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旧優生保護法 補償の新法成立へ 残る課題は…

日テレNEWS NNN / 2024年10月8日 7時34分

日テレNEWS NNN

旧優生保護法のもと、障害などを理由に強制的に不妊手術や妊娠中絶手術を受けさせられた被害者の救済のための新たな法律が、8日にも国会で可決、成立します。これにより、不妊手術の被害者に国が1500万円支払うなど補償が行われます。しかし手術を強制された被害者全員に補償などを届ける具体策は決まっておらず、証拠が少ない場合の申請の支援など重要な課題は残されたままです。

■旧優生保護法のもと強制された不妊手術や中絶手術

1948年に制定され、1996年まで施行されていた旧優生保護法のもとでは、一部の病気や障がいなどがある人に対して、本人の同意がなくとも強制的に不妊手術や人工妊娠中絶手術をおこなうことが認められていました。厚生労働省が把握した統計によると、不妊手術を受けた人はおよそ2万5000人、中絶手術を受けた人はおよそ5万9000人と言われています。

■認められた国の過ち 補償の新法はきょうにも成立へ

今年7月、最高裁判所は、障害がある人などに不妊手術を強制したのは違憲とする判決を出しました。その後、超党派の議員連盟が被害者救済のためにまとめた法案は、不妊手術を受けさせられた本人には補償金1500万円、配偶者(手術を理由に離婚した場合含む)に補償金500万円、中絶手術を受けさせられた人には一時金として200万円を国が支払うといった内容です。新たな法律は8日にも参議院本会議で可決、成立する見通しです。しかし、補償金などを被害者全員に届けるための具体的な施策はまだ決定されていません。

■既存の一時金制度では相談数と請求受付数の差が…

今回の法律が成立する前、2019年には旧優生保護法の問題をめぐり、強制的に不妊手術を受けさせられた人に一時金を支給する法律が国会で成立し、施行されました。都道府県の窓口などで一時金を請求し、認定された場合、国から320万円の一時金が支払われます。(強制中絶手術の被害者は対象にならず)しかし、実はこの制度、相談件数と実際に請求が受け付けられた件数には開きがあるのです。

こども家庭庁の調査によりますと、今年9月1日までに行われた一時金支給に関しての相談は8248件、一方、請求受付件数は1365件で、相談数のおよそ17パーセント程度で、5人に1人にも達していません。請求受付件数が少ないことについて、優生連の利光恵子共同代表は以下のように指摘します。「ある原告は、提訴のときに診断書をもらうため、診療所をおよそ40件まわったが診断書は書いてもらえなかった」「あちこち回るほどの熱意を維持することは難しく、1~2件回り、断られてしまったら、あきらめてしまう被害者の方も多くいると感じる」

■相談がどれほど支給に結びつくか地域差が大きい

そして、関係者が特に問題だと話すのは、相談件数と請求受付件数の差が地域で異なることです。例えば、山形県ではこれまでに相談件数は99件、そのうち請求が受け付けられた件数は54件、と約55パーセントが請求の受付にいたっていて、茨城県でも相談件数が104件、請求受付件数は56件とこちらも半数以上です。しかし、福島県では相談件数は516件、受付件数は38件でおよそ7パーセント、宮崎県では相談件数293件に対し、受付件数は14件で5パーセント以下です。

地域ごとに異なる現状について関係者はこう指摘します。「一時金支給は、医師の診断書などの客観的な資料だけでなく、施設の関係者や近隣住民の証言、当時のメモなどでも申請が認められることがある」「しかし、個人で証拠を集めることが困難な人などは、相談をしても窓口の対応によっては、申請をあきらめてしまう場合もある。地域による窓口の対応の差が、被害者が一時金を受けとるかに影響している」

これに関して利光共同代表は「窓口での対応が申請の大事なポイントになってくる。いつ優生手術を受けたか曖昧な状態や漠然とした状態で窓口に相談に行く人も多く、正確な情報を持っていく人は少ない」「曖昧な形でも、窓口の人がいかに親身になって相談にのってくれ、申請のための情報を集めるために必要な情報を伝えてくれるかが重要」と訴えています。

■新法成立しても 中絶被害者は証拠集めが困難

8日にも成立する新法では、中絶手術の被害者にも200万円の一時金が支払われますが、この認定にも難しさがあると関係者は指摘します。「手術の痕が残る不妊手術と比べて、中絶手術は痕が残らず、客観的な資料が少ないことも多い。個人で証拠を集めることがさらに難しくなる」。利光代表は「自治体側がこれまでの優生手術についての情報を調べることが必要。自分の地域の実態を調べておくことで相談があった時に、自治体側が参照する情報になり、申請がスムーズに行いやすくなると思う。国は通知などを出し、行政側に必要性を伝えてほしい」と話しています。

■弁護士会などが無料サポートへ

国は、今回の新しい法律の制定にあたり、全ての被害者に対する補償の実現に向けた施策の実施に全力を尽くすと、原告団らと締結した基本合意書の中で述べています。新しい法律には、全ての被害者に対する補償を実現するため、「弁護士会等による請求をサポートする仕組みを活用する」などと盛り込まれました。

関係者によりますと、このサポートは無料で受けられる予定で、都道府県の窓口などに申請者からの申し出があり、客観的な資料が少ないなどの場合、各地の弁護士会から、登録された専門家である弁護士が紹介される仕組みが検討されています。

■全ての被害者に補償を届けるために

戦後最大の人権侵害とも言われる旧優生保護法が制定されてから76年。国が原告団らが締結した基本合意では、補償の周知などについて、原告団などと定期的な協議の場で具体的な施策を決めていくとされています。

今後、客観的な証拠が少ないとみられる中絶手術の被害者が対象に加わることもあり、今の一時金支給制度のような環境では、すべての被害者に補償金や一時金を届けることは難しい状況です。国には非常に大きい課題が残されています。

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