(2022年)の初夏、私は当時、NTT東日本でコーチを務めていた井端氏にインタビューする機会があり、NTT東日本グラウンドを尋ねたことがある。その際、井端氏は「午前中は高校野球を見てきました。昨日は大学野球を見てましたね。このあとですか? プロ野球の解説で東京ドームに行きます」と、野球漬けの日常をこともなげに答えてくれた。ドラフト会議でも、下手なアマチュアライターよりもアマチュア選手に詳しいことはもうすっかり有名だ。
同様に、日本代表HCに復帰したあとのエディー・ジョーンズ氏もまさにラグビー漬け。大阪で高校生の花園ラグビーを見ていたかと思えば、翌日は東京で大学ラグビー選手権の解説席に。さらに翌日、花園ラグビーにとんぼ返りしたかと思えば、週末はリーグワンをハシゴ観戦していた、なんてことは当たり前の光景だ。
それはもう義務感などではなく、ただただ、野球を見るのが好き、ラグビーを見るのが好き、という競技愛のなせる技である。こんなにも真摯に、この国のアマチュアレベルまで気にかけてくれる代表指揮官は、本当にありがたい存在と言える。
その代表指揮官の狙いを、現場の選手たちはどのように受け止め、次に生かすのか。答えが出るのはもう少し先の未来になりそうだが、大会で結果を残すこと以外にも代表指揮官ができることは多い。そのことがとても頼もしい。
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