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「植田ショック」後、市場との対話は?自民党総裁選と利上げの行方

日テレNEWS NNN / 2024年9月21日 8時2分

日テレNEWS NNN

――ここからは日本銀行の植田総裁の記者会見について、経済部の宮島(香澄)解説委員とお伝えします。たった今植田総裁の記者会見が終わりました。どんな内容でしたか?

20日は非常に慎重な印象を持ちました。声の力が、前回よりなかったという印象を持ちましたし、体調大丈夫かなという気までしてしまいました。

前回、7月利上げに踏み切って、その後、円高と株安が大きく進み「植田ショック」と言われるような状況になりました。

それもあってか、今回は非常に慎重な物言いをしていると感じました。

■植田総裁会見のポイント

――それでは会見のポイント、お願いします

20日の会見の中身です。

まず、金融政策は、政策金利を据え置き、現状維持です。市場の動向や経済・物価への影響を十分注視すると声明文に書かれました。会見で総裁は「高い緊張感を持って見る」と言いました。それから、為替の変動が過去に比べて物価に影響を及ぼしやすくなっていると。

以前、為替の変動を日銀はあまり考えてないんではないかと批判を受けたこともありまして、日銀もちゃんと見ていきますよということです。「日本経済のいまの状況は見通し通り推移している」「この見通しが実現していけば、金利は引き上げていく」という、これまで通りの姿勢は示しました。

ただ、皆が気にしてるのは金利の引き上げのペースで、会見では「市場が不安定」「アメリカの経済の先行きが不透明」だということを何度か話しました。

印象としては、前回のように、この後さらに金利をどんどん上げていくという印象ではなく、慎重にやっていくというメッセージに見えました。そして、市場とのコミュニケーションが十分ではなかったという批判があることに関して、「情報発信を丁寧にする」と話しました。全体として、もうすぐに金利を上げるという強気な感じではなく、慎重な印象でした。

――それでは会見を受けてのいまの円相場を見ていきましょう。現在、143円35銭から37銭ですね。

総裁会見が始まる前は141円90銭台でしたので、1円40銭ぐらい円安に進みました。

日銀の政策がお昼頃に発表されたときには、変わりはなく、その後ちょっと円高になったくらいで、大きな変動はなかったんです。この総裁の会見を通じては、1円40銭近く円安に向かったということです。

日本時間の19日、いよいよアメリカが利下げを開始して、為替の動きはすごく注目されました。利下げが発表になった直後は、一気にドーンと円高になったんですけれども、その後は徐々に円安に向かいました。

この9月のアメリカの利下げというイベントは、投資家にはもうしっかりと織り込まれていたということです。

20日の日銀総裁会見でさらに円安になったという状況です

■株価の乱高下とコミュニケーション

――会見でも少し触れられていましたが、前回7月の日銀の決定会合の後、株式市場は急落、乱高下する事態となりましたね。

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7月末の日銀の金融政策決定会合で利上げを決めた後、円高になり、日経平均株価は8月1日から5日までの間に7600円以上も値下がりしました。その後も前の水準には戻ってはいません。

このときは日銀が、コミュニケーションに失敗したと言われました。「植田ショック」と呼ばれる事態になってしまった。

前の黒田総裁は元々サプライズが好きで、市場を大きく動かすことに躊躇はなかったんです。でも植田総裁は就任以降、丁寧に市場と会話をすると、市場が安定することが日本経済にとって良いんだと、丁寧なコミュニケーションを心がけていたと思います。

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ところが、4月の会見で、記者との会話の中で、そのとき問題になっていた円安の是正に日銀が動くつもりがないと受け取られました。為替は日銀の政策の直接のターゲットではないですが、会見のあと円安がどんどん進み、政府の為替介入につながりました。総裁と岸田首相との会談もありまして、日銀まずかった、という感じになりました。

次に7月です。このときは追加の利上げをしましたが、その後の会見が、その後も金利を上げていくぞと「タカ派」の印象を与えたんです。アメリカの経済指標が弱いなどの要因もあって、急激な円高と株安が進みました。総裁が、国会の閉会中審査に呼ばれるということにもなりました。

