「日本は限りない可能性を秘めた国」元内閣官房参与・加藤康子氏が示す、日本が目指すべき「ものづくりのあり方」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年4月13日 12時30分
元内閣官房参与で一般財団法人産業遺産国民会議専務理事の加藤康子氏が3月31日、ニッポン放送の特別番組「加藤康子TALK RADIO」に出演、エネルギー問題を軸に、日本が目指すべき「ものづくりのあり方」についての考えを示した。
同番組は、日本が目指すべきものづくりのあり方、エネルギー問題や環境問題について、リスナーと一緒に考えていく30分のプログラム。このなかで加藤氏は、まず「日本の基幹産業、自動車産業や鉄鋼というものは、優れた世界一の技術を持ってると思います」と語り、幕末から明治の産業日本の勃興や戦後の日本の産業の復興を振り返りながら、「ものづくりの未来にもその産業史が生かされたらいいなと思っています」と述べた。
そして、その「ものづくり」を支えるエネルギー政策の課題と提言について加藤氏は、次のように示した。
森田耕次(ニッポン放送):日本では2030年度に温室効果ガスの排出量を、2013年度に比べて46%削減する。そのための目標としてエネルギー基本計画がつくられています。国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画が、見直しに入るということで、これから大きな問題、焦点になってきそうですね。
加藤:国民の未来を決める上で、国家の成長を描く上で、このエネルギー政策というのは一番重要な政策だと思います。
森田:今のエネルギー基本計画は、3年前の秋に閣議決定されまして、次の計画づくりに向けた議論というのはこの春にも行われるのではないかと言われてます。今のエネルギー基本計画での、2030年までの電源構成を見ると、再生エネルギーを増やしている。これを36~38%にしていこう。そして原子力発電は20~22%に、火力発電は減らしていって41%にしよう、というのが今の計画ですよね。
加藤:はい。エネルギー基本計画というものを各国でつくるわけですが、いかにして安定的に安価な電力をいかに国民に供給していくかということです。その上で、このエネルギー基本計画を見て民間企業もここで産業活動をしようかどうしようかということを決めますので、十分な電力がないと困るわけですね。3E(エネルギーの安定供給 Energy Security/経済効率性の向上 Economic Efficiency/環境への適合 Environment)とS(安全性/Safety)を基本にエネルギー基本計画を作っていくのですが、(現在の)第6次エネルギー基本計画では、その環境の「脱炭素」の点で、温室効果ガス削減46%を達成するためにどうすればいいのかということで、随分「再エネ(再生可能エネルギー)」にシフトした案が出されたんですね。
森田:そうすると、諸外国では、この脱炭素の目標ということではなくて、今おっしゃられた安定的、そして安いこのエネルギーをどうやって作り出すかということがこの計画になってるわけなんですね。
加藤:そうです。やはり電力なくして国家の成長もなければ、国民の安定した暮らしもないわけなので、最初に政府が考えることは、自国の民をどういうふうに守っていくのか、それから自国の経済をどうやって成長させるのか、そういうことを基準に考えます。ですから、気候変動の目標を定量的にエネルギー基本計画と合わせるという国は、世界中、欧米諸国でどこもありません。今、日本だけが、気候変動のおぼろげながら浮かんだ46%、これをエネルギー基本計画に織り込んでいろいろと頑張ってらっしゃるというところだと思います。
森田:そうすると、国民が払う電気料金なんてことは考えていないということですから。
加藤:そうですね。でもまたこれから、再エネ賦課金がさらに重たくのしかかってきてですね……
森田;再生可能エネルギーというのはコストが高いとよく言われますが、実際そうなんですか?
