原発再稼働審査の「合格」と「不合格」の差は科学的なのか? 原子力規制委員会のあり方に専門家が疑問
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年11月16日 9時0分
政策アナリストの石川和男が11月16日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。政府や経済界が推進する原子力発電所活用の重要性や再稼働に向けた審査のあり方について専門家と議論した。
日本経済団体連合会(経団連)は10月11日、今後データセンターの増設などで電力需要が大幅に増加するとの見込みから、政府が進めるエネルギー基本計画の見直しに対し、原発を再生可能エネルギーとともに「最大限活用する」と位置づけるよう求めた。政府は岸田前政権のもと、原子力を最大限活用するとの方針に転換。直近では、東北電力女川原発2号機(宮城県)が事実上再稼働したほか、中国電力島根原発2号機(島根県)も12月上旬に再稼働する予定だ。一方で、福井県にある日本原子力発電の敦賀原発2号機は再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査で“不合格”となり、判断がわかれている。
番組冒頭で石川は「2011年3月の福島第一原発事故で、一国の総理大臣が政治判断で民間企業のプラント(中部電力浜岡原子力発電所)を止めるという前代未聞の“要請”行った」と言及。ゲスト出演した東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授の岡本孝司氏も「命令じゃなくてお願い。それを聞いちゃった電力も電力だが、あれ外国人には絶対理解できない。一国の総理とか大統領がいち会社のプラントを止めるのに“お願い”をするという馬鹿な行動を2011年にやってしまって、ずっと原子力について尾を引いた」と振り返った。
続けて石川は「東日本大震災で津波を受けた地域の原発を止めるならまだわかるが、全国止めちゃった。例えば1979年のアメリカスリーマイル島の原発事故、1986年の旧ソビエト、現在のウクライナチェルノブイリ原発事故は悲惨な事故だったが、両方とも隣の原子炉はその後動いた。日本は全国関係ないとこまで止めて、まったくアメリカや旧ソ連の原発事故対応と違う」と指摘。
岡本氏は「国民に不人気な政策を取りたくないという政治家が多い。本来、国がこうあるべきだと言ったら、国民に嫌われようが前に進まないといけないはず。風向きが変わったのがウクライナ戦争。電気代が一気に上がって初めて気がつく」と語った。
そのうえで、女川や島根など再稼働が進む原発がある一方、敦賀原発2号機のように再稼働に向けた審査で“不合格”となる事例が出ていることについて岡本氏は「(公表されている今回の敦賀2号機の審査書は)本当に、論理的に間違っているというか、あり得ないこといっぱい積み重ねて『その可能性は否定できない』と。様々な可能性を十分否定しているにも関わらず99.9%の残り0.1%『万が一、もしかしてこうだったらダメじゃないの?』という、いいがかりに近いようなことになっている。こういう文章を書いたら絶対大学不合格だなっていう文章だ」と、原子力規制委員会の審査内容を痛烈に批判した。
さらに岡本氏は、今年9月任期満了に伴い退任した規制委員会の委員が新聞社のインタビューに対し「(規制委員会の審査は)事業者から見れば悪魔かもしれないが大した悪魔ではない。既に17基の原発が審査に通り、うち12機が再稼働した。事業者が詳しい調査で断層が動いていないことを証明したが、否定できないとした有識者会合の結論でひるがえった例もある。電力会社から見れば“17勝1敗”これで相手が強すぎると言えるのか」と発言したことに触れ、「勝ち負けでやっていらしたんだったら、とっとと辞めていただかなきゃいけなかった。国民を愚弄している。(今回の敦賀2号機の)審査書も英訳して渡したら、世界中で笑いものになるという内容。IAEA(国際原子力機関)の断層に関するガイドラインからも外れており、科学を一生懸命自分で否定している」と述べた。
石川は「安全はもちろん大事だが、一方的な過剰な安全というのは実はあまり求められていない。安全基準や審査のやり方、判断が過剰かどうかを政治的に判断する仕組みが今の原子力規制にはなくなっている。今後は安全と経済が合理的に両立するシステムに持っていくべく、原子力規制委員会設置法という法律を変えていくべき」と訴えた。
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