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被災地を襲った能登豪雨 被害拡大のワケ…「山津波」の脅威とは?【バンキシャ!】

日テレNEWS NNN / 2024年9月30日 9時4分

日テレNEWS NNN

能登豪雨から29日で8日となりました。これまでに13人が亡くなり、4人の行方や安否がわかっていません。29日も朝から懸命な捜索が行われました。今回、石川・輪島市の集落を襲ったのが、「山津波」とも呼ばれる大規模な土石流です。バンキシャ!が取材すると、現場にあった“あるもの”が山津波による被害を拡大させたとみられることがわかりました。(真相報道バンキシャ!)

   ◇

能登を襲った豪雨から、29日で8日。

バンキシャ!

「手探りの捜索が続いています。1個1個流れてきた木を取り除きながらの捜索です」

「流木を運んで何か手がかりがないか、土の中を探そうとしています」

この周辺で安否がわからなくなっている、中学3年生の喜三翼音さん。懸命の捜索活動が続けられている。

28日、石川県輪島市の捜索現場には、翼音さんの家族の姿があった。警察や消防とともに娘を探す。翼音さんの祖父も捜索に加わっていた。そのさなか…。

翼音さんの祖父

「あぁそれ! すごいね、なんか」

「こういうふうになってる。これ大事にしてると言っていた」

河口の近くで見つかった家族写真。翼音さんの妹の生後100日を祝い、去年、撮影したものだという。制服姿でほほえむ翼音さん。

翼音さんの祖父

「ありがたいです。その一言です。思い出の写真だから。これを飾ってましたからね。一番いいところに」

今、家族の願いは1つ。

翼音さんの祖父

「1日でも、1分1秒、早く見つけてほしい願いだけなんです。日にちは関係ないんです。とにかく早く見つけてほしい。たとえ1か月たっても思いは変わらないと思います」

「早く見つかってくれ、早く見つかってくれ。そういう思いでこの1週間来ています」

翼音さんを含め、行方や安否がわからないのは4人(死者と重複の可能性)。亡くなった方は13人にのぼっている。

   ◇

輪島市と能登町では28日、新たに2人の遺体が見つかった。29日、そのうちの1人が輪島市の中村菊枝さん75歳と判明した。1人で自宅にいたところを濁流に襲われたとみられている。

珠洲市でも死者が。旅館を営んでいた池田幸雄さん70歳。妻の真里子さんと旅館にいたところを濁流に襲われた。

池田幸雄さんの妻・真里子さん

「本当の鉄砲水。後ろを振り返っている余裕もないときにザーっときて。私はなんとか止まったけど、お父さんは、松の木の下あそこの間にちょうど止まっていて。つかまえようと手を伸ばして10センチくらい(で届く)時に、また後ろから鉄砲水がきて、そのまま…」

旅館は1月の地震で半壊。それでも幸雄さんは再開を誓い「15年は続ける」と意気込んでいたという。

池田幸雄さんの妻・真里子さん

「人が喜ぶ顔を見るのが好き。生粋の商売人みたいな感じ」

「(仕事で)3日4日いないのは当たり前だったから、また『ただいま』って戻ってくるかなと思いながらおるけど…」

   ◇

27日、バンキシャ!が向かったのは、豪雨の爪痕が残る石川県輪島市の久手川町。

バンキシャ!

「木がすごい」

「車…ここまで、ひしゃげているとは」

ここでは2人が亡くなり、今も中学3年生の喜三翼音さんを含め、2人の行方や安否がわかっていない。

喜三さんの自宅があるこの集落は山に囲まれ、塚田川沿いに家が点在している。集落全体で4軒の住宅が押し流された。

高台にある団地と目の前を流れる川。橋を渡った先に、喜三さんが住む白い壁の家があった。

なぜ、住宅は流されてしまったのか? バンキシャ!は、当時を知る人の証言や入手した動画を分析。さらに専門家の現地調査に同行し、検証した。

当時、集落にいた住民は何を目撃したのか。

住民

「すごいバキバキいっていた。水もあっという間に増えて、川じゃない所も川になった」

住民が撮影したという21日午前9時半頃の映像には、平年の9月1か月分を超える雨量がわずか3時間で降り、川は激しい濁流に。この水位になるまで「あっという間だった」という。

