羽生結弦が聞く 輪島朝市の思い…地震・豪雨「それでも復活する」
日テレNEWS NNN / 2024年11月12日 21時6分
今年1月の地震、そして9月の豪雨で甚大な被害を受けた石川県輪島市の人々を日本テレビ「news every.」スペシャル・メッセンジャーの羽生結弦さんが取材。相次ぐ災害に「心が折れた」と話す人たちの力になったものとは…
■能登半島復興支援チャリティー演技会
9月15日、羽生結弦さんは石川県金沢市のスケートリンクにいました。
能登半島地震の復興を支援するチャリティー演技会に出演するためです。今回の演技会は、羽生さんの強い思いで実現しました。
羽生結弦さん
「皆さんにちょっとでも元気になってもらったりちょっとでも笑顔が広がったら」
一方、その頃、地震で大きな被害を受けた石川県輪島市では、演技会のパブリックビューイングが行われていました。
1月の地震で全焼した輪島朝市の人々も来ていました。山下良子さん、水口美子さん、山下初枝さん。3人は今年6月、羽生さんが輪島市を訪れた際、取材した人々でした。
■羽生結弦と輪島朝市
今年6月、羽生さんは輪島朝市を訪ね、山下さんと水口さんから話を聞きました。
水口さん「私はまさしくここで店を出していた」
水口さんが店を出していた場所は現在たち入り禁止。3人は朝市で野菜や山菜を販売していました。当時は焼け落ちた店がまだ骨組みのまま残されていました。
散乱するガレキ。変わり果てた朝市の姿に、3人は心を痛めていました。
水口さん「こんなにつらいことはない」
■“訪問”朝市
しかし3人は春から仲間と“訪問朝市”をスタート。輪島市内の仮設住宅で、野菜や山菜の販売を再開したのです。
水口さんは「朝市があって良かった」と語ります。山下さんも「はりあいがある」と笑顔を見せました。
3人にとって、朝市は生きがいでした。
■チャリティー演技会
そして、9月。
羽生さんが参加したチャリティー演技会。輪島で見守る朝市の3人は「どきどきする」と楽しみにしていました。
演技会のオープニングは、輪島の和太鼓チームの演奏に乗せて、スケーターが舞います。羽生さんに加え、演技会の趣旨に賛同した、世界選手権メダリストの宮原知子さんや鈴木明子さん、四大陸選手権優勝の無良崇人さんなど、世界トップのプロスケーターが華を添えました。
演技会は無観客で行われ、全国に配信。利益は復興支援のため全額が寄付されます。少しでも制作費を抑えて寄付にあてるために、通常のアイスショーとは違って照明の演出はありません。
羽生さんのソロ演技は「春よ、来い」。地震で傷ついた人々の心に春が来ますようにー
「僕はフィギュアスケーターでしかない。伝えたい思いは丁寧に一つ一つ演技に込めていきたい」
演技の間、輪島で出会った人々の笑顔が思い浮かんだといいます。
演技会が終わった後、羽生さんは輪島朝市の水口さんや山下さんとリモートで対話しました。
山下さん「もう素敵な本当に素敵なショー」
水口さん「すごかったね」
和やかな笑顔で会話が弾みます。
羽生さん「仮設でまだ朝市は続けていますか?」
山下さん「続けています。おかげさまで待っていてくれる方たちがたくさんいるから」
羽生さん「みんな朝市やってるときが一番笑顔になっているし一番楽しそう」
水口さん「秋植えの大根やら白菜の種もまきましたら」
秋になったら、朝市で大根を販売する。水口さんはそんな計画を立てていました。
しかしこの翌週。
■奥能登豪雨
9月21日、輪島市など奥能登地方に線状降水帯が発生。大雨特別警報が発表され、河川の氾濫や土砂災害が多発、大きな被害が出ました。
豪雨から2週間後。
朝市の水口さんを訪ねると、畑には大きな被害が出ていました。
水口さん「これは大根」
秋に向けて育てていた大根。畑が冠水し、泥をかぶりました。
水口さん「水はけが悪くなって腐った」
大事な大根の育ちが悪いといいます。ほかの野菜も腐るなどの影響が出ました。
畑を見つめる水口さんの表情が曇ります。
「情けないな・・・本当に頑張って植えたんだけど・・・」
口をついたのは弱音。
「これは・・・無理でしょ。あきらめた方がいいね。あきらめざるをえない。地震だけだったら・・・元気はない」
朝市の山下さんの住む地域では、停電が起きました。豪雨で電線が切断しました。
山下さん「これ電線があっちから、あそこの電柱から来てたんだけど切れてつかなくなった」
さらに、断水も続いていました。
羽生さんも、リモートで話を聞きました。
羽生さん「大変でしたね、本当」
水口さん「びっくりしたね」
羽生さん「心折れますよね本当に」
山下さん「私はまだ電気も水道もきてない」
羽生さん「つらいですよね、本当に」
■“訪問朝市”再開
地震の前は地元の人々や観光客で賑わっていた輪島朝市。復興はまだ道半ば。そんな中で襲ってきた豪雨。前を向こうとする心が折れたといいます。
でも、朝市を諦めきれない…。そんな思いがありました。
豪雨から2週間後。水口さんと山下さんは仮設住宅へ向かいました。被害を免れたわずかな野菜をもって、朝市を再開したのです。
朝市が行われた仮設住宅には、地震で全焼した輪島朝市の人々が住んでいます。仲間との、2週間ぶりの再会でした。
朝市の客「うち大丈夫やった?」
水口さん「うち(自宅)は間一髪で大丈夫だった」
朝市の客「おめでとうございます。うちも間一髪で燃えなかったらよかった。まあ頑張らないと。これが運命やから」
水口さん「そう思うしかない」
朝市の客「与えられた運命やから生きていかなね」
水口さん「ありがとうございます。またね」
いつもの仲間たち。いつもの朝市。その存在が大きな力になっていました。
水口さん「でも出てきて良かったね、思い切って。うちでぐずぐずしているよりも」
山下さん「気分が違うね。みんなの顔を見たら元気になる」
■輪島朝市と共に前へ
羽生さんが思いを聞きました。
羽生さん「朝市の存在って、いま皆さんにとってどうですか?」
山下さん「やっぱりこれ(朝市)があるもんで、私らもそこ(朝市)いこうと思って一生懸命に動くしね」
水口さん「心の支えというか」
山下さん「よりどころ」
水口さん「また頑張ろうっていう気持ちになる」
山下さん「朝市のおばちゃんってほんとにエネルギーあるもんね」
羽生さん「目の前でそのエネルギーを感じていますよ今」
会話は笑顔で進みます。
羽生さん「絶対元気でいてくださいね、みなさんね」
山下さん「ありがとう、笑顔で頑張ります」
水口さん「踏んだり蹴ったりの年やったけども、今度はいいお正月を迎えたいと思う」
山下さん「また頑張ろうかなって。なんとかいけると思う」
水口さん「復活します!」
輪島朝市の力を、羽生さんは改めて感じたと言います。
「頑張りとか笑顔の輪が朝市にはあると改めて感じました。朝市があるからなんとか朝起きて頑張って外に出る。頑張るものがあるっていうのは素敵だなと思います。いろんなところに笑顔が広がっていってくれたらいいと思います」
大地震、そして豪雨。それでも朝市とともに、前へ…
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