不特定多数による“いじめ”のように…SNSの普及で高まる「カスハラ対策」の重要性──ANAとJALも対策方針発表
日テレNEWS NNN / 2024年7月2日 7時0分
ANAとJALが28日、共同でカスハラへの対策方針を発表しました。カスハラ対策に踏み込む企業が増える背景には、SNSの普及で深刻化するカスハラの実態が。
経済部で財界担当の城間将太記者と、流通担当の片山桂子記者が深掘りトークします。
■「偽名で搭乗」もカスハラ――JALとANAが共同で発表した「カスハラ対策方針」
財界担当 城間将太記者
「航空業界ではカスハラが非常に問題になっています。というのも、カスハラを受けた従業員がメンタルに不調をきたし、休職や退職に追い込まれてしまうと、従業員が減るわけですから、顧客へのサービスの質の低下にもつながりかねません。そのため、全日空グループと日本航空グループは28日、カスハラ対策方針を共同で発表しました。ただ、これは『カスハラに対してこういうふうに対応します』という宣言ではなくて、『どういう行為が従業員にとって迷惑行為にあたるのか』を明文化して示した形なんです」
流通担当 片山桂子記者
「例えばどういう行為がカスハラとして明文化されたんですか?」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/58e08f40-a29c-4cc6-a249-bf9767f4135e.jpg?w=550)
城間記者
「暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷、暴行。あと、従業員の言動を理由に補償金や席のアップグレードなどを求める過剰な要求」
片山記者
「アップグレードって、ファーストクラスに乗せろとか?」
城間記者
「まさにそうですね。さらに、氏名の詐称。搭乗券を取るときに偽名を使ったりとかね。あと、『手伝いが必要だと偽る』など社員を欺く行為。例えば、けがをしていないのに『自分は足が悪いから早く乗りたい』ですとか。そして、事実と反することを写真を撮ったり録音したりしてSNSに流し、会社や社員の信用を毀損(きそん)する行為。こういった9つの行為をカスハラとして明文化して、従業員と客との間で共通認識を持てるようにしたんです」
■「JR東日本」「ローソン」「ファミリーマート」…企業に広がるカスハラ対策
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/2b354d9f-9bb1-4300-9800-92ebb78246ce.jpeg?w=550)
片山記者
「カスハラはパワハラとかセクハラなどと違って、今は法律上の定義というものがないんですね。だからこそ、まずは定義を明確化する動きが広がっているんでしょうね。自治体でも同じような取り組みが広がっていて、東京都でも5月にカスハラの定義付けを行い、今後、全国初のカスハラ防止条例の制定を目指そうとしています」
城間記者
「対策に踏み込む企業も出てきていますね。例えば、JR東日本は今年4月にカスハラに対する方針を新たに策定しました。こちらでも、身体的、精神的な攻撃とか土下座の要求、社員の個人情報をSNS等に投稿するなどの行為が行われた場合、乗客へのサービスを行わないとしているんです」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/c7d0a404-0b9c-43fd-b0d0-257e3f88a951.jpeg?w=550)
片山記者
「その人をお客さんとして扱わないみたいなことですか?」
城間記者
「例えば、みどりの窓口で、暴言や暴力などがあった場合は、対応しないということですよね」
片山記者
「コンビニも不特定多数のお客さんが来るので、カスハラを受けることがよくあるそうなんです。店員さんって名札をつけていますよね。先日ローソンでこの名札を本名じゃなくてイニシャル表記にしても良いというふうになりました。あと、ファミリーマートでは本名じゃなくてもいいということにしました。田中さんが、名札上は佐藤さんと名乗るのもOK」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/c11cb3b8-e23a-4e8b-9e37-662abd58efd0.jpeg?w=550)
城間記者
「ネームプレートを変えるのがカスハラ対策というのは、一体どういうことなんでしょうか?」
片山記者
「コンビニのスタッフとかアルバイトの方って、お店の近くに住んでいる方もいらっしゃいますよね。お客さんに『名前を覚えたからな』と言われたり、勝手に名札を撮影されてSNSに上げられたりしたら、普段の生活を脅かされる可能性もあるので、こういった対応をとることにしたそうです」
■「お客様は“神様”」じゃない──SNS上の“いじめ”から従業員を守るために
城間記者
「最近になってカスハラの対応する企業が増えてきた背景というのはどういうものがあると考えますか?」
片山記者
