ヨーロッパ企画の“新たな可能性”を詰め込んだ再演『来てけつかるべき新世界』上田誠、藤谷理子、岡田義徳インタビュー
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年8月29日 11時30分
左から上田誠、藤谷理子、岡田義徳
2016年に初演され、上田誠が第61回岸田國士戯曲賞を受賞した“SF人情喜劇”『来てけつかるべき新世界』の再演が決定。今回は新たに岡田義徳、板尾創路といった実力派俳優陣を加えて、2024年8月31日に滋賀・栗東芸術文化会館さきら 中ホールにて幕を開ける。
この度、ヨーロッパ企画の舞台に初参加となる岡田、主人公・マナツ役の藤谷理子、そして脚本・演出を手掛ける上田誠にインタビュー。再演にかける意気込みなどを語ってもらった。
■ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
――岡田さんは、ヨーロッパ企画の舞台に初出演。オファーを受けての心境を聞かせてください。
岡田:舞台でお話を頂いたのは初めてなのですが、30代の頃に出演したドラマ『ユキポンのお仕事』の脚本を上田さんが書かれていて、それからのお付き合いになります。実は、また上田さんとご一緒させてもらいたいと思っていたんですよ。『ユキポンのお仕事』の脚本が本当に面白かったのと、昨年出演したアドリブドラマ『横道ドラゴン』(※上田が脚本で参加)でもお話させていただいて。その時に、次は舞台で! と思っていたので、呼んでもらえて本当に光栄です。
――そして藤谷さんは、前回の『来てけつかるべき新世界』がヨーロッパ企画の本公演に初めて出演した作品なんですよね。
藤谷:そうなんです。初めての大きな舞台、そしてツアーで各地を回るというのも初めてだったので、私にとってかけがえのない大切な作品でした。それが再演する、さらにまた同じ役を演じられるなんて! 本当に嬉しいです。以前よりも成長した姿を見せなければと思いました。
――上田さんは、なぜ8年経った今、再演しようと?
上田:基本的には新作をやりたいのですが、再演してでもちゃんと育てた方が良い作品もあるんです。それがこの『来てけつかるべき新世界』でした。もちろん初演にしかない良さ、トキメキはありつつも、今作は重ねれば重ねるほど熟成する良さがある作品だと思っていて。実は、初演を勢いで作ってしまったこともあって、かなり初期から「再演しよう」という気持ちがありました。それが今、落ち着いて取り組めるタイミングが来たので、キャストの入れ替えなんかもして、ちょっとずつ改良しながらより良い形にしていこうとしているところです。
――ドローンやAI、メタバースなど、2016年に比べると今の方がリアルに感じられる内容かもしれませんね。
上田:確かに。初演の時はファンタジーとして見られたものが、今はリアリティを持ったものとして受け止められやすいかもしれませんね。「本当に野良ロボットが電気を盗みに来るかも!?」など、身近に感じられる未来の物語になるかもしれません。
――岡田さんは初演の方をご覧になったとのことですが、物語の世界観に関してどう思われましたか?
岡田:物語よりも、エチュードで演じる役柄が変わっていくと聞いて衝撃を受けました。エチュードに苦手意識があるので……というか、あまり経験がないんです。そこを楽しめるようにならなければストーリーに集中できないと思うし、僕自身もエチュードを通じて新しい可能性を見つけていけたらと思っています。
上田:『横道ドラゴン』でのアドリブを見ると、苦手には感じなかったですけどね?
岡田:本当ですか? あの時は、劇団ひとりさんとの掛け合いが楽しすぎたんですよね(笑)。あの時の楽しさを、今回のエチュードでも感じられるようにしたいです。
――劇中ではコテコテの関西弁を使うことになりますが、そちらの不安などはないですか?
岡田:先日まで出演していた作品で演じていた役が関西弁だったのと、そこで今作の演出助手を務めている山田翠さんとご一緒していて「次はヨーロッパ企画でやるんですからね!」と厳しい指導を受けていたので、方言に関しては不安はないです。不安なのは、エチュードだけ(笑)
藤谷:普段使っていない言葉でエチュードしなきゃいけないのはかなり大変ですよね。
岡田:でも、ヨーロッパ企画は本番でのアドリブがほとんどないと聞きました。私が出演している『THE3名様』シリーズのドラマもアドリブをほとんどなくして、いかに台本を面白く言えるかということにずっとチャレンジし続けてきたんです。きっとそれと共通する部分があるだろうなと感じていて、不安ではありますが、楽しみでもあるんですよね。
――岡田さんは他作品などではアドリブを入れたりするのですか?
