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考えてみよう!HPVワクチンの接種

日テレNEWS NNN / 2024年9月16日 19時45分

芦屋市の髙島市長と稲葉可奈子医師

来年3月に期限をむかえるのは子宮けいがんを防ぐためのHPVワクチンのキャッチアップ接種。正しい情報を知り、接種をするか今一度考えてほしいと、キャッチアップ世代と同年代の市長自ら、産婦人科医に話をききました。

■正しく知って、考えよう

子宮けいがんを防ぐためのHPVワクチン。政府が積極的勧奨を中止した期間に接種できなかった世代(1997年~2007年度生まれ)の女性への公費でのキャッチアップ接種は来年3月で終了します。期間内は、通常10万円ほどかかる接種を自己負担なしで受けられますが、9価のワクチンを3回打ち終わるには、9月中に1回目の接種をする必要があります。

「接種について今一度考えてほしい」と訴えるのはキャッチアップ接種の対象と同世代、現在27歳の兵庫県芦屋市の高島崚輔市長。自身の周りでも子宮けいがん一歩手前で見つかった人がいたことから、HPVワクチンについて正しい情報を知ってもらうための発信を続けています。キャッチアップ接種の終了を前に、あらためて接種について知るきっかけを作れたらといいます。今回は、長年HPVワクチン接種の啓発に取り組んでいる産婦人科医の稲葉可奈子先生に話を聞きました。

■HPVワクチンの効果は?大人が打っても意味あるの?

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高島市長「改めて、HPVワクチンについて、いろんなことをぜひ専門的な観点からうかがえればと思います」「そもそもHPVとは何ですか?」

稲葉医師「HPV、ヒトパピローマウイルスは主に性交渉で感染するウイルス。今の日本だと8割くらいの方が一生に一度は感染するウイルスです」「誰が持っていてもおかしくないし、感染してもおかしくない。HPVに感染していることは珍しいことでも、恥ずかしいことでも、特別なことでもないんです」

高島市長「特殊な場合のみ感染すると思いがちだけど、そうじゃない」

稲葉医師「その(感染した人の)中で運悪く、例えば女性だと子宮の入り口のけい部のところの細胞に異常が出ることがあって、それが子宮けいがんなどの原因になります」「“予防ができるがん”は感染症が原因のがんか、生活習慣が原因のがん。生活習慣をパリッと変えるのは人間なかなか難しいですけど、感染症を防ぐことはできる」

高島市長「なるほど。そのウイルスの感染を防げるのがHPVワクチン」

稲葉医師「大事なポイントで、ワクチンっていろんな効き方があるんですけど、HPVワクチンは“新たに感染するのを防ぐ”効果がある」「もし接種する時に何らかのHPVに感染していたとしたら、それに対しては特に効果はないので、初めての性交渉よりも前に接種するのが一番有効性が発揮される」

高島市長「すでにHPVに感染している人にはワクチンは意味がない…?」

稲葉医師「いい質問ですね。女性が今接種できる一番有効なワクチンが9価、9種類のHPVの型の感染を防ぐことができる。9種類全部に感染している方ってまずいない」「すでに性交渉の経験があるキャッチアップ世代の人もたくさんいると思う」「もし何か1つ2つの種類に感染しているとしても、それ以外のHPVの新たな感染を防ぐことができるので十分に有効」

高島市長「たとえ性交渉の経験があって、HPVに感染していたとしても、ワクチンの意味がないってことではないと」

稲葉医師「絶対に意味があります」

■キャッチアップ世代がいるのはなぜ?

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高島市長「キャッチアップ接種とは」

稲葉医師「2013年に定期接種になったあたりで、接種した後に例えばしびれが出るとか、歩けなくなったとか症状を訴える方がいて、それがセンセーショナルに報道されました。それを受けて厚生労働省が積極的に接種をおすすめすることを、安全性が確認されるまでの間、一時的に差し控えます、としたんですね」「個別通知や予防接種のお便りを(接種対象者に)送らないようになった。その通知が届かないからHPVワクチンを無料で打てる時なんだということに気づかない、報道のイメージで何かちょっと危ないワクチンみたいな感じで打たなかったり」「もともと70パーセントくらいあった接種率が、0.6パーセントまで下がってしまった」「その後国内外の研究で安全性が確認されて、積極的勧奨が2022年度から本格的に再開したんですけど、その間接種の機会を逃してしまった方たち(1997年~2007年度生まれ)に無料で接種できる特例をもうけていて、今が最終年度です」

高島市長「効果は理解できたんですが、キャッチアップ接種が始まった経緯もいろいろ健康上の問題みたいなものがあったところからスタートしている。ここはやはり不安って思う声も多い。実際どうなんですか?」

