兵庫県知事選、SNSが決め手に? 「偏っている」「デマにだまされた」…“不信”テレビのあり方 『news zero』の課題と悩み
日テレNEWS NNN / 2024年11月20日 9時53分
兵庫県知事選の出口調査によると、SNSを参考にした投票した人の9割弱が斎藤氏を支持しました。選挙におけるSNSの影響力は高まり、斎藤知事を支持する人はテレビなどメディアへの不信感をあらわにしています。テレビとSNSのあり方を考えます。
■斎藤知事「いろんなものを見て判断」
藤井貴彦キャスター
「兵庫県知事選挙をめぐって、SNSの発信とメディアの伝え方について、今私たちzeroでも悩んでいるということを正直にお伝えしながら考えていきたいと思います。再び兵庫県知事に就任した斎藤氏が19日、会見に臨みました」
斎藤知事
「大事なのは、新聞やテレビの報道っていうのも、いろんな各社さん取材されながら報道していると思います」
「有権者の皆さんはSNSとかYouTubeとか雑誌もそうですけど、いろんなものを見て、最終的には投票の判断をされるので、それをぜひ、いろんな形でご自身が判断していただきたい」
藤井キャスター
「今回、斎藤知事に投票した人たちの中に『テレビは一方通行、偏っている』『SNSで色々調べて決めた』という声があるのは確かだそうですね」
■「新聞やテレビ」参考にした人は34%
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「読売新聞の出口調査(2024年11月19日)によると、今回兵庫県で投票した人たちに『どの情報を最も参考にしましたか』と聞いたところ、『新聞やテレビ』が34%、『SNSや動画投稿サイト』が26%。SNSを参考にした人たちの9割弱が、斎藤氏を支持しました」
■ファクトチェックに多くの時間
藤井キャスター
「ここまで影響が大きくなった理由をどう考えたらいいでしょうか?」
小栗委員長
「その理由は1つに絞ることはなかなかできませんが、選挙戦中の情報の出方も背景の1つにあると思います、今回の選挙戦の特徴の1つとして、斎藤氏へのサポートを掲げて立候補したNHK党の立花孝志党首が告示日以降に、多くのYouTube動画を投稿しました」
「この中では、(さまざまな疑惑を告発した男性職員は)『ウソとうわさ話と作り話を並べて斎藤さんを落としに行った』と語り、『大手メディアのデマにだまされた』などとメディアへの不信感をあらわにしました」
「『作り話』などの情報は今なお事実として確認できない情報ですが、こうした情報に触れて、『斎藤知事は悪くない』と思った人たちも多かったでしょう」
「私たちは、こうした情報などに対して大きく扱うことはしませんでした。なぜかというと、前提としてテレビは放送法や公職選挙法で中立・公平であることが求められていて、私たちは事実と確認できたことだけを放送しています」
「そうした中、立花氏の主張が事実なのかどうか、ファクトチェックをするには非常に多くの時間がかかるので、わずかな期間ではできなかったというのが正直なところです」
「ただ、もし事実と確認できない情報をもとに投票した人がいたとしたら、民主主義の根本である選挙そのものが歪められる事態になりかねません。それだけに、何か私たち伝える側としてももっとできることはなかったのか、今後の課題だと受け止めています」
■「おねだり」「パワハラ」疑惑の報じ方
藤井キャスター
「『メディアは偏っている』という声に対してはどうでしょうか?」
小栗委員長
「私たちも反省しなければならない点があります。zeroでもお伝えした『おねだり』や『パワハラ』の疑惑については、兵庫県議会の百条委員会が行った県職員へのアンケートとその中間報告に基づいて報じました」
「ただ、回答した職員が直接聞いていない伝聞の情報も多くありましたし、これはあくまでも中間報告であって『回答内容の真偽は今後の調査によって明らかにすべき』とありました」
「そうしたことにもより配慮して視聴者の皆さんに伝える方法もあったのではないか、また選挙報道においては斎藤知事が行ってきた政策をもっと伝えるべきだったのではないか」
「百条委員会はまだ続いています。そこでの斎藤知事の発言や委員会の結論を、今後もしっかり伝えていこうと思います」
■SNSの“両面” 長濱さんが思うこと
長濱ねるさん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「私自身、SNSを使って衆議院選挙の投票の呼び掛けなどを行うなど、とても便利なツールとして使っています。一方で多くの人の興味を引こう、インプレッションを集めようと、なかなか事実確認がされないまま拡散されていて危険だなと感じることもあります」
「SNSはアルゴリズムで、自分に似た考えばかりが流れてきてしまう側面もあるので、私は検索して、賛否どちらの情報も見るようにしたり、新聞やテレビのウェブ記事なども見て、エビデンスがあるかどうかも調べたりするように心掛けています」
「私たち受け取る側のリテラシーが試されているなと思います」
■SNSとテレビは「補い合う」関係
藤井キャスター
「既存のテレビメディアへの不信感にはどう向き合うべきでしょうか?」
小栗委員長
「とても難しい課題をいただいたと思っています」
「ただ、SNSと私たちテレビメディアは対立するものではなく、SNSはスピードや幅広さが強みで、テレビメディアは正確さや公平性などを求められていて、それぞれに強みがあり、補い合っていくものなのではないかという思いを強くしています」
「それだけに、私たちも足らざる点は常に改善し、ファクトチェックなどの役割を強化して、視聴者の皆さんに信頼していただけるよう努力していこうと、改めて話し合っているところです」
藤井キャスター
「今回の知事選挙のみならず、(10月の)衆議院選挙でもSNSが存在感を強くしました。一つ注意しなければならないのは、SNSはユーザーの好みに近い映像や画像が集まりやすいという点です」
「幅広い情報に触れているようで、実は自分で自分に情報を流している側面もあります。他者の意見を取り入れる環境にあるかどうか。SNSもパーフェクトではないと意識して利用することが大切です」
「一つのメディアだけ、もちろんテレビだけでも全てを伝えきることはできません。できると思うこと自体が危険だと感じています。一方そのバランスが取れている人ほど粛々と自分の意見を構築していて、多くの人がその努力を続けていることも忘れたくありません」
(11月19日『news zero』より)
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