「笑顔」が命の輝き 認知症になっても笑顔はできる 医療法人「優和会」理事長 松永平太
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月21日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(3月14日放送)に医療法人「優和会」理事長の松永平太が出演。長寿時代の地域医療について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。3月11日(月)~3月15日(金)のゲストは医療法人「優和会」理事長の松永平太。4日目は、高齢者の命を輝かせることについて—
黒木)先生の著書『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』のなかで、「マザー・テレサさんはこの世で最大の不幸とは貧困や病ではなく、見放されて誰からも必要とされなくなることだと述べています」という内容が書かれていました。とても印象的な箇所でしたので、詳しく教えていただけますか?
松永)マザー・テレサが亡くなったのは1997年で、私の父と母が亡くなったのも1997年。そして、私が千倉に戻ったのも1997年です。マザー・テレサのキーワードは何かと言うと、1つはPeace、もう1つはLoveなのです。Loveには、男女のLoveもあるかも知れませんが、「誰かから愛され、つながっている」ということが大事です。それがないと、ひとりぼっちになってしまう。若ければ自分で生きていけますが、年を取った場合、何かつながりがないと苦しくなってしまいます。つながりがあればあるほど、愛があればあるほど元気に、病気にもならず幸せに生きていける。認知症にもなりにくいというデータがあります。
黒木)愛とつながりがあれば。
松永)人間と人間のつながりは、自分が強くてわがままであれば「しがらみ」と言われます。自分が弱くて病気になったり、災害に遭えば「絆」と言われる。でも、いつか必ず死ぬのです。死ぬ過程においては弱くなる。だから「つながりが大事、絆が大事なのだ」ということに我々は気付くべきだと思います。
黒木)高齢者の方々が誰からも関心を寄せられなくなったとき、孤独が病気を招いていくわけですよね。先生はどのように高齢者の方々と接していらっしゃるのですか?
松永)デイサービス(通所介護)ですね。皆さん、元気だった時代とヨボヨボになった状態のいまを比較して、寂しそうにするのです。そういうヨボヨボの人たちをみんな集めると「お前、右肩が酷いな」と言ったり、相手は「お前も認知症で口の周りにご飯粒をつけて」と言い返す。「いや、ご飯は食ってない」とか「なんじゃそら」などと言い合うことで、「同じように不具合や障害を持っている人がいるのだな。自分1人ではないのだな」とわかるのです。
黒木)そういう方が集まることで。
松永)いままで自分自身を否定し、存在する居場所がないと思っていた人も、集まってみると「みんないろいろな困りごとがあるのだな」とわかる。「仕方ない、これが年を取るということだ」と自分の居場所を見つけられるのです。そうすると少しずつゴソゴソが始まって、ニコニコが始まり、支え合って笑顔が生まれてくる。そういう仕掛けもつくっています。
黒木)それがデイサービス。他にはどんなことを行っているのですか?
松永)美味しいものを食べて怒る人はいないですよね。思わず笑ってしまうので、美味しいものを食べてもらいたい。だから30年以上、レストランのシェフを務めている人を連れてきて、煮魚に白いご飯、黒いノリを載せてもらいました。黒でコーディネートした食事から、赤や白や黄色や緑、カタカナの料理まで。患者さん自身は何がなんだかよくわからないけれど、「うまい」と言って笑顔になる。そういう仕掛けもつくっています。他にもたくさんあります。「元気になれるなら、なりましょう」と元気にさせることが大事だと思います。
黒木)笑顔になってもらうことがいちばん大事なのですね。
松永)そうですね。長生きはマルでもバツでもないのです。命が助かったあと、命のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)、命の輝きが上がればマルであって、下がれば余計なお世話。命の輝きとは何かと言うと、笑顔だと思います。認知症になっても笑顔にはできる。だから私たちは「地球一、笑顔を集めるグループになろうね」と言っています。
松永平太(まつなが・へいた)/医療法人「優和会」理事長
■1992年、東京医科歯科大学を卒業後、民間病院へ入職。地域医療、看護ケアの大切さ、命を支えるケアを学ぶ。
■父親が倒れたことにより、1997年に父の診療所「松永医院」を継承。
■2000年、介護保健制度施行に合わせ「有限会社ハイピース」にて、訪問看護のための介護ステーション「そよかぜ」創設。2001年、医療法人社団「優和会」創設。
■以降、デイサービスセンター「あそぼ」を設立。社会福祉法人「おかげさま」創設。老人保健施設「夢くらぶ」、「夢ほーむ」、認知症対応型デイサービス「おかげさま」創設。
■2023年、看護小規模多機能「にこにこ」創設。
■2024年には、地域包括支援センターを創設予定。
■医療・介護・福祉を通じて社会貢献することを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げる。いまの命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、「患者の未来の笑顔を守ること」を使命とし、多職種協働を図っている。
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