投票迫る米大統領選 日本株・為替への影響は? 「日本の与野党の政策協議にも注目」との見方も
日テレNEWS NNN / 2024年11月5日 6時0分
5日に投開票が行われるアメリカ大統領選挙。トランプ氏とハリス氏が激戦を繰り広げているが、大統領選の結果は日本の株・為替にどのような影響を与えるのだろうか。
■激戦州で競り合い続く 最終盤まで読めない情勢
今回の大統領選は最終盤まで共和党・トランプ氏と民主党・ハリス氏の間で大激戦が続いている。政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、勝敗のカギを握る7つの激戦州で、各種世論調査の支持率の平均はトランプ氏が48.5%、ハリス氏が47.7%となっている。(日本時間4日午後5時時点)
選挙戦の「ラストサンデー」となった3日はトランプ氏が東部ペンシルベニア州や南部ジョージア州など、ハリス氏が中西部ミシガン州と、それぞれ重視する激戦州で集会を開き、支持を訴えた。
こうした中、大統領選の結果は日本株や為替にどのような影響を与えるのだろうか?
■今後の相場を見極める3つのポイント 「トランプ・トレード」は起きているのか?
今後の市場の動きを見るにあたっては、3つのポイントがある。
1:「トランプ・トレード」がどの程度進んでいるか
為替を見ると、10月に入ってからの1か月あまりでおよそ10円ほど円安が進んだ。4日午後5時の時点では1ドル=152円台で推移している。
市場の一部では、大統領選でトランプ氏が追い上げた時期と同時期にこの動きが起きたことから、トランプ氏勝利を織り込んだ「トランプ・トレード」が進んだのではないかとの見方もある。
ある市場関係者は「長期金利が上昇傾向にあるので、債券市場はトランプ勝利による財政出動を見込んでいるのではないか」と語る。しかしこの関係者は同時に「トランプ・トレードは、言われているほどの規模ではないと思う」との見方も示している。トランプ氏勝利の見方が円安の進行を後押しした、その織り込みは一定程度に留まっているのではないかとの見方だ。トランプ氏勝利を織り込んだトランプ・トレードがどの程度進んでいるのかが、選挙後の相場の動きの程度にも影響してくる。
2:両氏の経済政策
トランプ氏とハリス氏が掲げる経済政策を見ると、程度の違いはあれど、財政支出等によって財政赤字を拡大させ、インフレ要因となり得るとみられている。
ただ、ハリス氏の経済政策の方向性が「おおむねバイデン政権の方向性を維持」とみられているのに対し、トランプ氏の掲げる減税(「トランプ減税」の延長・恒久化)による消費喚起、関税引き上げによる輸入物価の上昇、移民抑制による労働力抑制はいずれもインフレを招くリスクがあると懸念されている。
複数の市場関係者が、短期的な市場の反応は、トランプ氏勝利の場合の方がよりドル高・円安方向に作用する可能性があるとみている。
3:議会選挙の行方
トランプ氏が勝利するにせよハリス氏が勝利するにせよ、その政策実行力を大きく左右するのが、同時に行われる連邦議会上院・下院の選挙だ。上下両院で過半数が異なる「ねじれ議会」になると、大統領の政策遂行能力は制約を受けることになる。
選挙分析機関「クック・ポリティカル・リポート」によると、上院では共和党が優勢に選挙戦を進め、4年ぶりの過半数奪還を視野に入れている。一方の下院は米メディアによると接戦の様相だ。
トランプ氏が大統領選に勝利し、共和党が上下両院で過半数を獲得する「トリプル・レッド」になった場合が、トランプ氏の政策を反映して株高や円安が最も進みやすいケースだと言える。
■読みにくい相場 ケース別の当面の動きは
では、大統領選の勝敗によって具体的に日本株と為替はどのように動くケースが考えられるのか。どの市場関係者に取材しても「想定シナリオが複数あり、難しい」との答えが返ってくるが、取材を総合すると、大まかな方向性は以下の通りと考えられる。
トランプ氏勝利に加え、共和党が上下両院も制する「トリプル・レッド」の場合、勝敗の決定直後はアメリカの株高とドル高の進行に伴い、日本でも株高・円安が進みやすくなるとみられる。
ある市場関係者は「1ドル=155円がひとつの目安ではないか」とみる。このレンジを超えてくると、日本政府当局も為替介入の可能性をちらつかせながら、警戒感を上げてくるとの読みだ。
一方、トランプ氏勝利を織り込んだドル高がかなり進んでいるとみる市場関係者からは「材料が出尽くし、何か反対要素があれば円高になる可能性もある」との見方も出ている。トランプ氏が勝利しても議会がねじれる場合の株価・為替は読みにくい展開になる可能性もある。
また、長い目で見ると、トランプ氏勝利でも円安圧力が長くは続かないという見方も目立つ。別の市場関係者は「トランプ氏は一方的なドル高を推奨しない。修正を求めてくる可能性はあり、一本調子で円安が進むとは思えない」と述べ、選挙後どこかのタイミングで、円安路線が反転するの見方を示した。
これに対し、ハリス氏が勝利する場合、政策は財政出動路線であるものの、バイデン政権の方向性を踏襲すると見られていることから、トランプ氏に比べて市場の動きは限定的になるとの見方が出ている。
市場関係者からは「市場はトランプ氏勝利を織り込みながら情勢を見ているので、ドル買いの流れが巻き戻す可能性がある」「ハリス氏勝利の直後は円高になり、その後はアメリカ経済次第ではないか」「ハリス氏勝利で議会がねじれると、いまと大きな変化はないので株価は中立か、少し下げる程度ではないか」などの声があがった。
さらに、今回は大統領選、連邦議会選挙がともに激戦のため、2020年のケースと同じように、大勢判明まで数日を要する場合も想定される。こうした場合「選挙の結果が見えるまでは方向感は見えない」との見方が多く、「日本株は先週末に1000円以上大きく値を下げ、警戒感が高まっている。
今週大統領選の結果が出るまでは、3万8000円を挟んで上下に方向感のない動きになるのではないか」との見方も出ている。
■与党と国民民主党の政策協議も今週の材料に
一方、複数の市場関係者からは、自民・公明両党と国民民主党の政策協議の行方も、日本株に影響を与えるとの見方が出ている。国民民主党が掲げる所得減税案について「非課税枠拡大は、伸び悩んでいる国内消費を押し上げる期待につながる」と株価の押し上げ要因との見方がある一方、「少数与党である限り、政権の枠組みは不安定なので、市場がどう反応するかは読みにくい」との見方もある。
国内外で大きな動きが予想される中、今週の金融市場の行方が注目される。
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