ファイナルコンサートから16年、祖父・原信夫の音楽を再び
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年10月31日 5時0分
(C)株式会社HARA Music Japan
昭和42年、グループサウンズ全盛期、ジャッキー吉川とブルーコメッツを従え当時30歳だった美空ひばりさんが、ミニスカートを履き、ゴーゴーダンスを踊りながら歌った、大ヒット曲「真赤な太陽」。この軽快なメロディーを作曲したのは、ビッグバンド「シャープス&フラッツ」のリーダー、原信夫さん。「ああ、懐かしい!」と感じる昭和世代の方も多いのではないでしょうか。
「原信夫とシャープス&フラッツ」の華麗なサウンドを再び蘇らせようと奔走する人がいらっしゃいます。
昭和元年生まれの原信夫さんは、戦時中、海軍軍楽隊に入隊し、終戦後は、進駐軍相手にクラブで、テナーサックスを演奏していました。
昭和26年に、「シャープス&フラッツ」を結成すると、時代は、華やかな歌謡界の黄金期を迎えます。美空ひばりさんや江利チエミさんのコンサートでバックバンドを務め、紅白歌合戦では紅組の演奏を担当し、お茶の間でもお馴染みの存在でした。
戦後日本のジャズ界・歌謡界を支え続けた原信夫さんですが、「輝いているうちに第一線を退きたい」と、81歳のとき、引退を表明。2010年のコンサートを最後に、音楽活動に終止符を打ちました。
32歳になる、お孫さんの原ゆうま(YUMA HARA)さんは、「シャープス&フラッツ」のステージを、いまも鮮明に覚えています。
「僕が幼稚園のころでしたね。ステージの袖から花束を持って、祖父に渡した思い出があります。祖父のステージは、とても華やかで重厚なサウンドが、いまも耳の奥に残っています」
現在、ギタリストとして活躍するゆうまさんですが、2年前から「原信夫とシャープス&フラッツ」の再結成に向けて活動を始めています。17人編成のビッグバンドでのコンサートを開くまでの道のりは、想像もしなかった苦労が待ち受けていました。
原ゆうま(YUMA HARA)さんは、1992年、横浜の出身です。ギタリストである父の影響で、小学4年生からエレキギターを手にし、中学時代はジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンに影響を受けました。
父親の原とも也さんも若い頃に「シャープス&フラッツ」のメンバーでしたがその後退団し、少人数編成のジャズバンドで活動を続けました。しかし、ジャズで家族を養うのは容易ではなく、父の苦労を見ていたゆうまさんは、ミュージシャンへの憧れはなかったと言います。
それでも「好きな音楽を続けてほしい」と祖父・原信夫さんからの支援もあり、東京音楽大学付属高校に進学し、クラッシクギターを専攻。東京音楽大学ではジャズやポピュラー音楽を学び、さらにボストンのバークリー音楽大学に留学します。アメリカでは、クラブでの演奏活動を通じて、ギターの腕を磨きます。
帰国すると、様々なアーティストから声がかかり、さだまさしさんや、三代目J SOUL BROTHERS、Little Glee Monsterなどのツアーに同行し、いまでは人気ギタリストとして活躍しています。
「祖父の支援がなかったら、今の僕はなかった」とゆうまさんは言います。
その祖父・原信夫さんは、3年前の2021年に、94歳で亡くなりました。訃報がニュースで報じられると、「作曲の権利」や「映像の使用許可」などの問い合わせが、ゆうまさんの元に寄せられるようになります。
さらに膨大な楽譜を、誰が管理するのか……。すでに事務所は閉じられていたので、引き継ぐ人がいませんでした。
「音楽は文化ですし、戦後のビッグバンドが残した貴重な楽譜を、きちんと残さないといけない……。同じミュージシャンとして見逃せなかったんです」
2年前、ゆうまさんは、株式会社HARA Music Japanを設立。貴重な譜面を、後世に残すためにデータ化しているとき、譜面が汚れていたり、破れていたり、鉛筆の書き込みもあって、
そんな譜面を見ているうちに、「いま使わないと意味がない!」と強く感じるようになり、これがキッカケで、ゆうまさんは、「シャープス&フラッツ」の再結成に向けて動き出します。
ファイナルコンサートから16年が経った今年、11月2日、今週土曜日に、東京・有楽町の「アイマショウ」で、「原信夫とシャープス&フラッツ 復活コンサート」が開催されます。会社を設立したものの、小さな事務所ですから、コンサートの日程、メンバー17人のスケジュール調整、リハーサルスタジオの予約、演奏の曲目を決め、17人分の譜面を用意、チラシ制作、物販の準備、お弁当の手配など、ほぼすべて一人でこなしています。
「このコンサートでは、新しいことをやろうとは考えていません。昭和のスタイルそのままに、17人が同時に繰り出す生のサウンドを、懐かしく感じる方も、まったく知らない若い世代の方にも、聴いてほしいんです。その架け橋に僕がなれたらと思っています」
原ゆうま(YUMA HARA)さんと共に、17人のビッグバンドを乗せた“列車”がいま、出発しようとしています。
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