スクールロイヤーとは――法の視点で学校の問題解決支援
日テレNEWS NNN / 2024年8月4日 15時37分
近年、教育現場で多様化するいじめ問題や事故などについて、学校や教育委員会から相談を受け、第三者の目線で法的にアドバイスを行う弁護士=スクールロイヤーの活動が広がっています。スクールロイヤーとして働く鬼澤秀昌弁護士に話を聞きました。
■学校や教育委員会のための法律アドバイザー
スクールロイヤーは、いじめ問題や児童生徒間のトラブルなど、学校で問題や事故が起きた際に、学校や教育委員会から相談を受けて、現場に法的なアドバイスなどを行う弁護士です。
複雑化する学校現場での問題解決に向け、スクールロイヤーの配置は全国に広がっていて、文部科学省の調査によりますと、2022年度までに都道府県のおよそ8割でスクールロイヤーに相談できる体制が整えられているということです。
スクールロイヤーとして活動する鬼澤秀昌弁護士は、その役割について、「先生たちが困ったときに、子どもの最善の利益を目指し、法律的な観点から相談に乗ること」だと説明します。
自治体によって制度は異なりますが、ほとんどの場合、スクールロイヤーは学校に常駐はせず、学校や教育委員会から相談があった場合に、自治体にスクールロイヤーとして登録されている弁護士、もしくは弁護士会から紹介された弁護士が対応を進めていくといいます。
学校現場からの相談を受けたスクールロイヤーは、法律に基づくアドバイスを行うと共に、現場の教員や、必要に応じてスクールカウンセラーなどとも連携しながら、問題への対応を検討するほか、自治体によっては、スクールロイヤーが学校や教育委員会の代理人として過剰な要求をしてくる保護者への対応を行うこともあるということです。
■いじめ問題「適切で納得感のある対応を」
スクールロイヤーに寄せられる相談内容は多岐にわたりますが、中でも件数が多いのがいじめ問題です。
いじめ防止対策推進法やガイドラインの整備が進む一方で、いじめの定義は広く、価値観の多様化が進んでいることから、適切な対応の判断が難しくなっているといいます。
鬼澤弁護士
「被害者と加害者両方の学習する権利を守りつつ、双方が納得する適切な対応や解決策についての判断がなかなか難しい。ギリギリのバランスのラインを先生と一緒に考えながら進めています」
また、いじめが発覚したあと、学校側の調査や説明に対し、保護者から納得が得られず、どのように対応すべきか、学校から相談が来るケースも多いといいます。
「被害者と加害者がいる中で、学校がしっかり全部説明しきれている場合もあれば、説明不足な場合もあります。そういった時に、スクールロイヤーとして背景を詳しく聞き、事実関係の整理や、子どもたち同士の関係、先生の対応などを整理し、より納得感のある対応・説明に向けたアドバイスを行っています」
■学校と協力しつつ多角的な視点を持つことが大事
教育現場で起きる問題は複雑で、一刀両断で解決することが難しいため、スクールロイヤーとしては、学校分野の法律や判例の知識を持つだけでなく、話を丁寧に聞いて、一緒に考えていくスキルが必要になってくるといいます。
「問題が起きたあとの、次の一歩がやっぱり難しいところ。学校と一緒に悩んで、こどもたちのために、次のより良い一歩を考えることが大切です」
一方で、気をつけていることについては……。
「学校から話を聞くっていう時点で、一方から話を聞いているというバイアスがあることを常に認識して、注意しています」
「話を聞いた上で、別の事情もありうるのではないか、子どもや保護者から見たら違う視点があるのではないかなど、多角的な視点を持っておくことが重要だと思います」
■判断に悩んだら相談を
学校現場を取り巻く環境が変化するのにあわせ、関連する法律やガイドラインも増え続けていますが、こうした法律を、教員がすべて把握することは極めて困難です。そのため、学校だけで問題を抱え込まず、教員の負担軽減や適切な早期対応・解決のためにも、文科省は早期の段階からスクールロイヤーに相談することを促しています。
「学校現場においてほとんどが、これ別に弁護士に聞く話じゃないよねと、相談するのを躊躇してしまうことが多いと思います。しかし、相談してもらえると、法律に基づくアドバイスはもちろん、問題解決に向けてできることはたくさんあるので、判断を迷った時にはためらわず、スクールロイヤーに相談してほしいです」
専門家として知識を共有し、学校などと連携を取りながら教育現場を支える一員として、スクールロイヤーの活躍が今後も期待されます。
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