こちらの住民も「川の量がいっぱいになっている感じで、ちょっと目を離した隙に急に田んぼの方へ、奥の方に流れていっている」と話す。

水位の上昇はどれほど早かったのか。住宅が押し流されたエリア、川を挟んだ高台には団地がある。そこで撮影された映像を時間ごとに見てみる。

まずは午前9時4分。映像の手前の川は増水しているが、川沿いの道路にはまだ水が来ていない。

しかし、その20分後の9時24分には、上流からの流れが激しくなり道路は冠水。

さらに、その9分後の9時33分になると、川や道路の堺目がわからなくなり、一帯が大きな川のように。

濁流が押し寄せた先の家は、1階が完全に水没していた。道路の冠水が確認できてから一帯が水没するまでわずか9分間の出来事だった。

まさに、同じ頃、家に残っていた喜三翼音さんは午前9時36分から同級生とメッセージのやりとりをしていた。

午前9時44分

同級生「なんか浸水しとるらしいよ」

午前9時47分

喜三さん「うちの家もう出れんよ」

午前9時50分

同級生「はのんの家でれないじゃん」

やりとりが始まって20分後の9時56分。

同級生「じゃぁ、土砂なくなるまで家から出れないんじゃ」

喜三さん「たぶんそう?かも」

このあと、同級生が10時5分に送ったメッセージに既読はつかなかった。

同じ頃、下流に住む住民は、喜三さんの家が流されているのを目撃したという。

住民

「10時頃が(雨の)ピークで上流から流木がドーッと流れてきて、それが流れた後にすぐ家の残骸みたいのがドーッと流れてきた」

「白い壁の屋根」

なぜ、住宅を押し流すほどの濁流となったのか。土砂災害に詳しい、専門家の東京農工大・石川芳治名誉教授とともに現場へ。喜三さんの家から100メートルほど上流では――。

バンキシャ!

「あのあたり、非常に大きな岩がある」

東京農工大・石川芳治名誉教授

「上から流れてきたんだと思います」

専門家は、ここ特有の地形が影響したという。

東京農工大・石川芳治名誉教授

「ちょうどこっちが山なので、(川幅が)かなり狭くなっています。狭窄(きょうさく)部といいますけど。(川幅が)狭くなっているので、水の流れも集中して強くなります」

川幅が狭くなり、流れが集中したことで「ある現象」が起きたと指摘する。

東京農工大・石川芳治名誉教授

「一気に水位が上がる、津波のように押し寄せるということで、“山津波”という言葉が使われてます」

これは10年前に撮影された“山津波”の映像(提供:国土交通省多治見砂防国道事務所)。上流で崩れた土砂が大量の水とともに津波のように押し寄せる。これが“山津波”だ。

東京農工大・石川芳治名誉教授

「ここに見えるのが橋ですね。パイプが見えるのが橋、詰まってしまっている」

バンキシャ!

「橋の上流側に大量にたまっています」

橋で流木などがせき止められると、何が起きるのか。

これは川と橋を模型で再現した実験(2017年7月取材 東京理科大学・マルチハザード都市防災研究拠点・二瓶泰雄教授)。流木に見立てた木の枝を流すと橋げたに引っかかり、次々とたまっていく。水位もどんどん上昇し、行き場を失った水はあふれて、新たな流れができた。

当日の21日午前9時半頃に撮影された映像には、橋に流木などがぶつかって、濁流は喜三さんの住宅の方に流れを変えていた。流れを止めていた橋には大量の流木が積み重なり、本来は橋の下に川が流れるはずが、横から新たな流れができていた。

同じ状況は上流でも。

バンキシャ!

「これ高さ何メートルですかね」

東京農工大・石川芳治名誉教授

「背の高さで私がだいたい1.8メートル。倍の4メートルくらいあります」

さきほどよりも大量の流木が橋でせき止められていた。

住宅のすぐ近くにある橋。ここでも橋が流木などをせき止めたことで、新たな流れが発生し、住宅を直撃していた。

では、橋をふさいだ大量の流木はどこから流れてきたのだろうか。上流に向かうと、所々で木が倒れていた。

さらに、集落から1キロほど進むと。

バンキシャ!

「こちら斜面が大きく崩れています」

山の斜面が大きくエグられた現場を見つけた。専門家はここが流木の発生源のひとつだという。

東京農工大・石川芳治名誉教授

「小さな丘に亀裂やひび割れが起こり、それが原因で起こることもある。能登半島地震の影響もかなりあると思います」

地盤の緩みも土砂が崩れた要因とみられるという。専門家はこうした山あいの地域での注意点をあげた。

東京農工大・石川芳治名誉教授

「特に急勾配の小さな川については、家に水が入ってきたら家が流される可能性が非常に高い」

川の増水が始まる前に避難することが重要だとしている。

(9月29日放送『真相報道バンキシャ!』より)

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