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介護離職を減らすための備え 個人や職場ができる具体策は

日テレNEWS NNN / 2024年10月13日 7時0分

日テレNEWS NNN

家族の介護を理由に仕事を辞める介護離職が増えています。仕事を辞めずに介護と両立するためにできることを、自らも介護経験があるワーク・ライフバランス社のコンサルタント、大西友美子さんに聞きました。

■介護は急に始まることも多い

高齢者の元気が徐々になくなり介護が始まると思いがちですが、実は、脳卒中や骨折などで突然介護が必要になることが多いんです。

そして、介護に専念するために退職や休業し、介護が終わったら復帰すればいいと考える人もいますが、介護の期間は平均5年1か月と言われていて、完全に仕事を辞めてしまうと、復帰はなかなか難しいかなと思います。法定の介護休業は93日。足りないという方もいますが、これは、介護と仕事を両立する準備をする期間だと考えてほしい。

まずは、地域包括支援センターに連絡し、介護認定を受ける必要があります。高齢者本人と面談し、要支援や要介護度を決めてもらいます。日程調整も大変ですし、親が「会いたくない」と言うとか、面談で突然、シャキッと元気に回答し介護度が軽めに出て、「いや、本当はもっと重いんです」などと押し問答をしている間に、2、3週間たってしまう。スマホや部屋にとりつけるカメラなどで日常の様子を撮っておき、それを支援センターの人に見てもらうこともおすすめです。

■介護離職するとむしろ心身の負担が増す

介護を理由に離職した人のアンケートでは、経済的負担だけでなく、精神面や肉体面でも負担が増したという回答も多い。仕事との両立が大変と思われるかもしれないが、仕事を辞めると収入がなくなり、一人でいられる時間が少ないなどストレスが溜まる。ですので、仕事を辞めずに、介護の様々な制度を使い、自分のできる範囲内で、介護に携わるのが理想的かなと個人的には感じます。

75歳以上の人のうち、要介護認定を受けた人は3割を超えます。あなたに仮にパートナーがいるとすると両親は4人、その3割だと1.2人、つまり1人は介護が必要になるということです。

同時期に4人の介護が必要になるとか、独身のおじ、おばや祖父母の介護もあり得ます。パートナーがすでに親の介護をしていて、これ以上頼れない可能性もあります。

つまり、誰もが介護の準備と情報収集をしておいて損はないと思います。「こどもに面倒をかけたくないから施設に入る」という高齢者もいますが、実は施設も足りない。希望しても介護施設に入れない高齢者が多くいます。(厚労省調査2022年4月時点、全国で約25万人)

■個人でできることは

とにかく事前準備と情報収集が重要です。親と介護の話をしていますか? 親のかかりつけ医や親しい友人を知っていますか? 親の家のご近所にあいさつし、名刺を渡しておくと万が一の時にご近所の方が気づいて、ご連絡をいただけることもあります。

資産も親が元気なうちに洗い出しておく。認知症になると、パスワードがわからない、銀行名すら覚えていないということも。「もしもの時に役立つ」など市販のノートもあります。実家に行った時に冷蔵庫を1回はあけますよね。親にそうしたノートを書いてもらって、冷蔵庫に入れておく。言いだしにくい場合は「これ、会社の研修でもらっちゃって。書いておいて」と会社のせいにして渡すのもいいと思います。

風邪だと思ったら実は重病のこともあるので、高齢者には健康診断にいってもらう。新しいことを覚えられるうちに、パソコンやスマホをプレゼントし、ペットやお子さんの成長などを写真や動画で見せるのが効果的だともいわれます。家の出入りがわかるように設定し、1日動きがないとわかるシステムもあります。「明日電話しよう」と思っても、それでは「遅かった」ということもある。

