【ルポ】原発から出る「核のごみ」どう処分?「地層処分」研究の最前線へ!(中)
日テレNEWS NNN / 2024年11月2日 8時11分
原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」。その地層処分とはいったいどのような形で行われるのだろうか。「幌延深地層研究センター」では実際に地下奥深くまで掘り進め、地震や地下水の影響などの研究を続けている。
(報道局総合ニュースセンター 野田 美佳子/福澤 真由美)
■施設概要とスケジュール
使用済みの核燃料を再処理した後に残る最終的な「核のごみ」、高レベル放射性廃棄物は、厳重に密閉され、何万年もの間、人間の生活環境や地上の自然環境に影響が生じないよう安全に処分されなければならない。
幌延深地層研究センターのミッションは、高レベル放射性廃棄物を容器に密閉した上で埋設する地下深くにおいて、地震や地下水による影響などを調査研究することだ。
2001年から始まった地層処分の調査研究は3段階に分かれている。
第1段階は地上からの調査研究、第2段階は地下施設建設と工学技術の有効性の確認、そして現在は第3段階の「地下施設での調査研究」だ。
地下施設は「換気立坑」「東立坑」「西立坑」があり、深さ140メートル、250メートル、350メートルの場所に3本の立坑をつなぐ水平坑道が造られている。最終的には深さ500メートルまで掘り進める予定だ。
日本国内で最も高いビル・大阪の「あべのハルカス」は300メートルだから、相当地下の奥深くまで掘る計画であることが分かる。
掘削は約80人が交代で昼夜行っていて、岩盤を掘削しては表面をコンクリートで覆っていく。堀り進むのは1日でわずか1メートル程。ちょっと気の遠くなるような作業だ。
地下施設の見学は一般も可能で、年間1500人ほどが訪れている。研究内容は全て公開されていて、写真撮影の制限も一切ない。当日は地元の中学生たちも見学に訪れていた。
■地下施設へ
今回私たちが入るのは「東立坑」。
ここは「地層処分」の純粋な研究施設であり、放射性物質は一切持ち込まれない。このため、内部を取材する際、放射線量を測定する線量計の携帯は不要で、作業用のつなぎ服に着替えるだけだ。ただ、動植物の遺骸から発生するメタンガスが地下水に溶け込んでいる事から、火器類の持ち込みだけは厳しく禁じられている。
案内してくれたのは、研究施設の副所長で工学博士の舘幸男氏。幌延に赴任する前は茨城県東海村の核燃料サイクル工学研究所で研究をしていたそうだ。
入口で「坑内入退カード」をかざし、工事用エレベーターでいよいよ地下へ。
私たちが訪れたとき、東立坑は496メートルまで掘削が進んでいたが、最深500メートルの掘削に向けた準備作業があるため、今回は250メートル調査坑道の見学となった。(9月5日に500メートルに到達)。
深さ250メートルの坑道には約4分で到着。意外と早い。
坑道内部はある程度の高さと幅もあるため窮屈な感じは全くない。内部の室温は本来であれば年間通してほぼ一定となるが、坑道を換気しているため、地上の気温の影響を受けて変化しているそうだ。
■地層処分の方法とは
そもそも「放射性廃棄物」とはどのような形で埋められるのか。
使用済核燃料の再処理で発生した廃液はガラスに混ぜ「ガラス固化体」にする。(バリア①)
それを金属製の容器に入れ(バリア②)、さらに厚い粘土で囲む。(バリア③)。3重の人工バリアで覆われた廃棄物を300メートルより深い地下の岩盤に埋める(天然バリア)という多重バリアシステムが取られる予定だ。
「ガラス固化体」は発熱しているため、埋める前に地上の中間貯蔵施設に30年から50年置き、ある程度まで冷ます必要がある。
このため、調査ではガラス固化体を模擬したヒーターの人工バリアを深さ350mの岩盤中に埋め、地下水を注入して人工バリアや岩盤の温度・水分の変化を調査する研究などを行っている。
地震による影響についてはどうか。地下においての地震の揺れは観測の結果、地上の3分の1から5分の1と小さい。また、地震の際は岩盤と人工バリアが一緒に揺れることから、人工バリアが破壊される可能性は非常に低いということが分かっている。
では、処分場建設にはどれくらいの広さが必要なのだろうか。
地層処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、地下300メートル以深に4万本の廃棄物を埋設できる処分場を造る場合、平面で約600ha~約1000haに複数の立坑や斜坑を堀り、坑道の総延長は約200km~300kmになるとの試算が出されている。
こう考えると、地下奥深くに造るとはいえ、人口密集地に処分場を造ることはやはり考えづらい。「NIMBY=Not In My Backyard(施設は必要だが自宅の庭にはいらない)」という思いは、きっと誰の心の中にもあるだろう。本当に難しい問題だ。
ちなみに、坑道の壁にある「窓」からは500万年前の岩盤を見ることができた。ここからも地下水の流れが非常にゆっくりであることがわかった。
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