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1年間で100万トンの魚が廃棄 食べられるのに捨てられる魚「未利用魚」の実態

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年5月31日 12時0分

1年間で100万トンの魚が廃棄 食べられるのに捨てられる魚「未利用魚」の実態

食育日本料理家の梛木春幸さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。捨てられてしまう魚「未利用魚」の実態や、これを生かした取り組みについて語った。

梛木さんは食育の講演活動、商品開発、地域活性化事業、仕出し、料理プロデュースなどを行い、日本各地の自治体、企業、小中高等学校等で年間200以上の講演活動をしているほか、フランス、韓国、シンガポールなど海外でも各種のイベントを開催。未利用魚を地元・桜島の火山灰を利用して干物にした「桜島灰干し弁当」もプロデュースし、販売を開始した当初から売り上げ1位を記録して大人気だ。

食べられるのに捨てられる魚「未利用魚」

上柳:梛木さんの著書『捨てられる魚たち ―「未利用魚」から生まれた奇跡の灰干し弁当ものがたり―』(講談社)を読んで、利用しない魚“未利用魚”という言葉を私は初めて知りまして。本を開きますと、主な未利用魚の一覧がイラスト入りで書いてありますね。「ミノカサゴ」「アカエイ」「ツバメウオ」「ウツボ」などなど。

例えば、「ミノカサゴ」は釣りへ行くと「毒があるからダメだ~。食べられないな」ってなりますよね。

梛木さん:そうですね、毒を持っていますからね。ですが、毒をきれいに取って食べるとおいしいです。

上柳:「アカエイ」は水族館でよく見かけますが……。

梛木さん:アカエイもおいしいんですよ。

上柳:「ツバメウオ」は熱帯魚で、どうしても観賞用だと思ってしまいますよね。

梛木さん:そうですよね、でも白身魚でおいしいんですよ。

上柳:「ウツボ」も食べられるそうですね。

梛木さん:ウツボは和歌山県とか、実際に食べられている地域がありますね。

上柳:こういった魚を漁師さんが釣ってしまうと、捨てているそうですが、その捨てる量がものすごいらしいですね。

梛木さん:はい、もの凄いです。もちろん港によって違いますけど、大体5割~6割は、消費者のみなさんが名前を知らない魚なんです。そうすると、名前を知らないから売れない、売れないから根が下がる。箱代や氷代で赤字になってしまうから、捨てられてしまうんです。

上柳:現状、3割は廃棄されているということで。2022年の日本で、養殖を除く漁獲量、つまり漁師さんが取ったお魚ですが、およそ300万トンで、3割が捨てられているということは、100万トンの魚は捨てられているということですね。だけど実はこの捨てられている魚はちゃんと調理をすれば食べられますよ、ということを本の中で書かれていましたね。

漁師さんが魚を一生懸命取ってくださるんですが、食卓に上がることなく、魚屋さんに行くこともなく、また豊洲市場に行くこともなく、その場で捨てられていると。いろんな理由があると思うんですが、梛木さんはどのようにお考えですか?

梛木さん:まずは、見た目の悪さですよね。

上柳:深海魚系とか、目玉がやたらと大きいとかですかね。例えば「オオメハタ」は目玉がバーンと出ていて流通しにくいそうですが、食べるとアカムツ(ノドグロ)と似ていておいしいそうですね。

梛木さん:見た目のほかにも、ヒレに毒を持っているとか。身に毒はないんですけどね。

「未利用魚」を知ったきっかけ

上柳:梛木さんは「未利用魚」をどこで知ったんですか?

梛木さん:僕の母方の家系がみんな漁師で、だから小さい時から、おじいちゃんの船に乗って釣りに行ったりしていたんです。釣れた魚を市場に卸すんですけど、「これは卸す」「これは卸さない」っていうのがあって、小さい時から『なんでこれは卸さないのかな?』と思っていたんです。

市場に卸さなかった魚は家に持って帰って、みんなで食べていたんですが、とてもおいしかったんですよ。

上柳:そういう環境がずっとあったんですね。

梛木さん:私は日本料理の師匠から、「おいしい食材はおいしくて当たり前だ」と言っていて、「捨てるようなものをおいしくさせるのが本当の料理人だ」ってよく言われていたので、自分たちの仕事だと思っていました。