そして、お正月などきょうだいが集まる機会に介護の話題を出すことをおすすめします。今後について親の考え、価値観を聞く時間を持つことです。

きょうだい間でもめるのを避けるため、情報を共有することも大切。私はライングループで必ず情報を流しました。姉は海外にいるけど、お金を出し、私は柔軟な働き方ができるので、親の家を訪ねるなど分担しました。

そして介護は、想定外のことが起こるものだと考えていただきたい。一人で抱え込まないよう、事前に調べて、困ったらここに聞くという関係機関の表を作っておくといい。介護について職場の制度も調べてみてください。相談すると、実はこういうサービスがあるよなど教えてもらえることもあります。

■職場でできること

部下が介護が必要になったと言ってきたら、上司は「言いにくいことを相談してくれてありがとう。●●さんの体調は大丈夫? ご自身のケアもしてね」などと言った上で、会社の制度を提示してあげると、部下は活用しやすいかもしれません。仮に介護の経験があったとしても、個別で状況が違うので、「こうしたら」などとアドバイスしてもそれが有効かはわからないです。

まだ介護をかかえていないメンバーが多いとしても、各自、親やおじなど家計図を書いてもらうのはおすすめです。ほかの人に見せなくていいので、誰を介護する可能性があるのか、可視化すると備えになります。

そして、誰もが介護や自分の病気など急に出社できない可能性があると想定し、職場としてはリモート対応を考えておく、引き継ぎしやすいように、日頃から準備することも大切です。

そして私的なことも気軽に話せる雑談の場をリアルでもチャットでもいいので作っておくと、深刻化する前に相談しやすいし、周囲も早めに事情を把握できます。

私がいるワーク・ライフバランス社は、資料とか議事録も常に他の人が見ようと思えば見られる場所に必ず置くようにし、資料なども作り始める段階から共有します。自分が明日急に休んでも仕事が回るか? を考えてみてください。日頃から仕事を属人化させないという文化が重要かなと思います。

■仕事の属人化をなくすには

ワーク・ライフバランス社では、朝出社した時点で、予定とともに顧客の特徴や進捗も共有します。帰宅時には今日の仕事の共有を全員にしますが、そこに結構プライベートの情報も入れます。私も「最近母の引っ越しの準備があって」とか、「土曜日も母の家を訪ねた」などと伝えています。そうすると「今日は早めに帰って大丈夫よ」と気にしてくれたりします。

とにかく、退職を決意してからでなく、介護などの事情について、早めに職場に相談することが大切です。上司は、例えば部下が土日ごとに実家に帰っているのであれば、月曜日遅めに出社でいいよ、などと、部下の健康を考えていただけるといいですね。調整は大変ですが、部下が辞めてしまうよりは、心身とも健康で仕事を続けられることが組織にとってもプラスなはずです。

■誰もが事情をかかえる時代に

働き方全体でみると、人口ボーナス期と人口オーナス期があって、人口ボーナス期は働く世代が多く、高齢者が少なくて経済発展は当たり前、早く安く大量の製品を作る形ですが、この時期は日本では1990年代に終了。今は人口オーナス期で、知的労働の比重が多く、他社と違う価値を生み出すことが重要です。

多様な商品を生み出すには、性別はじめ多様な人が組織に必要です。例えば介護について知っている人がいれば、そのニーズを察知し、必要な商品やサービスを生み出すことができます。

労働力人口が少なくなる中、介護や育児など事情がある人を排除してしまっては、組織が生き残れないので、事情がある人をいかに活用するかが鍵です。以前は、長時間働ける人が主で、子育てや介護など制約がある人が少なく、残業できない人の仕事を長時間働ける人にのせることで仕事を回し、長く働く人を評価する形でした。

しかし、今は男女ともに育児や介護を担い、学び直す人や障害や持病がある方もいます。24時間働ける人に大量の仕事をのせていくと、この人たちが心身の不調に陥り、退職にもつながる、つまり、事情がある人もない人も長時間労働をいかに減らしていけるか、真剣に考える時代になっています。

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