【解説】トランプ前大統領が“圧勝”…ウラで何が起きていたのか
日テレNEWS NNN / 2024年11月7日 6時11分
当初は大接戦と言われていたアメリカ大統領選挙。ふたを開けてみればトランプ前大統領が圧勝したかのような印象もありました。このウラでは何が起きていたのか、大統領選を取材してきた山崎大輔NNNワシントン支局長が解説します。
◇
山崎大輔NNNワシントン支局長
「私は今、5日夜にハリス氏の支持者が集まって集会が行われていた、ハリス氏の母校のハワード大学にいます」
──大接戦が伝えられていましたが、結果としてはトランプ氏が強かったということなんでしょうか?
山崎支局長
「そうですね、取材してきまして、トランプ氏はこの選挙戦で物価高を批判して、不法移民の急増で治安が悪化し雇用が奪われたと主張してバイデン政権を繰り返し批判してきました。有権者の現状への不満を巧みにすくいあげて、バイデン政権への批判がハリス氏に集中するようになりました。その結果、トランプ氏が黒人やヒスパニックといったハリス氏のもともとの支持基盤にまで切り込むことに成功しました。特にヒスパニックの支持が今回、大幅に伸びたことが大きな勝因だったとアメリカメディアは伝えています」
「人種差別的な発言や分断をあおる発言を繰り返すトランプ氏への不安よりも物価高による現状の生活への不満が勝ったといえます。私達の取材に『トランプ氏のことは嫌いだが、目の前の生活をよくするためにトランプ氏に投票する』と話していた黒人の男性が今回の選挙戦を象徴していたと思います」
──一方でハリス氏が伸び悩んだのは、原因はどのあたりにあったんでしょうか?
山崎支局長
「ハリス氏は副大統領ということで、最後までバイデン政権との違いを有権者に示すことができませんでした。現職の副大統領だけに新たな政策を打ち出しても、なぜこれまでそれを実行してこなかったのかという疑問に最後まで答えることができませんでした」
「予備選を闘わずに急きょ、大統領候補となっただけに党内を掌握する時間がなかったということで、思い切った政策を打ち出すこともできませんでした。また自らのキャラクターや知名度を高める時間も足りなかったといえます。前面に訴えた人工妊娠中絶の権利の擁護も、トランプ氏が争点に据えた物価高と不法移民の問題の前に期待したほどの支持が広がりませんでした」
──今後はどういった動きが予想されるでしょうか?
山崎支局長
「選挙戦から訴えてきた不法移民の強制送還や化石燃料の増産などはすぐに取り組む可能性があります。また、トランプ氏は関税の引き上げも訴えていまして、各国からの輸入品に10%から20%の関税を課すとしています。メキシコで生産してアメリカに輸入される自動車に100%の関税も課すとしていて、日本企業も影響を受けることから対応を迫られることになります」
「さらに4つの事件で起訴されているトランプ氏は、バイデン政権が『司法を武器化してきた』と批判してきました。アメリカメディアは自らを起訴した特別検察官をクビにしたり、議事堂襲撃事件で有罪判決を受けた人らを恩赦する可能性があると指摘しています」
──ウクライナや中東など国際情勢への影響はどうでしょうか?
山崎支局長
「トランプ氏はアメリカが戦争に関与することを嫌うため、ウクライナやガザ地区での戦闘を終結させる方向に動くとみられます。まずウクライナですが、『戦争を速やかに終結させる』と選挙戦で繰り返し主張していて、トランプ氏がアメリカからのウクライナへの軍事支援を大幅に減らして、ロシアとの戦争に決定的な影響を及ぼす可能性が指摘されています」
「一方で正反対のシナリオを指摘する声も出ています。ある外交筋はウクライナの反転攻勢を強力に支援して、プーチン大統領に停戦に応じさせるといったシナリオもあり得ると話しています。トランプ陣営の中には、ウクライナにもっと軍事支援をしていればロシアを押し返すことができ、早く停戦協議に持ち込めたという意見もあるんです」
「中東情勢ではガザ地区での戦闘の終結を急ぐとみられます。イスラエルを支援する一方でパレスチナへの人道支援も求めてきたバイデン政権と異なり、イスラエルの支援に重点を置くとみられますが、どのように戦闘終結に導くのかは不透明です。予測不能のトランプ氏だけに各国がその対応に振り回されることになりそうです」
(11月6日放送『news zero』より)
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