チームを強くするのに厳しさ必要? 女子バレー・石川真佑ら輩出した指導者語る“スポーツの本当の面白さ”【佐藤梨那アナ取材】
日テレNEWS NNN / 2024年7月31日 22時20分
パリ五輪で注目のバレーボール。52年ぶりの男女同時でのメダル獲得も期待されています。女子日本代表で主力として活躍する石川真佑選手・岩崎こよみ選手の2人を高校時代に指導したのが、小川良樹さん(68)です。小川さんがどのような思いで選手を育てているのか、小学生から大学まで14年間バレーボールに打ち込んでいた私、日本テレビアナウンサーの佐藤梨那が取材しました。
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小川さんは、全国屈指の強豪校である下北沢成徳高校で監督として42年間指導。これまで荒木絵里香さんや大山加奈さん、木村沙織さんなど数多くの日本代表選手を輩出し、教え子たちが世界で活躍する姿を見てきました。
現在、日本代表で活躍する石川真佑選手も教え子の一人です。石川選手は男子日本代表キャプテンの石川祐希選手を兄に持ち、高校入学時から、すでに代表選手として活躍していた兄の背中を追っていたといいます。
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佐藤
「石川選手はどのような選手でしたか?」
小川
「誰よりも嫌なランの練習とか、そういうのもすごく頑張っていました。彼女はやるってなったら絶対やるので。それが今もちゃんといきていますよね」
身長は174㎝と高くなかったものの、世界と戦うためにジャンプ力の強化に取り組み、小川さんによると高校3年間で最高到達点を10㎝以上伸ばしたといいます。努力が実を結び、世界の高いブロックの壁にも負けない力強いスパイクで、現在は日本代表の中心選手として活躍しています。
■驚きの練習メニューの根底にある思い “バレーを長く続けてほしい”
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小川さんは2023年3月で下北沢成徳の監督を勇退し、同年11月に埼玉県にある細田学園でエグゼクティブアドバイザーに就任。6月の関東大会で細田学園は数々の強豪校に競り勝ち、過去最高順位に並ぶ、9年ぶりの準優勝となるなど、着実に力をつけています。
今回、練習を取材させていただくと、その日のメニューで気づいたことがありました。
佐藤
「練習が始まっておよそ1時間、ようやくボールを使った練習が始まりました」
見学した日は、大会が迫っている大事な時期。3時間半に及ぶ練習でしたが、その半分もの時間をボールを使わないトレーニングに費やしていました。バレーボール部出身の私も、試合直前にここまでボールに触らないのかと、この練習メニューには驚きました。
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佐藤
「どうしてここまで、トレーニングを大切にされるんですか?」
小川
「小学校からバレーをやっている子たちはバレーはうまいんですけど、体ができてないっていうところの危うさ。技術が上がったり徐々に上手になって力を出せるようになってきた時に、筋力不足だとからだ壊しちゃうんですね。選手たちはとにかく一生懸命やってくれるので、そこを今度は我々の責任だと思っています」
時間をかけたトレーニングには、3年間しかない高校生活だからこそ、ケガをせずにバレーボールに打ち込み、そして卒業後も、長く競技ができる体をつくってほしいという思いがありました。
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小川さんの教え子で日本代表の岩崎こよみ選手は、結婚・出産を経て35歳で初の五輪代表に選ばれました。チームの柱を担うセッターとして活躍しています。
小川
「結婚して出産をして、なおかつ選手として全日本のレギュラーでプレーしてくれているというのは、私にしてみればそうあってほしいって願っている。高校時代、“長くバレーを続けるようになってほしいな”と思いながら選手たちと一緒にバレーをやっています」
■教え方に秘けつあり「自分の価値観を押しつけない」
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そしてもう一つ、小川さんが指導で大切にしていることがありました。生徒に話を聞くと、その姿勢が見えてきました。
細田学園高等学校 バレーボール部・嶋﨑紗恵子さん(2年)
「教えていただく時に、具体的な答えはなくて。結局やるのは自分たちだからっていうのを言われていて。わからない時はチームの人たちと“こうだよね”とか言い合いながら、自分たちで正解を探す。(小川さんは)そういう教え方をしていると思います」
小川
「やっぱり自分で乗り越えないと覚えない。“こうやった方がいいよ”と言うんじゃなくて、“どうする?”というのは言います。“こうしなさい”とか“こうやった方がいいですよ”と言われてやったことって、身に付かないんですよ」
「選手の主体性を殺さないように。できれば、自分の価値観をあまり押しつけない。選手たちが持っている価値観、彼女たちの考え方をやたらこちらが進入して邪魔するようなことをしない。伸びていくことの“ちょっと手助け”ぐらいができればちょうどいいかなと」
■過去には厳しい指導も “選手の力発揮できる”考え方に
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指導者の価値観を押し付けるのではなく、選手自身で考える大切さを伝え、選手の主体性を育んできた小川さん。しかし、かつては厳しく生徒を指導していた時期もあったといいます。
小川
「当時は勝っているチームって相当厳しかったですから、先輩諸氏からも“お前甘いんだよ”とよく言われていました。厳しくできるかできないかが強いチームを作れるかどうかの分かれ目なんだ、ということを盛んに言われました。私もそっち(厳しい指導)へふれたんですけれども、勝てないんですよね。“厳しい厳しい”ってなると、やっぱり辞めたいっていうような気持ちが先立って。だったら、逆の方向でバレーボールを好きにさせて、練習に行きたいという気持ちにさせた方が、選手たちの力を発揮できるんじゃないかと考え方・視点を変えてみて」
スポーツは「勝つ達成感」以上に、大切なことが学べると小川さんは話します。
小川
「スポーツの楽しさというのは、教えられたことができるとか、人に勝つというレベルじゃなくて。自分を見つめて、自分の中で何かしらの考えを身につけて、なおかつ努力することによって“自分が変化する楽しさを知る”ってあたりに、スポーツの本当の楽しさがあるんだと思うんです」
■取材後記
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小川さんは、「自分は昭和世代だから、自分がある意味“正しい”と信じたこと自体が、そもそも違っていることの方が多いだろうなと、勘違いするなよ」と、日ごろから心がけていることを話してくれました。私も働いていると、「こうしたらいいのに」とついつい口を挟みたくなる時もありますが、小川さんの言葉は教育現場だけでなく、いま私が働く中でも大切にしたい、相手への思いやりだと感じました。
(取材・文 佐藤梨那)
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