1日約2万7000食! 70周年の横浜駅弁「シウマイ弁当」は、どのようにして出来るのか?
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月26日 11時55分
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
令和6(2024)年4月で、横浜駅弁の「シウマイ弁当」が誕生70周年を迎えます。「シウマイ弁当」は、横浜市西区と都筑区、東京都江東区にある3つの工場で、1日約2万7000食が製造されており、“日本一売れる駅弁”とも云われています。「シウマイ弁当」は、いったいどのように作られているのか? 駅弁業者の製造工場にお邪魔して、その工程を見せていただきました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第50弾・崎陽軒編(第1回/全6回)
明治5(1872)年、新橋~横浜間から始まった日本の鉄道。150年あまりを経たいまも、この区間は東京と横浜を結ぶ大動脈となっています。最初は上り・下りが同じレールを使う単線だった線路は、明治時代に複線化されました。大正時代には近距離の電車が走るいまの京浜東北線によって複々線化、昭和に入ると、品川~鶴見間に貨物線が作られ、現在では、横須賀線や新宿方面などに直通する旅客列車も走るようになっています。
鉄道発祥の地の1つ・横浜を拠点に、横浜名物シウマイや駅弁を製造しているのが、「株式会社崎陽軒」です。駅弁の「シウマイ弁当」はこの春、誕生から70周年を迎えます。駅弁膝栗毛恒例、駅弁の製造風景や、トップに駅弁にまつわるエピソードを伺っている「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第50弾は、「株式会社崎陽軒」に注目します。今回は横浜工場で7年ぶりに「シウマイ」と「シウマイ弁当」の製造風景を見せていただきました。
いまから70年前、昭和29(1954)年4月に横浜名物「シウマイ」の妹分として誕生した「シウマイ弁当」。首都圏からの鉄道旅では、シウマイ弁当から始まる方も多いでしょう。現在は1折・950円。横浜駅はもちろん、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県と静岡の崎陽軒のお店などで販売されています。ちなみに、ニッポン放送は昭和29(1954)年7月開局ですので、シウマイ弁当と“同級生”となりましょうか。
●横浜名物シウマイの隠し味は、「干帆立貝柱」!
まずは「シウマイ」の製造です。シウマイの原材料は、国産の豚肉、玉ねぎ(北海道産)に加え、“冷めてもおいしい”を実現するため、干帆立貝柱を“隠し味”として使っています。聞くところでは、北海道・オホーツク海産の帆立の貝柱だそう。この他、グリンピースが入り、味付けは、塩、砂糖、こしょう、でんぷんのみ。おいしいものはやはりシンプルに作られているんですよね。
国産豚肉は、冷凍保存をせずに、製造直前に精肉して挽いていきます。肉の餡には干帆立貝柱を戻した旨味が溶け出したスープごと混ぜているそう。この餡にはグリンピースをあらかじめ混ぜ込んでいるのも崎陽軒ならではの特徴です。成形されると95℃の蒸し器で10分間蒸されシウマイは完成。全部で8つの製造レーンがあり、うち2つが昔ながらのシウマイとなっています。
●崎陽軒の新入社員は必ず通る道・シウマイ弁当の紐かけ!
「シウマイ弁当」は、蒸気炊飯で炊かれて成形された俵型ご飯・昔ながらのシウマイ・鮪の漬け焼・蒲鉾・玉子焼き・鶏の唐揚げ・自家製シロップで漬けられたあんずの順に盛り付けられ、最後に経木の折箱の角の小さなスペースに、切り昆布と千切り生姜を詰めます。次から次へ流れてくる弁当を前に、狭いスペースにスムーズに盛り付ける様子は、何度見ても職人技。経木の折箱はオリジナルのものだそうです。
そして横浜工場・本社工場製の「シウマイ弁当」に欠かせないのが、昔ながらの掛け紙にひもを十字にかけていく作業。こちらはしっかり手作業で行われていました。ギュッと結ぶ紐に込められた作り手の愛情が、紐をほどくときに感謝の気持ちとしていただく人間に届く。この気持ちのやり取りが、駅弁の醍醐味のように感じます。春の入社式シーズンですが、崎陽軒では、シウマイ弁当の製造ラインを体験する新入社員研修があるといいます。
【おしながき】
・俵型ご飯 小梅、黒胡麻
・昔ながらのシウマイ
・鮪の漬け焼
・蒲鉾
・鶏の唐揚げ
・玉子焼き
・筍煮
・あんず
・切り昆布&千切り生姜
横浜名物シウマイと幕の内弁当を組み合わせてできた「シウマイ弁当」。三崎港のある神奈川らしい鮪の漬け焼(焼魚)、蒲鉾、玉子焼きと幕の内“三種の神器”が入った正統派の弁当です。列車でいただくことを前提に作られたひと口サイズの昔ながらのシウマイが5個入っているのもちょうどいいですね。私も一般的な焼売の上に載っていたグリンピースが苦手でしたので、崎陽軒のシウマイのおかげで苦手を克服できたと感じています。
新橋~横浜間で始まった日本の鉄道ですが、その後、東海道本線として西へと延びて、明治22(1889)年に神戸までが全通します。しかし、崎陽軒の創業は、明治41(1908)年。東海道本線沿線の構内営業者としては最古参ではありません。いったい崎陽軒は、どのようにして生まれ、首都圏ではまず知らない人のいない存在となっていったのでしょうか?
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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