「106万円の壁」見直しならどうなる? 手取りは、年金は……試算結果 新たに200万人が社会保険加入へ【#みんなのギモン】
日テレNEWS NNN / 2024年11月16日 12時9分
厚生労働省が「106万円の壁」の見直しに向け議論しています。週20時間以上働く人の社会保険加入を義務付けるもので、手取りや年金受給額にどう影響するか試算しました。心配なのは手取り減ですが、将来の年金の安定を考えるきっかけにもなりそうです。
そこで今回の#みんなのギモンでは、「106万円の壁 見直しでどうなる?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
■103万円だけじゃない…「壁」の中身
小野高弘・日本テレビ解説委員
「今、見直しが行われている年収の壁。103万円(所得税の負担発生)、106万円(51人以上の企業の社会保険料)、130万円(50人以下の企業の社会保険料)、150万円(配偶者特別控除の減少)といろいろありますが、今回は106万円の壁に注目します」
「皆さんの年金の話です。主にパート従業員など非正規雇用の労働者について、年収が106万円を超えると、勤務先の規模にもよりますが、その企業の社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられ、保険料を支払う必要が出てくるというものです」
「この106万円の壁をどうするか。15日も厚生労働省で審議会が行われていました」
■社会保険に加入すべき「3つの要件」
小野解説委員
「今の制度では学生以外のパートやアルバイトの人で、年収約106万円以上、従業員51人以上の企業、そして週20時間以上働いているという3つの要件に当てはまれば、社会保険に加入する義務が生まれ、健康保険と厚生年金の保険料を払わなければいけなくなります」
鈴江奈々アナウンサー
「『壁』と言われているだけあって、106万円にいかないように、社会保険料を払わないようにと意識している方々もいらっしゃるということですが、逆に超えるとどれぐらい引かれて手取りが減っていくのか気になりますよね」
■月収8万円と9万円…どう違う?
小野解説委員
「3つの要件に当てはまるか当てはまらないかでどのぐらい手取りが違うか、単純計算してみました。会社員の夫の扶養家族になっているAさん。従業員80人の企業で週20時間以上のパートをしています。月々の給料は8万円で年収は96万円です」
「Aさんの場合は所得税は引かれず、106万円の壁に届いていないため、社会保険料は引かれません。仮に住民税などが引かれたとしても、手取りは96万円ぐらいからあまり変わりません」
「一方、同じ企業のBさんは少し働く時間が長く、月々の給料は9万円、年収は108万円です。106万円の壁を超えているので、3つの要件に当てはまり、夫の扶養から外れます」
「自分が働く会社の社会保険に加入が義務付けられ、健康保険と厚生年金の保険料は年間約15万円が天引きされます。ひと月の給料は9万円なので、その2か月分近くになります。他に税金なども引かれますが、手取りは約93万円になります」
「Aさんと比べると、Bさんの方が年収は高いのに手取りはAさんの方が高い。『だったら私もAさんの方がいい。年収は106万円を超えたくない。社会保険にも入りたくない』と、106万円の壁の前で立ち止まっている人は、実際に大勢います」
■厚労省が変えようとしている要件は?
森圭介アナウンサー
「長い目で見れば老後に年金という形で戻ってきますけれども、今この場の生活が苦しいという人は、手取りが減るということは考えてしまいますよね」
小野解説委員
「審議会を行っていた厚労省は今、何を変えようとしているのか。3つの要件のうち、『年収約106万円以上』『従業員51人以上』を取っ払ってしまおう、週20時間以上働く人は社会保険に入ってもらおう、という方向で議論が進んでいます(学生は対象外)」
■制度変更で…手取りの減少額を試算
小野解説委員
「(このように制度が変わると)社会保険料を払わないといけなくなるAさん。週に20時間以上働いた場合には、社会保険料は単純計算ですが約14万円引かれます。以前は手取りが約96万円ありましたが、82万円ほどになってしまいます」
忽滑谷こころアナウンサー
「この数字を見ると14万円は大きいなと思いますよね」
小野解説委員
「制度が変わるとAさんのような人、つまり新たに社会保険に入ることになる人が200万人(昨年度時点)いるとみられます」
「ただ、手取りは確かに減りますが、一人ひとりの老後にプラスにもなると考えられないでしょうか。一人でも多くの人や企業が年金保険料を払って支えれば、年金制度が安定することも考えられます」
■受け取る年金どう変わる?
刈川くるみキャスター
「自分が年金を受け取る時にどうなっているんだろう、と漠然とした不安があったんですけど、一人ひとりがプラスになると考えればいい方向に向かっているなと思います。実際に制度が変わると、受け取れる年金の額はどれぐらい変わってくるのでしょうか?」
小野解説委員
「専門家に聞きました。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の中村薫さんに、106万円の壁がなくなったとして試算してもらいました」
「パートで月8万円の給料をもらう50歳のAさん。夫の扶養から抜けてこの先10年間、60歳になるまで厚生年金に加入し続けた場合、65歳になって受け取れる年金額は、厚生年金に加入せず国民年金だけの場合よりも年間5万2000円アップします」
森アナウンサー
「長生きすればするほど返ってくるという考えもできますよね」
小野解説委員
「試算をした中村さんは『手取りが減ることを心配する方が多いですが、そのことだけに気が行っているとしたらもったいないです。天引きされた分は将来のための保険だと考え、自分の年金は自分で育てていただきたいです』と話していました」
鈴江アナウンサー
「将来の年金制度がどうなっているか漠然と不安感もあると思いますが、それが持続可能になるような話し合いが今まさに行われています。それを、私たちのライフプランを考えるきっかけにもしたいですね」
小野解説委員
「この制度は、非正規労働者の将来的な年金の安定のためでもあります。扶養家族だから保険料を払わなくていいという待遇にある人が、働いて自分の年金を自分で育てるための制度でもあります。考えるきっかけになればいいと思いました」
(2024年11月15日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)
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