流れ星に願いをかけるのはなぜ? 小惑星・彗星から宇宙の謎にせまる
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年5月7日 11時10分
「第71回 産経児童出版文化賞」大賞受賞作『ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石』』(岩崎書店、2023年)の著者・三品隆司が、ニッポン放送の特別番組「宇宙の謎を解くカギ 小惑星にせまる」に出演し、小惑星について解説した。
「産経児童出版文化賞」は、1954 年に「次の世代をになう 子どもたちに良い本を」という趣旨で創設され、学習参考書を除く全児童図書を対象に、最も優秀な図書に贈られるもの。
三品は、受賞について「大変嬉しく思います。特に、いろいろな形の本がある中でも図鑑に注目していただいたことと、比較的、特殊なテーマであるにも関わらず評価していただけたという点は、長いあいだ図鑑に携わってきたものとして、たいへん感謝しております」と喜びを語った。
奇しくも、放送日の5月6日は、みずがめ座エータ流星群のピーク。流星群の元になるのは、彗星が軌道上に残していったチリで、その中を地球が通り過ぎると、チリが地球の大気に衝突して、高温になり、大気とチリの成分の両方が光るので流星として見えると、流星群の正体について説明した。
さらに、流れ星に願いごとを唱えると叶うといわれることについては「いろいろな国で風習としてあるようです。日本でも古くから、流星は吉兆とする言い伝えがあります。たとえば『流星が自分に向かってきたらお金が入る』というのもあります。ただ、『願いを三度唱えると、願いが叶う』という言い伝えがどこで生まれたかについては、よくわかっていません。また、反対に、流れ星は、不吉なことが起きる兆しとする言い伝えもあります。天文写真家の藤井旭さんが、群馬県や静岡県の言い伝えとして『流星をみたら人が死ぬ』という不吉な民話を紹介していらっしゃいます」と話した。
また、『ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石』によれば、シベリヤに古くから住んでいる人々の間では、流星は神々が天球の上から天の蓋を少しだけ開けて、地上を覗いた時に、そのすき間から星が漏れて降ってきて起きると考えられており、流星が現れたときに願い事をすれば、神様に聞いてもらえるので叶えられると信じていたと書かれている。
番組で三品は、小惑星について詳しく語った。小惑星や彗星などは、小さな岩や氷でできた天体やチリなどで、無数にあり、太陽の周りを回っている。ふつう小惑星とよばれているものは、岩石や金属でできた小天体を指す。一方の彗星は、小惑星と違い、表面が雪や泥のような蒸発する物質でできているため、太陽に近づくと、太陽の強い光などの影響で、表面が蒸発、チリやガスを出し始める。それが、ちょうど長い尾を作り、ほうきのように見えるという。
小惑星などが、以前から太陽系誕生の謎を解く鍵になる天体と言われてきた理由については次のように語った。
三品:太陽系誕生の頃、今から約46億年前ですが、原始太陽の周りのガスやチリが集まって、しだいに大きなかたまりとなり、やがて惑星のように大きな天体が生まれたと言われています。
箱崎みどり(ニッポン放送アナウンサー):この時に、地球もできたんですよね?
三品:その通りです。小惑星は、そのときに惑星になれずに残された天体と言われています。そのまま残ったというわけではないのですが、惑星などと比べると、熱などによる変化の度合いはわずかですので、太陽系初期の情報をたくさん残していると言われているわけです。
箱崎:できたままの姿を、比較的残しているだろう、というものが、小惑星なんですね。
さらに、三品は、生命起源の謎については以下のように語った。
三品:地球の海の水や生命の材料は、小惑星や彗星がもたらしたと考える説があります。
箱崎:小惑星から地球に、水や命の素が届いた、という。
三品:そういう説が有力になっています。
この説は、原始の地球に大量の小惑星や彗星が降り注いだ時期(後期重爆撃期)があり、その後まもなく地球上の生命が生まれていることや、ほかのさまざまな状況から、地球に水や生命の材料をもたらしたのは小惑星や彗星ではないかと言われているのだという。
小惑星や彗星の研究・探査の目的として、生命の起源を探るほかに、小惑星のような小天体の衝突から地球を守る「プラネタリーディフェンス」があるという。恐竜などが絶滅するきっかけとなったのは、小惑星の衝突だと言われているが、実は、同じような天体の衝突は、地球の歴史上何度も起きている。今後に備え、あらかじめ衝突しそうな天体の動きを調べて、危険な天体があった場合の対策を準備する、というのが「プラネタリーディフェンス」の考え方だ。
三品:2022年、NASAの「DART」という探査機が、目標としていた小惑星に体当たりして、小惑星の軌道を少しずらすという実験に成功しています。
箱崎:ぶつけて軌道をずらすっていう実験が、実際に成功しているんですね。
三品:その方法が、現在のところ、一番有効ではないかというふうに考えられています。衝突の可能性がありそうな、潜在的に危険な小惑星を「PHA」といい、現在見つかっている直径140m以上のPHAが、約2000個あります。
箱崎:ぶつかってきそうな危険な小惑星が、2000個以上も!
三品:幸い、発見されている「潜在的に危険な小惑星」の中では、この先100年から200年くらいは衝突の危険はないといわれていますが、まだ見つかっていないものや、140m以下の見つけにくい小惑星はたくさんあると考えられますので、つねに監視が必要ということになります。
このように、プラネタリーディフェンスの成果と現状についても語った三品。加えて、将来、小惑星を鉱物資源として利用しようという計画もあり、さらに、将来的には、想像もつかないような展開が待っている可能性にも言及した。
最後に、子どもたちに対して「子どものころに、星空を見たり、本を夢中で読んだりした楽しい経験の記憶は、その後の人生を豊かなものにしてくれると、わたしは信じています。ふだんは、下か水平方向にしか向けていてない頭を、数分間、空に向けるだけでも良いと思います。わたしの場合は、夜は星、昼間は雲の動きを眺めているだけで、気分が良いです」と呼びかけた。
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