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戦争で兄を亡くしたウクライナ兵 実話を人気の“漫画”に……日本の美大生の挑戦『every.16時特集』

日テレNEWS NNN / 2024年10月26日 14時56分

日テレNEWS NNN

ウクライナで戦う兄弟の姿を漫画で描いているのは、日本の大学生。実話を基にした物語です。モデルとなった元兵士と交流し、作品づくりを進めています。漫画に託した願いとは。未来ある子どもたちに伝えたいことは――。

■日本の美大生が描くウクライナ

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福原恵さん、19歳。都内に住む、美術大学1年生です。高校時代には、初めて応募した国際漫画コンテストで入賞。漫画家になることが、夢の1つだといいます。

そんな福原さんがこの日、向かったのは…

福原恵さん(19)

「ウクライナの食べ物や雑貨の店が出店していると思うので、それを見てみたい」

2024年7月、東京・代々木公園で行われた「第1回ウクライナフェスティバル」は、避難してきた人などが、ウクライナの文化を発信するイベントです。出店を回りながら、しきりに写真を撮る福原さん。

福原さん

「漫画を描く上で、資料集めで写真を撮っています。ウクライナの人たちとあまり会う機会がないので、その人たちがどういう表情をしていてどんな物を売っているのか、そういうところはちゃんと見て、集めておきたいなと思います」

■全10話翻訳してウクライナへ届けたい

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福原さんが描いている漫画の日本語版のタイトルは、「九転十起(キーウテンジッキ)」。

ウクライナの首都「キーウ」と、何度でも立ち上がる、という意味の四字熟語「七転八起(しちてんはっき)」をかけています。

漫画は全10話の予定。完成した後に翻訳し、ウクライナの小学校に無償で提供することを目指しています。

現在、4話目の作画を始めている福原さん。アシスタントの馬場まな実さん(17)と一緒に作っています。

福原さん

「ウクライナで普通に生活していた人が戦争に行くストーリーなので、割と身近に読んだ人に伝えられるかなって」

■元兵士の思い “子どもたちは私たちの未来”

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主人公のモデルは、ウクライナに暮らす、ナザール・グラバーさん(32)。モデルや俳優として活動していましたが、29歳の時に、兄・イリヤさんと一緒に戦場の最前線で戦いました。

2022年12月24日、兄は仲間をかばって帰らぬ人に…。ナザールさん自身も胸を負傷し、今も、後遺症に苦しんでいます。それでも…

主人公のモデル ナザール・グラバーさん(32)

「子どもたちは私たちの未来です。だからできることはすべてしたい」

戦争でつらい思いをしている子どもたちに前を向くための、希望を見つけてもらいたい――

■体験を伝える “人気の漫画で”子どもたちに

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退役後、子どもの支援団体を立ち上げたナザールさん。自身の経験を、ウクライナでも人気の漫画にして子どもたちに届けたいと考えました。

その思いを受け止めたのが、福原さんでした。きっかけは、高校3年生の時に、校内で募集があったことだといいます。

福原さん

「“ウクライナを題材にした漫画を描きませんか” “大募集中です”みたいな。すごい勢いのある募集だなと思いました」

福原さんは、自分でも誰かの役に立てるかもしれないと、後に表紙となる画を描いて、応募。しかし、当時は大学受験の真っ最中でした。

福原さん

「ウクライナの状況は、正直、受験のことで頭がいっぱいで、そんなに把握できていなかったんですけど…」

戦地の状況がなかなか想像できないまま、2024年2月、主人公のモデルになったナザールさんと初めてオンラインで話しました。

福原さん

「ナザールさんは日本のアニメがすごく好きで、そのフィギュアを一生懸命、紹介してくれたのが心に残っています」

そんな、明るく親しみやすい一面を見せてくれた一方で、家族を失う悲しみや苦しさをリアルに感じたといいます。

福原さん

「自分のお兄さんが亡くなったのはすごくショックだと思うので、それを漫画にして子どもたちに届けるというのが…、この状況をどうにか良くしたいっていう熱が伝わってきました」

■挑戦 想像がつかない“戦争を描く”

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漫画のストーリーが書かれた台本が渡され、福原さんは、そこから状況をイメージしながら、キャラクターやセリフなどを作り上げていきます。しかし、実際に始めてみると…

福原さん

「軍隊で使う銃とか爆発物とかドローンとか、私は直接見たことがないので、ストーリーを読んだ時に“爆弾が爆発する”みたいに書いてあったんですけど、私の中では全然想像がつかなくて」

戦争を知らない自分たちは、武器の形も、その影響力も知らない。福原さんはナザールさんに教えてもらいながら作業を進めていきます。

福原さん

「銃って床に伏せて撃つイメージがあったんですけど、立って大きい銃も撃つんだな」

平和な日本では知り得なかった、戦地の状況。それでも、福原さんは、こだわって描いている部分があるといいます。

■キャラクター“表情”にこだわるワケ

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福原さん

「私はキャラクターの表情を描くのをすごくこだわっていて」

例えば、兄・イリヤが家族を守るために戦地へ行くと、決意するシーン。

福原さん

「イリヤは彼本人の熱と勢いが伝わるように顔をアップに描いて、ナザールの方はまだちょっと意志が固まっていなくて、気持ちがゆらゆらしているところなので、ちょっと小さめに描いたりとかしましたね」

キャラクターの個性や感情などを表現するために、大事な「表情」。そこにこだわるのには、もう1つの理由があります。

福原さん

「言語って国によって違うけれど、気持ちは全世界共通なので」

■思いを込めた漫画 日本からウクライナへ

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将来、この漫画がウクライナに渡った時に、まだ字が読めない子どもにも絵を見て内容を理解できるように描きたいといいます。今年7月、ウクライナフェスで初めて対面した、福原さんとナザールさん。

主人公のモデル ナザール・グラバーさん(32)

「日本語で描かれた漫画を読ませてもらいました。日本語が分からなくても表情や描き方で意味が伝わってきました」

文字は分からなくても、確実に、福原さんの思いは届いています。

福原さん

「ナザールさんたちと一緒に話すことで、今後もっとリアリティーとか、その魅力的なキャラクターの描写に力を入れて描いていこうと思いました」

■漫画で伝えたい「前を向いて希望を」

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福原さん

「急に戦争に巻き込まれた主人公が、自分なりの希望を見出していくっていう漫画なんで、この漫画を読んだ子どもたちにはその主人公の姿を通して、同じように元気になってくれたらいいなと思います」

いつの日か前を向いて、希望をたぐり寄せてほしい…そんな願いを込めて。

(10月24日『news every.』16時特集より)

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