苦難を乗り越え4年9カ月かかった“ゴミ拾い”「やらなければいけないことがたくさん見つかりました」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2025年1月23日 5時0分
豊田直之さん
特急「踊り子」号に乗って、伊豆へ足を運ぶ途中、小田原駅を過ぎて車窓にパーッと相模湾が広がると、観光のお客さんが多い日には、車内の雰囲気が一気に華やいで、「見て見て、海!」という歓声が上がります。
この神奈川の「海」に沿って、自ら歩いて「ごみ拾い」をした男性がいらっしゃいます。
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
横浜生まれ、横浜育ちの冒険写真家にして、「NPO法人 海の森・山の森事務局」の理事長も務めている、豊田直之さん、65歳。
小学生の時、「釣り」をきっかけに、海の生き物に興味を持った豊田さんは、当時の東京水産大学に進学し、海に関する様々な仕事を経験されてきました。
豊田さんは、釣りにのめり込むうちに、その魚が海のなかでどんな動きをしているのか、餌を食べさせるとどうなるか、自分の目でもぐって見てみたいと考えて、実行に移します。そのユニークさから、豊田さんには釣り雑誌の連載がたくさん舞い込んできました。さらに大御所の写真家の方に学んで、水中写真の撮影も手掛けるようになります。
そんな豊田さんが、今から20年ほど前、雑誌の取材で訪れたオーストラリアのダイビング関係者から、こんなアドバイスを受けました。
「オレたちの国のまわりの海は、どんどんプラスチックのゴミだらけになっていっている。ミスター・トヨダ、日本もオレたちの国と同じく、周りを全部海に囲まれているだろう? 必ず同じことが起きるから、気を付けてくれよ!」
帰国した豊田さんは、静岡・熱海の沖に浮かぶ初島の海にもぐると、今までに見たことのないような物が、フワフワと近づいてきて驚きました。よく観ると、それは生き物ではなく、スーパーのレジ袋だったのです。
『水中写真を撮る人間として、海の負の面から目を背けてはいけない』
そう思った豊田さんは、2012年に「NPO法人 海の森・山の森事務局」を立ち上げて、本格的に海のプラスチックごみの問題に取り組んできました。しかし、2020年代に入って、コロナ禍で思うような活動が出来なくなります。三密回避、県をまたぐ移動は自粛、活動を休む団体も増えて、豊田さんは考えました。
「今、出来ることを細々とやっていきたい。神奈川県内の屋外で密にならずに出来ること。
そうだ、神奈川の海を少しずつ歩きながら、ごみ拾いするのはどうだろうか?」
豊田さんは、意見が一致した、神奈川在住のNPO法人の理事を務めていた60代の男性2人と一緒に、「3匹のおっさん プラごみバスターズ」を結成しました。
2020年4月、湯河原町の神奈川・静岡県境を流れる千歳川の河口から60代のおっさん・3人によるごみ拾いは始まりました。ただ、豊田さんたちは始めてみて、その道のりの長さに改めて驚きます。ゴールの都県境・多摩川の河口までは、なんと400キロ以上もあったのです。
豊田さんたちは、週末を中心に、毎月1回、午前9時から午後4時まで、1日4~12キロくらいのペースで、ごみ拾いを続けていきました。
数か月後、湯河原から真鶴半島を回って小田原市の根府川に入ると、緩やかな弧を描いた相模湾の海岸線の先に、江の島が霞んで見えてきました。
「俺たちはいったい、あの江の島にいつ着くんだろう……」
思わずそうぼやいた頃、豊田さんは海岸のごみに一定の法則性があることに気付きます。ペットボトルのキャップだけが、海岸に打ち上げられているんです。じつは海に捨てられたり、流れ着いたペットボトルは、波の力でキャップが開くと、海水が入ってボトルだけ沈み、キャップだけが陸に打ち上げられてしまうのです。
「これはとんでもない数のペットボトルが、神奈川の海に沈んでいることになるぞ!」
えぼし岩を回り、江の島を過ぎると、やっと三浦半島の先のほうが姿を現しました。しかし、三浦半島の細かく入り組んだ入り江が、豊田さんたちの行く手を阻みます。それでも、スタートから2年半近くをかけて最南端・城ケ島に到達。要塞の島・猿島にも渡りながら、いよいよ東京湾に入ってきました。
すると、今度は軍事基地や港湾施設が、3人のおっさんたちの前に立ちはだかります。仕方なく近くの道路沿いの清掃を行うと、違ったペットボトルの問題が見えてきました。港湾道路の広い中央分離帯の植え込みの陰に、恐らく物流のドライバーの方と思われる車内で小用を足した液体が入った大きなペットボトルがゴロゴロと捨てられていたのです。
様々な苦難を乗り越え、4年9カ月をかけて、昨年12月1日、豊田さんをはじめとした「3匹のおっさん プラごみバスターズ」の皆さんは、多摩川の河口に到着しました。集めたごみはおよそ3トン、うち、7割ほどが三浦市と横須賀市から回収されました。これは地形の関係で相模湾と東京湾のごみが、三浦半島に集まってしまうからなんです。
4年9カ月のごみ拾いを振り返って、豊田さんはこう話します。
「達成感はありません。むしろ、やらなければいけないことがたくさん見つかりました。ペットボトルが、いったい海のどこに溜まっているのか、潜って確かめたいですね」
神奈川の海を自分の足で歩いた豊田さんは、もう、次に向かって歩き始めています。
https://www.uminomoriyamanomori.com/
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