【解説】原発の安全どう担保?事故から13年半で初の再稼働不許可 運転開始から半世紀の原子炉も…
日テレNEWS NNN / 2024年11月14日 20時50分
13日、原子力規制委員会で敦賀原発2号機が安全審査不合格に。規制委発足後初めて再稼働が認められないと決定した。
原子炉直下に活断層が走る可能性が否定できなかったためだ。
地震多発国で原発の審査をするとは。10年間担当した前原子力規制委員に聞いた。
■再稼働どう判断
再稼働する原発は東京電力福島第一原発の事故の後つくられた新しい規制基準に合格する必要がある。
新規制基準では起こりうる地震・津波の想定やそれへの対策も強化されていて、この基準の中に原子炉建屋などの下に活断層があってはいけないという決まりもある。
審査チームが実際に現地を訪れて断層などを確認するほか、再稼働を目指す事業者から提出された資料をもとに「審査会合」を繰り返し行い、基準に適合しているかチェックする。
敦賀原発の場合、審査開始から決定まで約9年かかった。
合否を最終的に判断するのが「原子力規制委員会」だ。
委員は5人の専門家でそれぞれの専門分野の審査を担当、地震・津波の審査は地質学者の石渡 明さんが10年間取り仕切ってきた。(9月に任期を終え退任)
石渡さんは、その重責と今の規制基準についてこう話す。
*地質学者・前原子力規制委員石渡 明さん
「非常にストレスを感じながらやってきました」
「やはり地震・津波あるいは日本は火山国ですので火山、活断層ももちろんですけれども、そういった自然ハザードですね、これがやはり原子力施設にとっては非常に大きな問題になる」
「(福島の事故は)少なくともそういう津波が来る可能性があるということは地質学者の間では知られていた事実であって、事故の後、新規制基準では、活断層に関しては十二、三万年前までに起きた事象は全部考えに入れなければいけないということになっているわけです」
「今の基準として、私は妥当なものだと考えています。ただこれは絶対ではないと思います。自然現象というのは非常に不確定なもので、我々の知識もそこまで及ばないわけですよね」
■専門家も「新たな事象」に直面
今年の能登半島地震で石渡さんは「生きている間に目にすることはないだろう」と思っていた現象を目の当たりにした。
それは、海岸の広い範囲で地盤が4m以上隆起したこと。
こうした新たな事象やそこから得られる知識を原発の規制に取り入れることが大切と石渡さんは強調する。
これまで国内ではピンクで示した13基の原発が再稼働している。
先月末には、震災で福島第一原発と同規模の津波を受けた宮城県の女川原発が再稼働したが、発電再開前に機器の一つが動かなくなり原子炉を停止、13日に再び稼働した。
政府は、電力の安定供給や温室効果ガスを出さない発電という面から原発の活用を掲げているが、規制基準が厳しくなった分、安全対策のための工事や審査にも時間がかかるのが現状だ。
■原発老朽化 運転期間の延長は
再稼働できた原発では老朽化が進み、14日には福井県の高浜原発が運転開始から50年、半世紀となった。
原発の運転期間は、規制委員会が所管する法律で最長でも運転開始から60年と規定されていた。
しかし、政府の原発活用方針を受け、去年、規制委員会で60年の規定をなくすことを議論した。
基本的に規制委員会の決定事項は5人の委員の全会一致で決まるが、このときは意見が分かれた。
■60年超運転 1人反対のワケ
4人は安全性の審査を定期的に行うことで了承したが、地震・津波の審査を担当していた石渡さんだけ「安全性を高める改変ではない」などと反対した。
結局、異例の多数決という形で運転期間「最長60年」の規定がなくなった。
石渡さんに当時反対した理由を改めて聞いた。
*石渡さん
「社会的な決まりですよね、法律というのは。(原子力規制)委員会というのは、科学的技術的な根拠に基づいて審査をするということが基本ですので、特に科学的技術的に何かそういう60年を超えても大丈夫だよというような新知見が出たとかね、そういうことではなかったわけですよね、今回の議論は。私が反対したのはそこのところです」
石渡さんは原発の寿命について何か新たな知見があった訳でもないのに運転期間を事実上延長出来る方向で法改正することに違和感があり、安全性の向上につながらないと反対したということだった。
日本では初めて再稼働が認められなかった敦賀原発2号機だが、石渡さんによると既に同じように活断層の多いアメリカ・カリフォルニア州では原発の近くに活断層が見つかり運転差し止めになったケースが複数あるということだ。
国が原発の活用へと進む今、私たちも原発の安全がしっかり守られているか注視し、生活や社会に必要な電気をどうまかなうのか考えていく必要がありそうだ。
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