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追悼・中尾彬さん 映画出演にも“ねじねじ” 生涯貫いたダンディズム

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年5月23日 11時55分

追悼・中尾彬さん 映画出演にも“ねじねじ” 生涯貫いたダンディズム

【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1183回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

2024年5月22日、俳優の中尾彬さんが5月16日に死去していたことが明らかになりました。享年81歳。妻の池波志乃さんが発表したコメントによると、体調を考慮しながらも最近までお仕事してらっしゃったとのこと。あまりにも突然の出来事に、私もただただ驚くばかりです。

そこで今回は、中尾彬さんをクローズアップ。映画出演作とともに、中尾さんの俳優としての魅力を深掘りします。

中尾彬さん  写真提供:古舘プロジェクト

中尾彬さん  写真提供:古舘プロジェクト

映画、ドラマ、バラエティー番組で活躍 愛妻家の個性派俳優

1961年、日活第5期ニューフェイスに合格し、俳優の道を歩き始めた中尾彬さん。テレビドラマ「暴れん坊将軍」では、徳川宗春役が当たり役に。この役はシリーズを通じて西岡徳馬さん、成田三樹夫さんと3人の俳優さんが演じており、中尾さんはその初代にあたります。

映画では『極道の妻たち』シリーズ、『ゴジラ』シリーズ、そして『ミンボーの女』など、数々の話題作に出演。熱血司令官にコワモテのヤクザ、気立ての良い親分など、それぞれのキャラクターを変幻自在に演じ分け、作品の魅力を一層引き立たせる活躍をみせました。

『龍三と七人の子分たち』より  (C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

『龍三と七人の子分たち』より  (C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

そして中尾彬さんと言って忘れてはならないのが、北野武監督作品。『アキレスと亀』(2018年)『アウトレイジ ビヨンド』(2019年)、そして『龍三と七人の子分たち』(2015年)と、3作品に出演。

私が特に印象に残っているのは『龍三と七人の子分たち』です。オレオレ詐欺の被害に遭って憤慨した元ヤクザの組長が、かつての子分たちを引き連れて大暴れ。「若い者に勝手な真似はさせられねぇ」とばかりにジジイたちが世直しに立ち上がる、痛快コメディです。

そんな本作で中尾さんが演じたのは、はばかりのモキチ。蝶ネクタイに派手なスーツ。ジェントルマンに見せかけながら、小銭をせびる寸借詐欺で生計を立てているというジジイ、もとい、元ヤクザのおじいちゃん。

全編にわたってブラックユーモアにあふれた本作ですが、その中でも中尾さん演じるモキチに関わるシーンは、どれも強烈。「あの渋くてダンディな中尾さんが!?」と驚愕しながらも、抱腹絶倒したものです。

『牙狼 〜RED REQUIEM〜』初日舞台挨拶より  右から中尾彬さん、小西遼生さん、松山メアリさん、雨宮慶太監督、司会・八雲ふみね

『牙狼 〜RED REQUIEM〜』初日舞台挨拶より  右から中尾彬さん、小西遼生さん、松山メアリさん、雨宮慶太監督、司会・八雲ふみね

映画・ドラマだけでなく、バラエティー番組でも個性を発揮していた中尾彬さんのトレードマークと言えば、そう、“ねじねじ”。スカーフを首元からねじりながら巻く、独自のファッションスタイルです。
映画の舞台挨拶やトークイベントでご一緒させていただく時も、必ず“ねじねじ”を着用していた中尾さん。その日のお衣装に合わせられた“ねじねじ”は、どれもカラフルでセンスが良かったことを思い出されます。

「中尾彬=ねじねじ」というイメージがあまりにも強すぎるからでしょうか。時には、映画やドラマの中で身につけることも。なんと映画『牙狼 〜RED REQUIEM〜』では、自前の“ねじねじ”をつけて出演してらっしゃいます。

初日舞台挨拶時の裏話によると、衣装部でも数タイプ用意したのですが、丈が短いため、結局ご自身の“ねじねじ”を衣装に使ったとのこと。やはり、“ねじねじ”の着こなしについては、譲れないものをお持ちだったのでしょうね。

ちなみに大河ドラマ「龍馬伝」に出演した時も、“ねじねじ”を意識した襟巻き姿で出演。放送当時、「時代劇風ねじねじ?」と視聴者の間で話題になったものでした。

役作りしかりファッションしかり、唯一無二の存在感を放つ俳優さんだったなぁと、改めて感じさせられるエピソードです。

太くて渋い声に鋭い眼光。そして、人懐っこくて優しい笑顔。

まだまだご活躍を拝見したかったです。

中尾彬さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

『犬とあなたの物語 いぬのえいが』より

『犬とあなたの物語 いぬのえいが』より

中尾彬さん出演作 いまこそ観てほしい!『犬とあなたの物語 いぬのえいが』『翔んで埼玉』

犬と人が織りなすハートウォーミングなストーリーで紡がれたオムニバス映画『犬とあなたの物語 いぬのえいが』。その中の一編「あきら!」に、本人役で主演した中尾彬さん。