「カスハラという言葉の広がりとともに、カスハラの存在とか対応の必要性について企業も認識が高まってきたと思うんです。飲食やホテルなどサービス業が加盟する労働組合、UAゼンセンが6月に発表した調査では、サービス業で働く人たちに『直近2年以内にカスハラを受けたことがありますか?』と尋ねたところ、およそ半数が『あった』と答えています」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/881a7e82-52fa-4f86-bfca-bb7a8e6bba3a.jpeg?w=550)
城間記者
「ハラスメントが生み出す問題に詳しい日本ハラスメント協会の村嵜要(むらさき かなめ)代表理事に話を聞いたところ、SNSがそんなに普及していない時だと、従業員対客が一対一の構図だったのが、SNSが普及した現在では、従業員対不特定多数ということになってしまうんですね。かつては一対一のけんかみたいなものだったんですよ。それが今は、当事者以外も広く参加するいじめのような形に変わってしまったわけです」
「さらには、SNSによるカスハラの怖いところというのは、客は従業員に対して怒りを感じて投稿するとするじゃないですか。投稿したらそこでおしまいなんですよ」
片山記者
「スッキリするんですかね?」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/f9c61279-2f1a-494f-85ad-6045bbbe19ed.jpg?w=550)
城間記者
「怒りが収まることって結構あるじゃないですか。でもネットに上げているものですから、どんどん拡散して炎上しているかもしれない。そして直接関係のない人たちから従業員が攻撃を受ける。本当にえたいの知れない恐ろしさというのがありますよね」
片山記者
「デジタルタトゥーといってずっと残っちゃうんですよね」
城間記者
「『お客様は神様』なんて言葉が、長年ビジネスの現場で“徹底”されてきた面もあると思うんですね。それが今、企業側としても人手不足というのもあって、従業員を大事にしているので、やっぱり一線を越えたお客さんから従業員をしっかり守ろうという姿勢に変わっているんだと思うんですね」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/1c3ff8c85c474f1a840c8ecc4adbe5a9/bd737513-f3f7-44b5-b937-c602e997bb03.jpg?w=550)
片山記者
「キャビンアテンダントさんも飲食店の店員さんも、お仕事を離れれば1人のカスタマーになるわけですよね。誰しもどちらの立場にもなり得るということで、結局は人と人のコミュニケーションですよね。人間なんで、自分に対して怒りをぶつけてくる人には、いいサービスを提供しようという気にならないじゃないですか。だから、感情的にならないで、サービスへの不満をきちんと伝えれば、改善をしてもらえて、私たちにまたいいサービスが返ってくるということですよね」
この記事に関連するニュース
-
ANAとJALが共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を発表
マイナビニュース / 2024年7月1日 12時34分
-
ANAとJAL共同で「カスハラ」対策 乗客の悪質な実態とは? 乗務員にコップ“投げつけ”…「ふざけるな!」暴言も
日テレNEWS NNN / 2024年6月28日 23時16分
-
「土下座しろ!」「謝罪に来い!」ANAとJAL、カスハラ行為にNOを表明
ASCII.jp / 2024年6月28日 21時20分
-
盗撮やつきまとい、座席のアップグレードなど過剰な要求はカスハラ…ANAHDと日本航空が統一基準策定
読売新聞 / 2024年6月28日 18時48分
-
ANAとJAL「カスハラ方針」共同で策定 23項目の“行為例”も紹介
ORICON NEWS / 2024年6月28日 14時2分
ランキング
-
120年ぶりの新紙幣に期待と困惑 “完全キャッシュレス”に移行の店舗も
日テレNEWS NNN / 2024年7月2日 22時4分
-
2小田急線「都会にある秘境駅」が利用者数の最下位から脱出!超巨大ターミナルから「わずか700m」
乗りものニュース / 2024年7月1日 14時42分
-
3メルカリの「単発バイトアプリ」利用者伸ばす世相 「何が利点なのか」利用者と店舗の声を聞いた
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 13時30分
-
4「7月3日の新紙幣発行」で消費活動に一部支障も? 新紙幣関連の詐欺・トラブルにも要注意
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 8時30分
-
5カチンコチンの「天然水ゼリー」が好調 膨大な自販機データから分かってきたこと
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月30日 6時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)