パラ車いすテニス“最年少”金メダル 小田凱人選手 強さの秘密とは?【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN / 2024年9月9日 11時3分
パリ・パラリンピックで8日、車いすテニスの小田凱人選手が、この種目、史上最年少で金メダルを獲得しました。「誰もやらないことをする」。この言葉を大切にしているという小田選手。バンキシャ!は18歳で世界一になった、その強さのワケを取材しました。(真相報道バンキシャ!)
フランス・パリで8日未明、車いすテニス・男子シングルス決勝。18歳の小田凱人選手は、最終セットまでもつれる熱戦を繰り広げた。
小田凱人選手
「過去一番大きな声援だった。これまで感じたことない緊張感、途中から凱人コールが大きくなって、これは俺のもんだなって感じで」
パラリンピック初出場にして、この種目、史上最年少で手にした金メダル。世界の頂点をつかんだ小田選手。かつて自らの著書「I am a Dreamer」(KADOKAWA)で、「誰もやらないことをする」と語っていた。
「“誰もやらない”テニス」。そこに、小田選手の強さの秘密があった。
アテネ・パラリンピック金メダリストの齋田悟司選手は「小田選手特有のスタイル。新しい時代の予感」と話す。
◇
9歳の時、左足に骨肉腫が見つかった小田選手。そんな中で出会ったのが、車いすテニスだった。きっかけは10歳の時、車いすテニス界のレジェンド・国枝慎吾さんのプレーをみたこと。夢中で練習を続けたという。
15歳でプロに転向。史上最年少で全仏オープン優勝など数々の記録を打ち立てた。国枝さんの引退後、次世代を担うエースにまで成長を遂げた小田選手。
パリ・パラリンピックの車いすテニス・男子シングルス決勝は、まさに激闘だった。相手は世界ランキング1位のイギリスのA・ヒューエット選手。幾度となく、対戦してきたライバルだ。
互いに1セットずつを取り合い、運命の第3セット。このセットをとったほうが金メダル。一時、点差が開き、相手のマッチポイント。あと1ポイントとられたら試合終了という絶体絶命のピンチ。しかし、小田選手は、このプレッシャーを楽しんでいるようだった。
驚異的な粘りで切り抜け、そして、劇的な逆転金メダルとなった。小田選手の地元の愛知・一宮市も歓喜でわいた。
保育園からの同級生
「負けという言葉もよぎったんですけど、そこからがもう凱人すぎました。すべてが」
保育園からの同級生
「普段はおちゃらけてって感じですけど、コート上では真剣な目つきでプレーしていて。ギャップっすね。かっこいいっす」
表彰式後、小田選手は試合を振り返り、「運命って言ってきて、じゃねーのかもなってのも(試合の)途中で思って、でも途中からまた信じられてっていうのはあったんで。やっぱ運命ってあるなって本当に思いました」と話した。
◇
小田選手、強さの秘密は何なのか? 去年取材したときの映像で見せてくれたのは、柔軟な肩甲骨まわり。これによって生み出されているのが、「高速サーブ」だ。
小田凱人選手
「ものすごい腕をしならせて打つので、肩の可動域、動く範囲が広いと上の方でより速いボールが打てる」
決勝では時速165キロのサーブを打った小田選手。そのスピードについて、バンキシャ!が話を聞いたのは、齋田悟司選手。2004年、アテネ・パラリンピックで、国枝慎吾さんとダブルスを組み金メダルを獲得している。
アテネ・パラリンピック金メダル・齋田悟司選手(52)
「速いですねサーブも。165キロでしたね。トップクラスだと思います。ナンバーワンに近い」
“誰にもできない”高速サーブを身につけていた。さらに、肩甲骨まわりの柔軟性は、車いすの加速にも大きな影響を与えるという。
アテネ・パラリンピック金メダル・齋田悟司選手(52)
「肩甲骨をしっかり引いて走ることをすごく意識しています」
「腕の先には肩甲骨があります。肩甲骨がうまく引けて押し出せると、いいプッシュができる」
実はこの柔らかさが、大会中によく見られた小田選手の独特な、積極的に前に出るプレースタイルを可能にしているという。ただ、リスクがあるため、世界では珍しいという。
アテネ・パラリンピック金メダル・齋田悟司選手(52)
「車いすはジャンプができず、打点も低いので頭を抜かれやすい」
では、なぜ独自のスタイルを貫いているのか。
アテネ・パラリンピック金メダル・齋田悟司選手(52)
「(コートの)後ろでのつなぎあいよりも、スリリングなテニスをすることで、見ている人を楽しませたり、車いすテニスの新たな進歩」
さらに小田選手の強さを後押ししているのが、特注の車いすだ。
7日、静岡・浜松市にある小田選手の車いすを製作する「橋本エンジニアリング」で見せてもらったのは、小田選手が14歳の頃から使っていたという車いす。
そこには、こんなこだわりが。
小田選手の車いす製作
「左足をぐっと後ろに下げて、操作したいという要望があった」
不自由な左足を後ろに下げるために、フレームの一部を取り外し、座面も8センチほど切りとった。さらに、小田選手の車いすについて、「『サーブを打つときに背中が当たって痛いので、低くできないか』ってことで限界まで低くした」と話す。
こだわったのは座面や背もたれなど主に6か所。10回以上試作や改良を繰り返した車いす。およそ1年ほどかけて完成したという。
自分流のテニスを貫いた小田選手。「僕の目で見たその時の景色っていうのが、金メダルというのもそうだし、憧れてきた選手と横にいて僕が真ん中にいるっていうのが、マジなんともいえない」と話す。
(9月8日放送『真相報道バンキシャ!』より)
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