オープンカフェで優雅なコーヒータイムを過ごす中尾さんの目の前にやって来たのは、1匹のフレンチブルドッグ。なんと、そのワンちゃんの名前は「あきら」。飼い主の女性が「あきら」の振る舞いを注意するたびに居住まいを正す、中尾「あきら」さん。その絶妙な間合いに、笑いがとまらない!

ちなみに中尾さんは、本作に限らず、ご本人役で映画に出演される機会が度々ありました。それだけ、ご本人のキャラクターが確立されていたということなのでしょう。そんなことに改めて気づかされます。

『翔んで埼玉』より

『翔んで埼玉』より

魔夜峰央が埼玉県を自虐的に描いたギャグ漫画を実写映画化。大ヒットするだけでなく、空前の埼玉ブームを巻き起こした『翔んで埼玉』。

中尾彬さんが演じたのは、二階堂ふみさん扮する百美の父であり、東京都知事の壇ノ浦建造。率先して埼玉を侮辱する腹黒さと、ちょっぴり間の抜けたユーモラスさを持ち合わせたキャラクターを、硬軟巧みに体現。

ベテラン俳優の貫禄が感じられる好演をみせています。金ピカでド派手な羽織はかまを、サラリと着こなしてらっしゃるのも流石です!

<作品情報>

『龍三と七人の子分たち』より  (C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

『龍三と七人の子分たち』より  (C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

龍三と七人の子分たち(2015年公開)
DVD&Blu-rayリリース

出演:
藤竜也 近藤正臣
中尾彬 品川徹 樋浦勉 伊藤幸純 吉澤健 小野寺昭
安田顕 矢島健一 下條アトム 勝村政信 萬田久子 ビートたけし

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

——

 

牙狼 〜RED REQUIEM〜 (2010年公開)
監督・原作:雨宮慶太
脚本:江良至 雨宮慶太
エンディングテーマ:JAM Project
出演:小西遼生 松山メアリ 斎藤洋介 倉貫匡弘 影山ヒロノブ 津田寛治 笠原紳司 江口ヒロミ 原紗央莉 中尾彬
配給:東北新社 ゴー・シネマ

——

『犬とあなたの物語 いぬのえいが』  (C) 2010「犬とあなたの物語」製作委員会

『犬とあなたの物語 いぬのえいが』  (C) 2010「犬とあなたの物語」製作委員会

犬とあなたの物語 いぬのえいが(2011年公開)
Blu-ray&DVD発売中
発売・販売元:TCエンタテインメント

出演:大森南朋 松嶋菜々子 ・ 堀内敬子 篠田麻里子 生瀬勝久 小倉智昭 ・ 中尾彬 内野聖陽 高畑淳子 芦田愛菜 北乃きい
坂井真紀 ・ 矢柴俊博 林 遼威 斎藤歩 森下能幸 鈴木ちなみ ちはる ・ 戸田菜穂 鶴見辰吾
近藤春菜(ハリセンボン) 箕輪はるか(ハリセンボン) 藤原一裕(ライセンス) 藤本敏史(FUJIWARA) 原西孝幸(FUJIWARA) 大林健二(モンスターエンジン)

プロデューサー:一瀬隆重
監督:中西尚人 川西純 水落豊 江藤尚志 石井聡一 長崎俊一
脚本:太田愛 山田慶太 川西純
主題歌:「願い」JUJU(ソニー・ニュージックアソシエイテッドレコーズ)
(C) 2010「犬とあなたの物語」製作委員会

——

翔んで埼玉(2019年公開)
Blu-ray&DVD 発売中
Blu-ray:5,280円(税込)DVD:4,180円(税込)
発売元:フジテレビジョン
販売元:東映ビデオ

監督:武内英樹
原作:魔夜峰央「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fAKE
主題歌:はなわ「埼玉県のうた」(ビクターエンタテインメント)
出演:二階堂ふみ GACKT 伊勢谷友介 ブラザートム 麻生久美子 島崎遥香 成田凌(友情出演)中尾彬 間宮祥太朗 加藤諒 益若つばさ 武田久美子 麿赤兒 竹中直人 京本政樹
(C)2019映画「翔んで埼玉」製作委員会

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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