岡田:20代の頃はそうでした。でも歳を重ねるにつれて、脚本通りにやることが脚本家への礼儀だと思い始めました。脚本家が面白いと思ったものを詰め込んでいるんだから、それをしっかり表現できてこその役者だな、と。若い頃は「(アドリブを)かましてやろう」みたいな気持ちがありましたが、今では脚本にあるものを手堅く演じることが大事だと思っています。
藤谷:わかります。ヨーロッパ企画のみんなも楽屋でずっと台本を読んでいます。
上田:今さら発声の大事さを語ってたりね(笑)。
藤谷:発声のレッスンに通い始めた方もいますよ。
岡田:今ですか!?
上田:そう、20年前にちゃんとやっておいたら良かったのに(笑)
岡田:面白いな~! 稽古が始まったら、みなさんとこうやって芝居の話がたくさんしたいですね。
――藤谷さんは2021年からヨーロッパ企画に正式参加。先輩方に熱い演技論を語られたりなどは?
藤谷:劇団では一番下っ端なので先輩にアドバイスをもらうことはありますが、「あそこはダメだよ!」「ここはこうするんだ!」など熱く語られることはありません(笑)。そんな劇団ではないですが、先輩方からお芝居の話を聞けるのは楽しいです。
上田:僕は藤谷さんと演劇の話をするのがすごく好きです。ヨーロッパ企画は“演劇が好き”というよりかは、“何かを作ることが好き”な人たちが集まってできた劇団なんですよね。良くも悪くも劇団らしくないところから始まっていて、劇団として成長するにつれて藤谷さんのような演劇が好きな人がどんどん増えてきた。そのおかげで新たに演劇らしい演出が加わったので、もっと色んな話がしたいです。モノローグを入れたり、客席に向かってセリフを言ったりというのは、藤谷さんが入ってからやろうと思ったことですから。
藤谷:そうなんですか? 嬉しい。もっとたくさんお話できるように頑張ります(笑)。
――岡田さん、板尾さんをキャスティングしたことも、新たな可能性を探ってのことだったのですか?
上田:そうです。せっかくの再演なのだから、今作ならではのものを加えたいなと。岡田さんとはまたご一緒してみたくて、同世代なので見てきたもの・体験したものが似ているし、ヨーロッパ企画の刺激にもなりそうで、また関西弁の壁くらい難なく突破してくれそうという非情に厚かましい気持ちでお願いしました。
板尾さんは、これまでヨーロッパ企画の劇に出演するイメージがなかったのですが、『来てけつかるべき新世界』ならあり得るかもと思ったんです。最初は、初演で福田転球さんが演じたクリーニング屋さんをお願いしようと思っていたのですが、板尾さんから「マナツのお父さんを自分がやる、という配役もあるかも……」とアドバイスいただき、たしかにそれはいいなと思い、思い切って配役を変えることにしました。エチュードで配役を変えることもありますが、そういった申し出があると「じゃあこの人にはこういう役を」と新たな可能性も生まれるのでありがたかったですね。
――ありがとうございます。最後に、公演に向けての意気込みをお願いします。
岡田:再演ということで、初演より絶対に面白いものをお届けしなければ、というのが一番です。あまり経験したことのないエチュードですが、それを通して自分の武器が見つかればと思っています。皆さんの力をお借りして、自分の新たな面白さを発見できたら。
藤谷:岡田さんの言った通り、初演より絶対に面白くしたいし、しなきゃダメだと思っています。あの時の自分にしか出せなかったものもあるけれど、今の自分にしかできないものも絶対にあるはずなので。それを、この新しい座組で見つけていけたら良いなと思っています。
上田:僕にとって、とても特別な作品です。初演時も頑張って書いたのですが、それよりも面白い作品に仕上げなきゃいけない使命感を感じています。この作品を僕の代表作にするつもりですし、こんな濃くて面白そうな役者が集まったのだから、外すわけにはいかないというプレッシャーもあります。ヨーロッパ企画の劇を観たことがない方も、これは間違いなく面白い作品になりますので、是非とも足を運んでいただけたら嬉しいです。
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