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フランス政界を激震させる国民連合 「極右」と呼ばれる理由は?

日テレNEWS NNN / 2024年7月6日 18時14分

マリーヌ・ルペン氏

フランス国民議会選挙で、得票率トップに躍り出たのは、「極右」と呼ばれる政党「国民連合」でした。6月のヨーロッパ議会選挙でも、マクロン大統領率いる与党に圧勝。かつての「国民連合」は、多くのフランス人に“毛嫌い”されてきた政党でしたが、今では最も支持されています。着実に政権への地歩を固める「国民連合」とは、いったいどんな政党なのか、なぜ「極右」と呼ばれるのか、フランスの2人の専門家に聞きました。

■フランスのスーパースターも憂慮

サッカー界のスーパースターであるキリアン・エムバペ選手は、極右政党「国民連合」を念頭に、「過激派や人々を分断させる考えに反対です」と異例の訴えをしました。

マクロン大統領率いる与党のアタル首相と、急進左派「不服従のフランス」の指導者メランション氏も、「極右には一票たりともやらない」と決選投票を前に宣言。これまで互いを徹底的に敵視してきた与党と急進左派も、「極右・国民連合」の脅威を前に協力せざるを得なくなっています。

ある意味、フランスで最も注目されている「国民連合」。30%超えの支持を受けているにもかかわらず、これほどまでに警戒されるのはなぜなのでしょうか?

■国民連合の起源

バレリー・イグネさん

極右を専門に研究してきた歴史家バレリー・イグネさんは、「過去を忘れることはできない」と国民連合の「脱悪魔化」にくぎを刺します。同党の前身である「国民戦線」は、党の現在の実質的トップであるマリーヌ氏の父ジャン=マリー・ルペン氏らによって1972年に設立されました。現在でも国民連合が「極右」と呼ばれるのは、この「出自」と大いに関係があるのです。

国民戦線の創設者には他にも、元ナチス武装親衛隊、ネオナチ支持者などがいました。そのリーダーに選ばれたのが、ジャン=マリー・ルペン氏でした。国民戦線は、紛れもなく「極右」を母体として生まれた政党です。また、ジャン=マリー氏は、のちに数々の反ユダヤ・人種差別的発言をしたことで知られる人物です。

そして、70年代の国民戦線は、右派の中での「独自性」を模索していました。その中で「移民排斥」を掲げ政治的に利用するようになります。次第にフランスでは、「移民排斥」といえば、「極右」国民戦線を想像するようになりました。この後身が、現在の「国民連合」なのです。

■「脱悪魔化」は成功したが…

マリーヌ・ルペン氏

もちろん創設メンバーのほとんどはすでに亡くなり、イグネさんも「党は大きく変わった」ことを認めます。父の後を継いで党首となったマリーヌ・ルペン氏は、父のトレードマークともいえる反ユダヤ主義と表向き縁を切ることで、極右の悪いイメージの払拭に成功しました。

しかし、それでもこの党は普通の「右派」ではなく、「極右としか呼びようがない」とイグネさんは断言します。公約や候補者を見る限り、現在の国民連合が「外国人嫌悪」を基礎として前進する極右政党であることには変わらないと考えているからです。バルデラ党首の公約には、一部の公職からの重国籍者の排除、移民政策や難民受け入れを厳格化するための憲法改正などが並んでいます。

バルデラ党首

公認された候補者の思想も疑問視されることがあります。決選投票の直前にも、候補者の一人が、過去に自身のSNSでナチス空軍の制帽をかぶって記念撮影していたことが発覚し、立候補を取り下げたばかりです。

■薄まる「極右」の抵抗感

1986年、ジャック・シラク元大統領(当時首相)は、「極右とは絶対に協力しない」というポリシーを宣言し、極右と保守の間に「予防線」を引き、自党の議員に国民戦線の議員と言葉を交わすことも禁止したといわれています。このように極右と距離を保つ考え方は、長らく保守の政治家の中でも、おおむね尊重されてきました。しかし、今回の選挙では、伝統的な保守政党の流れをくむ共和党の党首が、国民連合との協力を表明しました。

イグネさんは、これまでに左派支持から国民連合支持に転向した、たくさんの有権者にインタビューしてきたそうです。これらの人々の多くは、国に見捨てられたと感じている人々であり、外国人が自分たちよりも所得の再配分において優先されているという不満を抱いています。国民連合が今までに一度も政権を担当したことがないことも、有権者を「一度、試してみよう」という気持ちにさせ、極右に対する抵抗を薄めているのだそうです。

■躍進の理由は?

躍進の理由は、購買力だけでなく、移民、治安といったフランス社会の問題を左右問わず歴代のどの政権も放置してきたと有権者が感じていることがあります。

ベネデッティ氏

政治学者のアルノー・ベネデッティさんは、かなり以前から、すべての年齢層において、国民連合への支持が安定的に伸びていて、中産階級や上層階級にも支持者が増えていると指摘します。

国民連合に票を投じる主要な要因の一つは、常に移民問題でしたが、「治安問題と移民流入は有権者の認識において結び付けられている」といいます。そのため、治安問題が重大で優先的な争点となったことで、移民問題を専売特許にしてきた国民連合に票が流れたと説明します。

また、ベネデッティさんは、「国民連合の起源は確かに極右だが、現在の党は世界の保守の政党に近くなっている」ともみています。同党が政権をとっても、外国人の生活にそこまで影響はないと見立てています。

議席の多数を「極右」勢力が占めることになるフランス。内政や経済、外交への影響もまったくの未知数であり、どのように変貌していくのか、世界が注目しています。

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