身長170センチ台の山本由伸、松井裕樹、今永昇太がメジャーで勝機を見出すある球種
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月18日 17時20分
![身長170センチ台の山本由伸、松井裕樹、今永昇太がメジャーで勝機を見出すある球種](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_501452_0-small.jpg)
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、開幕が近づくメジャーリーグに今季から挑む、山本由伸投手、松井裕樹投手、今永昇太投手にまつわるエピソードを紹介する。
![【MLBドジャース オープン戦 ドジャース対マリナーズ キャメルバックランチ】2回を無失点でおさえ、ベンチに戻るドジャース先発の山本由伸=2024年3月13日 グレンデール(撮影・蔵賢斗) 写真提供:産経新聞社](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2024/03/10000000000000100611_20240318101139519804_P240314000129RS.jpg)
【MLBドジャース オープン戦 ドジャース対マリナーズ キャメルバックランチ】2回を無失点でおさえ、ベンチに戻るドジャース先発の山本由伸=2024年3月13日 グレンデール(撮影・蔵賢斗) 写真提供:産経新聞社
メジャーリーグ韓国開幕戦が近づいてきた。そして、本土開幕までもあと10日ほど。今季のメジャーリーグでは新たに日本人投手3人(山本由伸、松井裕樹、今永昇太)が仲間入りしたことで、例年以上に注目度は高い。
この3投手にはある共通点がある。山本と今永は公称178センチ。松井裕樹は174センチ……3人とも身長が180センチに満たないことだ。
そしてこのことは、一部でメジャーでの成功を不安視する要素としても挙げられている。まだ山本のドジャース契約が決まる以前ではあるが、MLB公式サイトでは、山本の身長178センチはひとつの懸念材料であるとして、昨季のメジャーリーグでのこんなデータを紹介している。
『今季10試合以上に先発した189人の投手のうち、身長が5フィート10インチ(=約178cm)以下の投手はマーカス・ストローマンとソニー・グレイの2人しかいなかった。189人中100人以上の投手が身長6フィート3インチ(=約190cm)以上である』
~『MLB.jp』2023年11月10日配信記事 より
これをそのまま受け取れば、過酷なメジャーリーグで投げる上では身体的スペックが必要、ということになるのだろう。実際、これまでメジャーリーグで活躍した日本人投手は比較的(日本人としては)大柄な投手が多かった。日本人投手のメジャー通算勝利5傑の身長を見ると、全員が185センチ以上だ。
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2位:ダルビッシュ有(196センチ)103勝
3位:黒田博樹(185センチ)79勝
4位:田中将大(190センチ)78勝
5位:前田健太(185センチ)65勝
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だからといって、180センチに満たないから成功しない、というのは正直つまらない。これに反証するデータや考え方も考察したい。
ひとつには、過去の成功例だ。サイ・ヤング賞3回(1997年、1999年、2000年)のペドロ・マルティネス、サイ・ヤング賞2回(2008年、2009年)のティム・リンスカムはともに身長180センチ。数は少ないとはいえ、小柄ながらメジャーの世界で活躍した大投手はいる。
そしてもうひとつは、メジャーの世界で、低いアングルから伸びるストレートが見直されていることだ。元サイ・ヤング賞投手で、昨季DeNAでプレーしたトレバー・バウアーは、同僚だった今永について、こんな言葉を残している。
『チームメートになり、間近でピッチングを見てから、彼はメジャーでも通用すると確信した。まず、真っすぐの回転数はメジャーでもトップクラスだ。回転効率が高いから、無駄がない。リリースポイントが低いから、VAA(バーティカル・アプローチ・アングル)も低い。よって、高めの球は打者が浮いているように見えるだろう。また、彼には狙ったところに投げられるだけの制球力もある。その真っすぐを、他の球種を生かすためにも使えるクレバーさを兼ね備えている。真っすぐの質が高いからこそ、相手は真っすぐを意識する。そのタイミングでスライダーやチェンジアップがくれば、相手はなかなか捉えられない』
~『サンスポ』2024年1月11日配信記事 より
VAAとは、投球がホームベースに到達する時点での角度のこと。地面と平行であれば0度。この角度が0に近いほど、打者の目にはホップして映ると言われ、実際に空振り率が増えることもわかっているという。
この場合、身長が低い人が高めに投げたときの方がこのVAAの角度が0に近くなる。つまり、身長170cm台の日本人投手の方が、このVAAの視点では有利になるのだ。
実際、松井裕樹は実戦形式の練習で味方打線に投げた際、「高めのストレートが有効だ」と感想をもらったことを明かしている。同様に、今永はカブスのコーチから、低いアングルから高めに投げるボールがユニークだ、と指摘されているという。
ただ、そのストレートの勢いや高さが中途半端だと、まさに打ち頃の球になってしまう諸刃の剣であることも確か。今永も初の実戦形式では最初の打者に投じた初球のストレートをスタンドに運ばれていた。ただ、登板を重ねるごとにその中途半端さも改善し、14日のオープン戦(アスレチックス戦)では、5回途中3安打無失点で、高めのストレートを軸に9個の三振を奪って見せた。
また、バウアーの言葉を借りれば、質の高い真っすぐを軸にいかに変化球を活用するか。質の高い真っすぐが徹底できるほど、「レインボー」と称される山本由伸のカーブ、そして必殺のスプリットもより生きてくるはずだ。
いよいよ始まる、メジャーリーグのレギュラーシーズン。オープン戦で試してきた高めストレートが実際に通用するのか。身長170センチ台の3人がメジャーの大男たちを手玉に取る姿を期待したい。
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