「子どもらしい日々」取り戻す闘い…ウクライナの子どもたちは今 侵攻から2年5か月
日テレNEWS NNN / 2024年7月30日 19時38分
今週は日テレ「こどもウイーク」です。子どもに関するさまざまなテーマを取材し、お伝えします。ロシアの侵攻から2年5か月となったウクライナ。多くの子どもたちが家族や学びの場を失う中で「子どもらしい日々」を取り戻すための闘いが続いています。
◇
ウクライナ西部で行われている、とあるキャンプ。参加者の男の子が描いていたのは…
「これはパパ、これはママ、これは僕たちきょうだい」
食べ物で表現した家族4人の姿。しかし…
「パパは戦争で死んだよ」
民間団体「Gen.Camp」が主催する、親を失った子どもたちのための「心のリハビリキャンプ」です。心の傷を癒やすための21日間のプログラムが組まれ、ウクライナ各地から参加者が集まります。
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/ff307068ceef4cb7bcf4350e8e47deec/d0871231-a88f-47ab-b3e2-bee1b4971c02.jpeg?w=550)
今回、参加した6歳から16歳までの50人の子どもたちも、全員が戦争で親を失っています。
Gen.Campを企画 オクサナ・レベデワさん
「この子の父親はトライアスロンの素晴らしい選手でしたが、戦場で命を落としました」
大きな喪失に直面した子どもたち。今回、私たちは、リハビリが進み子どもたちの心が安定している期間に限り取材を許されました。
アンドリーさん、12歳。両親をロシア軍に殺害され、今は姉と暮らしています。2年前の侵攻開始直後、両親とおじとともに避難中、ロシア軍の車列に遭遇しました。
アンドリーさん(12)
「車で避難していたら(ロシア軍の)車両の列に出くわしたんだ。戦車は加速して車のフロントガラスに乗り上げてきた」
アンドリーさんだけは1人のロシア兵により、車から引っ張り出されたといいます。そして、その目の前で…
アンドリーさん
「(ロシア軍は)車の燃料タンクを撃って火をつけたんだ」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/ff307068ceef4cb7bcf4350e8e47deec/028d4272-986e-4fed-9d81-a22dfe486c60.jpeg?w=550)
両親の死から2か月後に現地メディアが取材したアンドリーさんの映像では…
アンドリーさん(2022年5月)
「(車がつぶされた直後)パパは気づいたら死んでいた。ママはまだ生きていた」
両親とおじが命を落とした黒焦げの車を前に、淡々と話していました。
この頃の心境について聞くと…
アンドリーさん
「事実だと思えなかった」
──夢みたいな?
アンドリーさん
「そう、そんな感じ」
「親の死を現実だと思えない」。個人差はあるものの、参加者の子どもによくみられる反応だといいます。
キャンプの心理学者
「(時間がたち)現実を理解した時、難しい感情に直面します。深い悲しみや怒りが入り交じり、誰とも関わりたくないと思う子もいます」
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子どもたちはお互いの経験を語り合うなどのセラピーを通して、親を失った悲しみに向き合い、受け入れていくといいます。
そして、「遊び」に多くの時間をあてるのもこのプログラムの特徴です。子どもらしく笑い、「楽しい」という感覚を取り戻すのが狙いです。
父親とよくサッカーで遊んだというアンドリーさん。キャンプへの参加後、「将来の夢」を語るようになりました。
アンドリーさん(12)
「サッカー選手になってレアル・マドリードでプレーしたい」
キャンプにはこれまでに450人が参加。今も多くの子どもが支援を必要としています。
Gen.Campを企画 オクサナ・レベデワさん
「『子ども時代』はすべての国と人々が守るべき、侵すことのできない神聖なものです。(戦争の)影響を減らし、彼らがまた人生を楽しめるようにしたい」
![](https://image.typeline.play.jp/74d83cb6d70c4499a51e0d516f73b40c/articles/ff307068ceef4cb7bcf4350e8e47deec/654859a5-2998-4c2a-a2d5-59c80f2275dc.jpeg?w=550)
一方、東部の「前線の街」では「子どもらしい日々」を守る闘いが続いていました。
ウクライナ第二の都市・ハルキウ。ロシア国境からわずか30キロで、日常的にミサイルや砲撃が襲うこの街を、私たちは今年2月に取材しました。
市内の学校で見せてもらったのは、ロケットが直撃したという校舎の一角です。ハルキウ市では今、こうした危険を避けるため、地上の学校での授業は行われず、オンライン授業がメインとなっています。
そんなハルキウで大勢の子どもたちが向かったのは地下鉄の駅。その先にあったのは「学校」です。
去年9月に地下鉄の駅の空間を利用してつくられました。教室は空襲を避ける防空壕(ごう)を兼ねているため、子どもたちは安心して過ごすことができます。
エバ・ドゥホウナさん(当時9)
「ここで勉強するのが好きです」
エバ・ドゥホウナさん。侵攻開始直後、家の近くにミサイルが着弾し、姉がけがをしたのを目の当たりにしました。
ストレスで吃音(きつおん)が出たり、自分で髪の毛を抜くこともあったりしたといいますが、地下の学校にきて落ち着きを取り戻したといいます。
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ハルキウ市はさらに多くの子どもが対面授業を受けられるよう、専用の地下校舎を新たに建設。5月から運用を開始しました。当面は「学校の地下化」を進める計画です。
取材から約5か月、ロシアの攻撃にさらされ続けるハルキウで、エバさん親子が今、望むものは…
エバさんの母・ビクトリアさん
「平和な空です。子どものためにこれ以上何を望みますか」
エバ・ドゥホウナさん(10)
「戦争が終わってほしいです。地下ではない(地上の)学校へ行きたい。毎日のようにプールに通ったり、ピザやマシュマロを食べたりしたいです」
「子どもが子どもらしく過ごせる」、そんな当たり前の日々のための必死の努力が続いています。
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