加藤:そうです。再エネを作れば作るほど電気代は上がると理解していただきたいと思います。ですから、地元で太陽光発電、メガソーラーができたりすると、それが皆さんの電気代にかかってくるということを理解していただきたいと思います。
森田:今のエネルギー基本計画を見ると、その再生可能エネルギーの中でも、一番比重を占めているのが太陽光で、14~16%、その後が水力、そして風力と続くわけですが、日本はこれからの次のエネルギー計画でもこの太陽光を増やしていこうということになるんですかね。
加藤:世界の二酸化炭素からいいますと、中国が30%以上を排出しているわけで、日本はわずか3%です。その日本が自らを削ることによって本当に世界の環境が良くなるのかと。バランスのとれた政策にしていかなければ問題があるのではないかと思いますし、「再エネ」になると必ず電力は高くなります。それこそ、安定した電力ではないわけです。
森田:そうですね。雪国なんかでは太陽光はかなり難しいですよね。
加藤:難しいですね。それから、例えば夜間は発電しないわけですから、その時にはどうするかといいますと、バックアップ電源は火力で調整してるわけですね。火力を減らすという中で。
森田:結局、火力が必要なんですね。
加藤:必要なんです。ところが、この「脱炭素」のなかで、火力(発電所)を作ってはいけないと。ベースロード電源である原発も、このままいくとどんどんどんどん老朽化して廃炉が進むと。そういった中で、これから5年、10年後に影響するようなエネルギー基本計画では、ベースロード電源といわれる原子力と火力、これは世界一の技術を持っているので、きちっと国民の暮らしを守るためにしっかり位置づけていただきたいと。
森田:岸田総理は去年の夏にGX、グリーントランスフォーメーションの会議(GX実行会議)で、次世代の革新的原子炉の開発や建設に向けても検討していくことを表明しました。これまでのエネルギー政策を転換したと大変大きな報道がありましたが、こういった意味では、この革新的原子炉といったものもどんどんこれからは新しく作っていかなくてはいけないということになるんでしょうね。
加藤:本当に私はそれをきちっと、次の第7次エネルギー基本計画に織り込んでほしいと思ってるんです。稼働60年を超えても運転可能になるGX電源法(2025年施行)もありますが、原子炉の老朽化したものは、その延長だけではなくて、それをリプレースして新しく設置する、そして増設するといったことも、第7次エネルギー基本計画に織り込むことによって、東日本大震災前は全体の30%だった原子力、それを目指すべきだと私は思います。
森田:今20~22%にしようというのが今のエネルギー基本計画ですが、これを30%ぐらいにしていくと。この原子力の技術は日本は今、どうなんでしょうか。
加藤:G7の中で、火力の、例えば蒸気タービン、ガスタービン、ボイラー、それから原子力……全てにおいてですね、エネルギー産業の様々な設備を建設する技術は世界一です。
森田:全ての発電機の製造の能力、日本はそんなに高いんですか。
加藤:そういう人材がいる間に、きちっとした形で、やはりリプレース、新規のものを作っていくということが必要になってくると思います。
森田:だから、今ある原発のような大型ですごい敷地にというものではなくて小型のものであるとか、「革新的」というのはいろんな形で原子力、原子炉が作れるということなんでしょうね。
加藤:そうです。そして、福島第一原発事故の後、いろいろな研究が安全性においてもされておりまして、例えば飛行機が突っ込んだ時でも耐えられるような原子炉を作っていこうというので、いろんな研究をされてるんです。
森田:本当に、世界でトップクラスですね。
加藤:それから次世代原発の開発では、例えば高温化ガス炉の技術を日本はポーランドやイギリスなどへ出していますが、日本で貯蔵からすべての設備をつくれるようになっているんです。それこそ、明治からずっとタービンを作ってきた日本ですからね。
森田:ものづくりの力は続いてるんですね。
加藤:続いているんです。100年以上作ってるわけですから。そういう点では世界一の技術だと思います。
そして加藤氏は、「再エネ」の抱える課題や、エネルギーの安全保障上のリスク、EV化推進の問題点などを指摘するとともに、行き過ぎた働き方改革への懸念も示し、日本の「ものづくり」の今後への提言として次のように締めた。
加藤:日本がこれから世界で生き残っていくためには、経済波及効果が一番大きな産業である製造業、ものづくりを日本でやり続ける国産化比率を維持し続けるということが非常に重要です。私は、日本は限りない可能性を秘めた国だと思っています。職人スピリットといい、今までの蓄積といい。あとは正しい政策によって、安価で安定した電力を供給できるインフラを作る。それで、かなり多くのことを解決できると思います。
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