【独自】北朝鮮製ドローン兵器のキーマン カンボジアに“外交官”として潜伏 偽名は「Douglas」
日テレNEWS NNN / 2024年11月15日 23時12分
北朝鮮メディアは15日、金正恩総書記が無人機の攻撃試験を視察し、1日も早く無人機の量産体制を確立するよう指示したと報じた。金総書記が急ぐ「ドローン開発」そのキーマンが東南アジアのカンボジアに潜伏しているとの情報を得た。その人物とは表向きは北朝鮮の“外交官”として駐カンボジア大使館に勤務するパク(朴)氏。国連の制裁を破りドローンの備品を調達し本国に送っているという。北朝鮮のドローン開発が進めば、ウクライナでの戦闘経験と併せて日本や韓国にとっても大きな脅威になる可能性がある。
■駐カンボジア大使館に勤務 身分証には「STAFF」
2024年8月、カンボジアの首都プノンペン。市街地にある高級コンドミニアムから白の日本車が出て行った。向かったのは中華料理レストラン。北朝鮮から現地へ赴任したパク氏は、同居する妻・息子と円卓で食事をとっていた。その後は、郊外にまで車をとばし、高級外車のディーラーを訪ねる様子もみられた。
パク氏は40代半ばの男性“外交官”。北朝鮮事情に詳しい消息筋によると、15年頃から駐カンボジア大使館に勤務している。ただ、現在の外交官身分証に記された彼の身分は「STAFF」。厳密にいえば外交官ではなく、そのサポート役ということになる。
あえて「STAFF」としている理由について、消息筋は「自分の“仕事”を目立たなくするためだ」と指摘する。パク氏には知られてはならない“裏の顔”があるという。
■ドローン関連部品を調達・密輸か…偽名は「Douglas」
パク氏はいったい何者なのか。詳細を知るという人物がNNNの取材に応じた。韓国情報機関・国家情報院傘下のシンクタンク・国家安保戦略研究院のキム・グァンジン(金光進)統一人権研究センター室長。北朝鮮の元政府高官で、04年に脱北した人物だ。
―キム・グァンジン 統一人権研究センター室長「パク氏は、北朝鮮の『偵察総局』が製造するドローンに使われるセンサーやカメラ、送受信機などを東南アジアから調達し、本国に送っています」「“外交官”になりすまし、実際は『青松連合』カンボジア支部の代表として活動しているのです」
朝鮮人民軍の傘下にある「偵察総局」は、金総書記直轄の対外工作機関だ。外国人の拉致なども行うほか、かつてマレーシアで起きた金正男氏暗殺事件にも関わったと指摘される。
その偵察総局の指揮下にあり、海外で武器を調達しているのが「青松連合」(Green Pine Associated Corporation)だ。中国やロシア、中東地域などにも拠点を構える武器密輸商社で、パク氏はカンボジア支部の代表を務めるという。パク氏の存在が表に出たことは一度もない。
消息筋によると、パク氏はカンボジアで「Douglas(ダグラス)」の偽名で活動している。身分を偽り、中国やラオス、カンボジア、ベトナムなどからドローン関連部品を調達しているという。入手した部品は、中国・丹東を経由し本国へ密輸される。いわばパク氏はドローン開発のキーマンといえるが、武器関連品目を北朝鮮に送るのは国連安保理の対北朝鮮制裁に違反する。
■ドローン兵器開発を急ぐ北朝鮮 国際社会の脅威に
北朝鮮はドローン開発をどれほど重視しているのか。前出のキム室長は「いま北朝鮮は、核ミサイルだけでなく、現代戦に必要な兵器の開発に力を入れている」と指摘する。
―キム・グァンジン 統一人権研究センター室長:「ウクライナや中東の紛争でもドローンの重要性が証明されています。北朝鮮は最近、韓国に向けてドローンを飛ばしましたが、現代戦や偵察活動に必要な新型兵器の開発を急いでいるのです」
実際、24年には金正恩総書記がドローン開発を指揮する様子がたびたび報じられている。朝鮮中央通信は11月15日にも、金総書記が「自爆型ドローン」の性能実験を視察し、量産への移行を指示したと伝えた。
ロシアとの蜜月関係も懸念材料だ。北朝鮮は、ウクライナとの戦闘に兵士を派遣するなど、ロシアとは事実上の“軍事同盟”を築いた。こうした中、ロシア側からドローン開発の技術支援を受けている可能性が指摘されている。
―キム・グァンジン 統一人権研究センター室長:「北朝鮮製ドローンが量産されれば、ウクライナや中東をはじめ、世界各地の戦線に投入され、犠牲者が増えることになります。北朝鮮は外貨獲得のためなら兵器でもテロでも売ります。国際平和にとって脅威になるでしょう」
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