――なかなか日銀の真意が伝わらなかったっていうことなんですかね。

植田さんは、20日の会見でも、批判があるのは承知していると。

■日銀に必要な3つのコミュニケーション

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日銀は、主に3つの相手とうまくコミュニケーションを取る必要があると思います。

まず、市場とのコミュニケーション。20日のやり取りでもあったように投資家や記者に真意がうまく伝わらなかったいうことが総裁の口からも出ていました。

それから、政府や政治とのコミュニケーション。円安が進んだのは日銀のせいだと見られるような状況にもなりましたし、政治家からバラバラに様々な、金融政策についての発信もありました。国会にも呼ばれたということで、政府や政治とのコミュニケーションもうまくとれなかったと言えると思います。

もう一つ、世界の金融の中も、やはりコミュニケーション大事なんです。8月下旬にあったアメリカのジャクソンホールでの会議を植田総裁は欠席しました。これは国会に呼ばれた日と重なっているんですけれども、国会に呼ばれる前にもう欠席が決まっていました。体調が良くなかったという話もあります。このときは、日本の為替介入や利上げについて国際的にも関心を持たれていましたので、説明するチャンスでした。アメリカの利下げを前にどういう状況なのかと、国際金融のトップの人たちと話をして情報を仕入れるチャンスでもあったんです。ところが欠席ということで、国際金融でのコミュニケーションもあまりうまく取れてない状況になっています。

――なかなか各方面でコミュニケーションがうまくいっていないように見えるということですね。

植田総裁が大事だと言っていたコミュニケーションが4月以降は各方面でうまくいってないと。20日の会見でも、情報が十分じゃないぞという印象を持つ記者から質問が飛んでいました。

■今後の利上げ、いつ?どこまで?

――それでは、今後の利上げについて見ていきたいと思いますが、まず、この先どこまで上がると見られているのでしょうか?

日銀は、データや状況が良ければ、この後、いわゆる中立金利、景気を冷やしもしないし、加熱もさせない、そこまで金利を上げていきたいという姿勢をとっています。1%近く、少なくとも0. 75%までは上げたいと日銀は考えていると思います。

ただ、0. 75%の前の0. 5%という数字、日本は0. 5%を超える金利をこの30年経験してないんです。ですから、0. 75%になったときにどういうことが起こるか、慎重に見ていくと思います。特に住宅ローンの変動金利に影響するわけですが、30年間金利が低かったので、変動金利を借りている人が多い。金利をあげるとローンの返済が滞る人が出てくるのではないかという心配はあります。企業の業績、賃金にも影響がありそうです。

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――それでは次の利上げの時期についてはどうでしょうか。

いま、自民党総裁選の真っ只中で、ほぼ誰もが金利の引き上げはないと見ていました。次の10月も、まだ政治の嵐の中にあると見られ、追加の利上げはなかなか厳しいかと思います。来週の自民党総裁選で、日銀の政策にそんなに注目が集まっているというわけではないですが、全体としては、大規模な金融緩和から正常化への道筋は理解されていると思います。

ただ、高市さんが総裁、総理大臣になると、安倍政権の路線を継承するとみられます。いまの日銀の利上げは早すぎるという発言もありますので、高市さんが総裁になった場合には、利上げは遠のくと思います。また、どの候補でも経済対策はこのあと力を入れていくと思いますので、経済対策を打つ、それから予算編成をするという12月は、利上げは微妙かなと思います。

市場では12月に次の利上げをするという予測も一定あるんですが、どんな政権ができるか、政権との関係が非常に重要かと思います。

特に、植田総裁は、日銀出身の総裁でもない、財務省がバックにいる総裁でもない学者出身の総裁です。岸田政権の一本釣りのような形で総裁になりました。岸田政権の退陣で、後ろ盾がいなくなってしまうとも言えるんです。そんな中で、この後、植田総裁、植田日銀がどのように政権とのコミュニケーションをとって、足並みを揃えていくか、この後注目するポイントだと思います。

――ここまで経済部の宮島解説委員とともにお伝えしました。ありがとうございました。

(9月20日午後4時頃放送)

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