また、私は港町で育ちましたし、漁師の数がかなり減っていることをずっと感じていて、実際にここ30年で6割ぐらいの漁師さんが廃業している、という数字も見ると、20年後や30年後には漁師さんがいなくなるだろう、という危機感を感じています。やっぱり食材が無いと、私たち料理人の仕事は成り立たないので。

上柳:そうですよね、漁師さんがいいお仕事をしてくださるからこそ、料理人は腕を振る舞えますもんね。1988年から2018年の30年間で、漁業に携わる方の人数は半分以下となったそうですね。

梛木さん:そうなんです。

上柳:たしかに、若い方の姿を見かけないですよね。未利用魚とか漁師さんとか、いろんなものを守りたいという気持ちがあって、今の活動に繋がっているのですね。

高級魚「ノドグロ」も昔は捨てられていた

上柳:捨てられた魚がある一方、今すごい重宝されている魚があるそうですね。

梛木さん:結構あります。代表的なものでいうと、アカムツ(ノドグロ)ですね。

上柳:ノドグロ、昔は捨てられていたんですね!

梛木さん:今はとても人気ですが、昔は「脂臭い」と言われて捨てられていたんですよ。

上柳:ええっ!

梛木さん:でも、芸能人や有名人の方が「この魚、うまい!」っていろんなところで言って、そこから一気に大出世しました。だから、食べたらおいしい魚って、いっぱいあるんです。

上柳:見た目が見慣れていない、名前を知られていないだけで、第二のノドグロはたくさんいるんですね。

梛木さん:そうです。今ではノドグロは値段も高いですよね。

上柳:あと、東京湾でやたらと釣れている「タチウオ」。これも昔はあんまり食べなかったですが、おいしいですよね!

梛木さん:タチウオはお刺身でもおいしいですよね。

上柳:日本人が珍重する魚って、タイ、マグロ、サンマ、カツオ、サバとかですが、それ以外の魚をあまりにも知らない、知識が無いなって思いました。

未利用魚を生かす

上柳:知らない魚、捨てられている魚「未利用魚」にスポットを当て、梛木さんはいろいろと工夫をされたそうですね。

梛木さん:でも1番は、本当にきれいごとじゃなく、漁師が儲かるようにしなくてはいけないと思っていたんです。漁師のお父さんが息子さんに「半分以上捨てるような、こんなバカみたいな仕事を自分の息子にはさせたくない。東京にいろ。帰ってくるな」と言っている状況なんです。だから、その捨てる魚をちゃんとしたお金で僕が仕入れて、儲けさせようと。

上柳:その試みは素晴らしいのですが、捨てる魚を買ったことで、梛木さんはえらいことになったそうで……。

梛木さん:えらいことになりました(笑)

上柳:普通、捨てる魚は1キロ10円とか20円のところ、梛木さんは1キロ350円で買ったそうですね。

梛木さん:1日に1トンとか2トンもの未利用魚が届くようになって、家賃を払って冷凍庫を借りました。

上柳:燃えたぎる気持ちが、本当に燃え盛る赤字の炎になってしまったと……。

梛木さん:そのときは後悔しかなかったです(笑)。魚を開きにしたりして商品を作ったんですけど、売れないんですよ。なぜかというと、もうブランドが出来上がっていて、土俵にすら乗りませんでした。

そこで『なにか変わったことをしなきゃ』と思って見つけたのが「灰干し」です。

上柳:著書の『捨てられる魚たち ―「未利用魚」から生まれた奇跡の灰干し弁当ものがたり―』とタイトルにありますよね。

梛木さん:「灰干し」には鹿児島の桜島の火山灰を使います。簡単に言いますと、下に火山灰を敷いて、その上に水と空気を通す特殊フィルムを敷いて、その上に魚を並べ、またフィルムをして、その上に火山灰を載せて、火山灰と火山灰でサンドイッチにして魚を寝かせるんです。

上柳:日に干す日干しと、この灰干し、味は違うのですか?

梛木さん:普通に干した魚は表面が黄色くなるんですが、あれは皮膚が酸化してる状態なんです。ですが、灰干しは空気に触れないので、ナマに近い状態で干し物ができます。だから臭みが少なくて食べやすいんですよ。

――未利用魚の中には、食べたらおいしい魚がたくさんあるのに、知名度がないだけで廃棄されることも多いという。旅行へ行った時は、その地域でしか食べられない「地魚」を食べてみたり、普段の買い物でもいつもと違う魚を選んでみたりして、新しいものを食べる楽しさを体験してみてはいかがだろうか。

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