秩父に佇む古民家カフェ、自然食と植物の魅力を――「お皿の上にお花畑を描こう!」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年10月10日 5時0分
だんだん秋めいてきて、山登りもいい季節になりました。日帰りならば、秩父あたりもいいですね。秩父に行った際は素敵な古民家カフェにも寄ってみてはいかがでしょうか?
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
秩父の代表的な山の一つに、武甲山があります。標高1,304メートル。日本武尊が、自らの甲を奉納したことから、その名が付いたと言われています。三角形の威厳ある姿をしていますが、良質な石灰岩が採れるため、セメントの原料として、北側の斜面では石灰岩の採掘が進み、年を追うごとに山の形が変わっています。
西武秩父線・横瀬駅で下車し、武甲山に向かって歩いていくとのどかな農村風景が広がります。しばらくすると道の脇に、ぽつんと置かれた手描きの小さな看板が目に入ります。
「Cafe なないろごはん 1分」
ちょっと寄ってみようかと、小道に入っていくと、古民家カフェ「なないろごはん」が見えてきます。ここでカフェとギャラリーを開いているのが、「ヨシさん」と呼ばれる今里佳子さんです。長崎県諫早市生まれのヨシさんは、53歳。
「ムツゴロウが棲む諫早湾が知られていますが、私が子供の頃は、父に連れられて、野山を駆け回って遊んでいましたね」
そんなヨシさんが20代のとき、原因不明の湿疹に悩まされ、体中の皮膚が荒れて、夜中も眠れないほどの痒みだったそうです。
ある日、友人の勧めで、玄米ごはんを中心に、季節の野菜や海藻を使った味噌汁、ひじきの煮物やきんぴらなどのおかず……、そんな自然食に切り替えると、少しずつ、体に変化が見られるようになり、5年ほどで湿疹がすっかり消えてしまいました。そのとき、ヨシさんは気付きます。
「そうか! 食べることで人はできているんだ」と。
自然食のおかけで、生まれ変わったような気持ちになったヨシさんは、自然食を極めてみたいと、オーストラリア、フランス、ニュージーランド、カンボジア、インドなど、現地の農家に滞在して、その国の伝統料理を学びました。そして「植物料理研究家」と名乗り、都内で自然食料理を提供するレストランと、料理サロンを始めました。「植物料理研究家」とは、ヨシさんが作った言葉です。
「季節の野菜や野草、お米に麦に豆、海藻、スパイスにハーブ、木の実やフルーツ、そして、ほとんどの調味料も植物からできています。お肉、魚介類、乳製品、卵以外は、毎日飲んでいるお茶やコーヒー、お酒まで、みんな、みんな、植物からできています。
“野菜嫌い”という人も、しっかり植物のお世話になっているんですよ。そんな植物の魅力を広めたくて、『植物料理研究家』と名乗っています」
自然が大好きで、植物に囲まれた環境で、自然食を提供したいと考えたヨシさんは、2017年、都内から秩父市横瀬町に移り住みました。築100年を超える藁葺き屋根の古民家を、パートナーの「丸さん」こと、アクセサリー作家の丸山紡生さんと二人で、コツコツと修復し、3年後の2020年に、古民家カフェ『なないろごはん』がオープンしました。
のどかな場所で、のんびりお店をやろうと、営業日は、土・日、月の3日間でしたが、実際に田舎暮らしを始めてみると大変なことばかり……。
「薪割り、野菜づくり、料理の仕込みなどなど、田舎暮らしがこんなに忙しいとは思いませんでした。お休みの日に、寝込んでしまうほど、くたくたに疲れ果てるので、いまは不定期で営業しています」
そんな日常の中、ヨシさんの楽しみは、大好きな植物のスケッチです。季節の野菜、美味しいごはん、お店の日々の出来事、山里の田舎暮らし……、そんなイラストをポストカードにして、秩父市内の知人のお店に置いてもらったところ、たまたま編集者の目に留まり、この秋、芸術新聞社から『なないろごはん』という本が発売されました。
オールカラーで、まるで絵本のような料理本です。ヨシさんの描く絵は、どのページを開いても、野菜が生き生きしていて、美味しそうな料理の香りが漂ってきそうです。植物料理を研究して20年、秘伝のレシビも分かりやすく公開しています。
ヨシさんは『なないろごはん』の中で、こんなことを綴っています。
「蝶や鳥、昆虫、魚、そして空の色。自然界はとってもカラフルで饒舌。植物もまた、たくさんの色で私たちの目を楽しませてくれています。色とりどりの植物料理は、それだけでもう“食べるカラーセラピー”です。フードはムード。カラーはエナジー。お皿の上にお花畑を描こう!」
心と体をリフレッシュしに、この秋、秩父へ出かけてみてはいかがでしょうか。
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