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高齢化で増える認知症 “特徴的な行動”背景には不安が…数値化し分析・症状改善へ

日テレNEWS NNN / 2024年9月14日 19時7分

日テレNEWS NNN

16日は敬老の日です。高齢化で増える認知症。認知症の人のさまざまな行動の背景には不安などがあるとして、それを取り除くことで行動を改善する取り組みを取材しました。

佐藤さん(93・仮名)

「すそのね、縫い目があるでしょ、横の。そこをあわせるの」

東京・文京区にある特別養護老人ホーム「文京小日向の家」(社会福祉法人奉優会)。ここで暮らす93歳の佐藤さん(仮名)は認知症ですが、洗濯物をたたむ役割を担い、職員との会話もはずみます。

文京小日向の家 ケアマネジャー・勝俣洋子さん

「ありがとうございます。きょうもたくさんやっていただいて」

実は佐藤さん、ここに入居した去年夏は食事も水分もとらず、職員を困らせたといいますが、ある取り組みで生活が落ち着きました。

その取り組みは、東京都が進めている「認知症ケアプログラム」(日本版BPSDケアプログラム)です。BPSDとは「認知症の行動・心理症状」のことで、具体的には暴力、暴言、徘徊、抑うつ、不安、幻覚、睡眠障害などです。

こうした行動や症状は「問題」だととらえられ、周囲は、行動そのものを変えさせようとしがちですが、背景には、不安や困りごとなどがあり、行動や症状はそれを表す「SOS」のメッセージなのだというのが、このプログラムの考え方です。そのメッセージを読み解き、背景にある不安などを取り除くことで行動の改善をはかります。

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このプログラムは、まず、認知症の人を観察し、不安や興奮などの行動心理症状を「数値化」するのが特徴です。その後、背景にあるニーズを「分析」。次に、不安を取り除いたり、ニーズを満たしたりするための「ケア計画」を作って「実行」するのが一連の流れです。定期的な職員の会議で再度「数値化」し、そのケアが適切だったのかを振り返り、ケア計画を練り直す、を繰り返していきます。

評価会議をみてみると…。

勝俣洋子さん

「その利用者さんは、『自分が家族にとってお荷物だ』とか、『自分はいないほうがいい』などといいますか」

介護職員・深澤拓也さん

「最近はないですね」

東京都医学総合研究所が考案した質問に、介護職員が日頃の観察をもとに答えていきます。それを専用のシステム(DEMBASE)に入力すると、行動心理症状の総合点が出ます。質問には、不安や妄想、うつ、不快などの項目があり、「利用者さんは泣きますか」「その頻度は?」となど細かく聞いていきます。

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佐藤さんは、ここに入居した去年7月には、この数値が32ポイントでしたが、職員が耳の聞こえにくさに配慮してケアをしたところ、今年3月にはわずか3ポイントにまで改善。しかし、8月には再び14ポイントになっていました。

その背景として、新しい職員が来たことや戦争の報道を多く見聞きして不安が増したのでは、と推測されました。職員が「自分たちができることは何か?」を議論した結果、佐藤さんは左耳のほうが聞こえやすいのではと仮説をたて、左耳にむけて話すよう、職員全体で徹底。すると、約1か月後の9月13日、2ポイントにまで改善していました。

このプログラムには、困りごとの原因を探るための質問もあります。食事や水分量は足りているか、排便、視覚、聴覚、血圧についてや呼吸は苦しそうか? 体の痛みがありそうか? 処方薬の見直しは? といった項目に、職員が答えていきます。

今回の会議では、佐藤さんの困りごとは特に排尿と聴覚だと確認でき、職員たちは、左耳への語りかけと声のトーンも低めにすることを続けようと確認していました。

深澤拓也さん

「落ち着いてこられたと数値でも出ているので、わかりやすいし、ご本人の様子をみても、はっきり改善がわかるので、このシステムが導入されてよかったなという感じですね」

勝俣洋子さん

「数値で視覚化できるので、介護職員が当たり前のようにおこなっているケアについて、これでいいんだとか、この方が求めていたのはこれだったんだと確認でき、自信を持てるので、このプログラムはすごくありがたい」「左耳への語りかけというと、大きいことではないんですが、そうした細かいことを観察していくことかなと。何に困っているか、ご本人もわからない場合もありますし」「思いがけない原因が思いがけない行動を起こすということがありますので、その原因が何かというところを私たちが見極めていく、ご本人の一番困っているところをうまく私たちが助けてあげれば、お気持ちも落ち着いていくと考えています」

■東京都が推進 国も…

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東京都が2018年に普及を始めたこの取り組み。小池知事は8月23日の定例会見で「一人一人のニーズにあわせたケアをおこなう、国際的にも貴重なプログラムだ」と述べました。

今年3月の事例報告会で共有された例は、デイサービスに通うAさんは、自分用の送迎車が待ちきれず、別の車に乗ろうとしました。職員は、「ほかの利用者が次々に帰る中、取り残されるかもという不安があるのでは」と考え、他の利用者と一緒にソファに座って待ってもらう形にしたところ、行動は解消。

Bさんは、デイサービスでの食事や入浴を「お金がないから」と拒んでいましたが、お金のやりとりが目に見えず不安なのでは、と考え、Bさん専用の食事券などを作って渡すと、安心して利用するようになりました。

今年度、こうしたプログラムは全国でも導入が始まり、条件を満たせば介護報酬が加算されます。行動の背景にある不安や困りごとに寄り添って、改善をはかる取り組みが広がっています。

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