ウナギの旬はいつ? 天然と養殖の違いや、鹿児島県がウナギ養殖生産量日本一となった理由とは
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年7月29日 12時0分
うなぎ愛好家で『読めばもっとおいしくなる うなぎ大全』(講談社)の著者・高城久さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。天然ウナギと養殖ウナギの旬の違いや、鹿児島県が養殖生産量日本一の理由、養鰻場の最新技術などについて紹介した。
高城さんの本業は柔道整復師だが、うなぎ好きが高じて2004年からうなぎ屋さん応援サイト「うなぎ大好きドットコム」を開設。さらにYou Tube『うなぎ専門チャンネル』はチャンネル登録者数1.77万人を誇り、テレビ番組などの各メディアでもおいしくウナギを食べるためのさまざまな情報を発信している。
天然ウナギはたったの1%
上柳:「ウナギは秋から冬にかけて脂がのっているからおいしい」という話も聞きますが、でもこれは天然ウナギのことなのでしょうか?
高城:そうですね、他の魚も産卵前がおいしいように、天然のウナギも産卵前の秋から冬がやっぱりおいしいです。ですが、養殖ウナギの場合は「土用の丑の日」を目指し、養鰻家(ようまんか)の方が柔らかくておいしいウナギを育てていらっしゃいます。
上柳:なるほど、日本人がウナギを大量に消費する日を目がけて育てているのですね。天然のウナギはほとんど見かけませんが、あまり流通していないのでしょうか?
高城:はい、天然のウナギは1%ぐらいしかないと言われています。
上柳:たったの1%なんですね。つまり99%が養殖ウナギということですが、中でも鹿児島産の養殖ウナギが多いらしいですね。
鹿児島県がウナギ養殖生産量日本一の理由
高城:生産量日本一は鹿児島ですからね。国内で流通する養殖ウナギの40%が鹿児島県産です。
上柳:鹿児島県のほかにも、愛知、宮崎、浜名湖がある静岡などが有名ですが、養殖に適した環境なのですか?
高城:そうですね、温暖な気候で、水が大事です。鹿児島県の養鰻家の方に取材したことがあるのですが、「ウナギ作りは水作りです」という話をしていました。皆さんご存じかと思いますが、鹿児島は霧島山脈があっておいしい水が大量に湧き出すので、それを使って養殖されているそうです。
上柳:鹿児島の養殖では、とても画期的な技術を開発されたらしいですね。
高城:はい、ウナギは個体差があって、食欲のいいウナギ、ちょっとしかエサを食べないウナギがいるのです。ですから、だいたい1か月に1回ぐらい「池替え」という、成長に合わせて池を変える作業をするのですが、以前はウナギを網ですくって選別していたそうです。
上柳:ウナギも大量にいるでしょうから、大変な重労働ですね。
高城:はい。ですが、鹿児島の楠田さんという方が、ウナギを吸い上げるポンプを作り、それを他の養鰻場にも無償で教えてあげたんです。鹿児島で養鰻が広がったのは、これも1つの要因だと言われています。
上柳:池から池に移すとき、ウナギが傷つかないようにポンプで吸い上げ、ポンプの中をウナギがニョロニョロと移動して、次の池の方に行くわけですね。
9割オスだった養殖ウナギが「メス」になる新技術
上柳:養殖ウナギでは、ほとんどがオスだそうですね。
高城:養殖ウナギの9割がオスなんです。
上柳:でも、味はメスの方がおいしいのですよね?
高城:そうです、メスは皮も身も柔らかくて脂のりも良く、しかも大きく育ちます。ですが私たちが食べる時は、職人さんの技術によって、オスかメスかは分からないです。
上柳:メスを増やすために、技術的にいろいろと改革された方がいらっしゃるそうですね。
高城:ご存じのように、二ホンウナギは絶滅危惧種でだんだん減っています。ウナギに卵を産ませて稚魚から育てるためにも、メスのウナギが必要です。
上柳:そうですよね。
高城:メスのウナギを作る技術はいろいろな所で研究されているのですが、私が取材させていただいた愛知県の水産試験場では、大豆イソフラボンをエサに混ぜてメスウナギを作ることに成功しました。大豆イソフラボンと女性ホルモンは、成分が似ているのだそうです。豚のホルモン剤でもできたそうですが、それだと食用になりませんからね。
上柳:さまざまな工夫や苦労があったと思うと、ウナギを食べる際にありがたい気持ちがますます大きくなりますね。
昔は東京でたくさんの天然ウナギがとれた
上柳:なぜ、土用の丑の日にウナギを食べるのでしょうか?
高城:諸説ありますが、おそらく一番有名なのが平賀源内さんのお話ですね。昔、夏はウナギが売れなくて困っていたところ、平賀源内さんの助言で「本日、土用の丑の日はウナギの日」という張り紙をして集客に成功したのがきっかけだと言われています。このウナギ屋さんのアピールは、日本で最初のキャッチコピーとも言われています。
上柳:その当時に食べられていたのは天然のウナギだと思いますが、昔、江戸の海には天然のウナギがいっぱいいたみたいですね。
高城:そうなんです。東京の街は今でも堀や水路がいっぱいありますが、あれは徳川家康の命令で造成され、江戸は水運の街となって、ウナギの住みやすい水辺がいっぱいできたと言われています。
上柳:ウナギは回遊魚ですから、江戸の海にやって来たときに『なんか居心地のいい水辺がたくさんあるな』ということで江戸湾にたくさんの天然ウナギが住みついたのかもしれませんね。ニホンウナギはわざわざ遠いマリアナ諸島で産卵すると聞きますが、どうしてそんな大変なことをするのでしょう?
高城:それが未だに謎なんですよ。
上柳:ウナギが自分で泳ぐというよりは、ただただ海流に乗るから、流されて流されてまた日本に戻ってくるのでしょうか?
高城:そうだと思います。ですから、暖流の黒潮とか対馬海流に乗って日本や中国、韓国に行くのだと思います。
上柳:だから、どこの国の海辺に着くかわからないわけですね。
高城:海流に運ばれて沿岸域にたどり着くと、ウナギは川を遡上(そじょう)しますが今は人工構造物、要するに加工石やダムとか、そういうものが壁となってなかなか遡上できなくなっています。これは天然ウナギが減っている一因と考えられています。
――養殖技術の進歩や調理する職人の技術によって、私たちは新鮮でおいしいウナギをいつでも楽しめているが、天然ウナギは全体のわずか1%しか存在しておらず、過剰な漁獲や環境の変化が主な原因と言われている。素晴らしくおいしい食文化を次世代に伝えていくためにも、まずはウナギが非常に貴重な資源であると再認識することが必要かもしれない。
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