“もっと彼らは評価されるべき” ヘラルボニーが主催、障害のある作家のためのアートアワードを取材
日テレNEWS NNN / 2024年8月18日 7時10分
障害のある作家が手がけたアートの展覧会『HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition』が、東京・丸の内で開催されています。
展覧会を手がけているのは、主に知的障害のある作家が描く2000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスを展開する企業『ヘラルボニー』です。障害のイメージを変え、ありのままに生きる社会の実現を目指していて、今年5月には世界各国の革新的なスタートアップを評価する『LVMH Innovation Award 2024』にて、日本企業として初めてカテゴリー賞を受賞しました。
■世界28の国と地域から1900点を超える応募
初開催となるアートアワード『HERALBONY Art Prize 2024』には、主催者によると、世界28の国と地域から1973点の作品の応募があったといい、現在開催中の展覧会には、グランプリや企業賞を獲得した58人の作家による、62作品が展示されています。
19歳のときに、世界で症例わずか5人という病を患ったことが判明し、その後、寝たきりとなり闘病しながらも、28年絵を描き続けているカミジョウミカさんが手がけたのは、カラフルな色使いが特徴的な『夢の中カラフル脳みそ』です。
作品には、びっしりと模様が描かれていて、カミジョウミカさんが手がける作品のほとんどは、眠る時に見た夢や空想の世界をテーマにしているといいます。 この作品は、企業賞・JINS賞を獲得しました。
電車とアイドルが大好きな、知的障害のある早川拓馬さんが手がけたのは、『トレインレールランド』。10年ほど前から、電車とアイドルを合体させた作品を描いているといいます。
■「もっと彼らは評価されるべき」国際アートアワード開催のきっかけ
なぜ、『HERALBONY Art Prize 2024』を開催したのか? 自閉症の兄がいる、ヘラルボニー代表の松田崇弥さん(33)、松田文登さん(33)は、開催のきっかけについて2023年5月にフランスに行き、世界中の福祉施設を回ったことだと話します。
崇弥さんは「そこで“もっと彼らは評価されるべきなんだ”って福祉施設の方もおっしゃっていて。世界でこういったコンペティションを通じて、作家さんの表現機会を創出したいと思った」と、日本に限らず世界中の作家から作品を募集したアワードのきっかけを話しました。
実際に集まった作品を見て、文登さんは「一人ひとり、表現が全く違う。なので、“障害”って一つにくくったとしても、それだけで言い表せない世界がそこには存在していて。だからこそ面白い」と明かし、「彼らの異彩に着目をして、それをどう見るのかによって、こんなに世界っていうものは彩りが豊かになっていくんだな」と、コメントしました。
創業してから6年。数々の企業とコラボし、多くの作家を世に送り出してきた中での変化を聞くと、崇弥さんは「自分事だったんですよ、“自分がこういうことをやりたい”っていう。でも親御さんや福祉施設の方、いろんな企業の皆様と会って、自分のやっていることは“社会事”になれることかもしれないと思って。挑戦の度合いが毎年大きくなっている」と振り返り、文登さんは「社会そのものの意識を変える運動体として、ヘラルボニーというものが機能していったら」と語りました。
■グランプリは浅野春香さんの『ヒョウカ』
今回、グランプリを獲得したのは、20歳で統合失調症を発症し、入退院を繰り返しながら闘病を続ける浅野春香さん(39)の『ヒョウカ』です。切り広げた米袋に水性ペンで円や模様を描いた作品で、浅野さんの“評価されたい”という感情が表現されています。
■米袋に描くワケ「きちんと描かなきゃいけないっていうのがなくて好き」
米袋に作品を描く理由について「米袋ってきちんとしていなくて。他の紙って真四角で真っ白で、きちんと描かなきゃと思う。米袋だときちんと描かなきゃいけない、っていうのがなくて好きです」と明かしました。
また、障害のある作家をビジネスパートナーとしてプロジェクトを進めるヘラルボニーの理念については「私たちの作品を大事にしてくれているのが、いろんなヘラルボニーさんの商品を見て感じます」と答えた浅野さん。 最後に今後の目標を聞くと、「評価されることを目指していて。でも自由に、自由にそういう絵を描きたい」と目を輝かせました。
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