稲葉医師「ワクチンに限らず、あらゆる医薬品を摂取した後におこる好ましくないことはいったん”有害事象”なんです。例えば病院で予防接種を受けました。その帰りに石につまずいてけがをしました。これも有害事象」「ワクチンと因果関係があるかどうかは、大規模に疫学調査をしたとき、接種した人と接種していない人で、その(症状などの)発生頻度に差があるかどうか見て、もし明らかに有意な差をもって接種した群に多ければ、それはワクチンが原因という可能性があると。そこに差がなければ、つまり接種していない人たちでも同じぐらいの頻度でそういうことが起こるということは、接種が原因とは言えないっていう判断をするんですね」「じゃああの症状はなんなの?って気になると思うんですけど、多くは”機能性身体症状”と説明されています。私たち人間は思っている以上に心と体が密接に関連する生き物。何か心に負荷がかかったときに、思いもよらない身体症状として表れることがある」「一部、予防接種関連ストレス反応というISRRという概念があるんですけど、接種の時の不安とか痛みがきっかけで動悸がしたり過呼吸になったりなどの症状が出る方もいますが、(有害事象が起きる頻度に)有意差がないということは(接種後の症状の多くは)機能性身体症状で、一部がISRRだろうというふうに言われています」

■接種は必ず3回必要?検診との兼ね合いは?接種券は?

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高島市長「3回打つ、とはどういうことですか?3回打って初めて効果が十分になるということ?」

稲葉医師「1回打つだけでもある程度の効果はあって、その残りはブースト(注:効果を後押しする)みたいな感じです」「1回でも打たないよりは打っている方が圧倒的に効果はあります」

高島市長「基本は3回打ち終わるには半年かかると思っていた方がいいですよね」(※9月に1回目の接種をすれば、無料で接種可能な今年度中に3回打ち終えることが可能)

稲葉医師「そうですね。でも10月に入っちゃったからもう諦めるとかじゃなく、1回2回打つだけでも打たないより圧倒的に効果はあるので、諦めずに接種しに行っていただければ」「接種券がないときは住民票がある市区町村の保健所に連絡すると再発行してもらえるので、早めに接種券の確認をして、(クリニックなどに)予約をとって行ってほしい」

高島市長「たまにワクチンを打っていたら子宮けいがん検診を受けなくてもいいという声も聞きますが、どうなんでしょうか」

稲葉医師「両方大事で、9価のワクチンで、リスクの高いHPVウイルスのうち7種類を予防できるので(注:残りの2種類は性器のイボなど性感染症をひきおこす)、子宮けいがん全体の9割以上くらいは予防できますが、残りの1割のウイルスどうしても予防できない。そこについては検診を受けましょうということです」「子宮けいがんは、がんになる手前で見つけることができる。でも前がん病変でみつけることができればいいというものでもなく、その段階でも女性にとっては苦痛や負担をともなうものなので、それを防ぐことができるのはHPVワクチンだけなんです」

■接種をするか、決めるのは自分

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高島市長「中高生と話すことがあるんですが、自分では色々情報を調べて“打ってもいいかな”と思っているけれど、親御さんが“危ないんじゃないの?”と話されるケースもある」

稲葉医師「親御さんは11年前の報道を覚えているので不安になって当然。でもHPVワクチンは娘さんご本人のためのものなので、自分の身体、未来のことだから自分の考えに自信を持っていい」「(親御さんと)一緒に婦人科に行って話をきくのがいい」

高島市長「(婦人科の)先生を頼っていいということですよね」

稲葉医師「全然いい。迷ったら相談して下さい」「予防接種は16歳以上なら自分の同意だけで接種できる。キャッチアップ世代の方はもう成人されている方もいるので。自分で判断して、でいいと思います」

■今一度、自分で考えてほしい

稲葉医師「子宮けいがんは人類が初めて制圧することができるがん。HPVワクチンも子宮けいがん検診も、大きな負担なく予防策をとることができるのに、ちゃんと伝わっていないという理由で、子宮けいがんになる女性が減っていないのは産婦人科医として心苦しいです」

高島市長「最終的には自己決定なので、私が市長として打ちなさいと言いたいわけではない。一方で“知らなかった”という子が本当に多くて」「知らなかったら、(HPVワクチンの)善し悪し比べるとか、自分にとってどうかって考えるとかできないと思うんですね。とにかくまず知ってほしいと思っている」「こういう話をすると、同世代から結構連絡をもらって。実はワクチンを受けられなくて、結果的にがん一歩手前の状態になって病院に通っているというような人が身近にいたこともありました」「安全だから安心して、と言われても・・・という気持ちもよくわかります。だからこそ、まずはエビデンスを踏まえた専門家の声を知ってもらいたい。市民の命を守る市長の立場として、エビデンスに基づいた専門家の声を広く伝える責任があるんじゃないかと思っています」

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