時速194キロ 「危険運転」認め懲役8年の実刑判決…遺族は量刑に複雑な思いも
日テレNEWS NNN / 2024年11月29日 6時15分
危険運転か、過失か、注目された裁判の判決です。時速194キロの車が起こした死亡事故で、大分地裁は「危険運転致死罪」を認め、被告の男に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
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3年前、交通事故で弟を亡くした長文恵さん。判決のあと、こう思いを述べました。
弟を事故で亡くした長文恵さん
「このまま彼の事故を眠らせてしまうというのは、絶対にしたくなかった。速度を出しすぎての死亡事故は、本当になくなってほしい思いが一番」
弟の小柳憲さん(50)は3年前、大分市内の県道で、車で右折しようとしたところ、法定速度の3倍以上にあたる時速194キロの車と衝突し、亡くなりました。衝突の衝撃で、小柳さんのシートベルトはちぎれ、車外に投げ出され、腰から下を粉砕骨折していたということです。
時速194キロで運転・衝突したのは、当時19歳の男。捜査関係者によると、男は「買ったばかりの外車で何キロ出るか試したかった」と供述していたということです。
検察は当初、被告の男を「過失運転致死罪」で起訴。これは、法定刑が懲役7年以下です。しかし、遺族が署名を集めるなどして、起訴内容の変更を求めたところ、法定刑がより重い懲役20年以下の「危険運転致死罪」への変更が認められたのです。
裁判で、検察側は、「現場の道路を194キロで走行した場合、ハンドルの操作は困難になる。 また、被告の運転は他の車両の安全な通行を妨害するものだった」などと主張。「危険運転致死罪」の要件を満たしているとして、懲役12年を求刑していました。
これに対し、弁護側は「車は被告の意図した通りに直進できていた。また、他の車の通行を妨害する積極的な意思もなかった」などと反論。「危険運転致死罪にはあたらず、被告は過失運転致死罪で処罰されるべき」と主張していました。
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時速194キロの車による死亡事故は「危険運転」か、「過失運転」か…?
28日に行われた判決公判。司法の判断は…
渡辺一平記者(テレビ大分)
「危険運転を認めました。懲役8年の実刑判決を言い渡しました」
判決で裁判長は、「妨害運転」であることは認めなかった一方、「進行を制御することが困難な高速度だった」と認定。「危険運転致死罪」が成立すると判断し、懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
裁判長
「常習的に高速度走行に及ぶ中、マフラー音やエンジン音、加速の高まりを体感して楽しむために犯行に及び、落ち度のない被害者の生命が奪われた結果は重大」
じっと判決を聞いていた被告。判決の言い渡しが終わると、遺族や裁判長にそれぞれ1、2秒ほど頭を下げました。
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「時速194キロがうっかり過失のはずがない」。そう、訴え続けてきた遺族─。
小柳憲さんの姉・長文恵さん
「危険運転致死罪で認められることっていうのを、きょう、そういった判決になったことは、とても大きなことだと思います」
一方で、「懲役8年」という量刑については、次のように語りました。
小柳憲さんの姉・長文恵さん
「(被告が)罰せられればいい、というだけの判決ではなくて、今後、抑止にならなければならないっていうところでは、量刑はこれでいいのか、というのはありますし」
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「危険運転」で懲役8年。この判決が持つ意味は─。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「『過失致死』で起訴して有罪だとしたら、おそらく判決は3年くらい。『危険運転致死』で起訴したからこそ、7年を超える判決。その意味では(懲役8年は)倍になっているから、危険運転致死の認定は、重要な意味を持っている」
遺族らの署名活動も大きかったと指摘します。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「署名が多いということは、多くの人が、危険運転でなぜ起訴しないんだという意見を持っている。署名活動によって『危険運転』が適用できるかどうか(検察は)追加捜査をやることになった。ここが大きいと思います」
今回、適用されることとなった「危険運転致死罪」を巡っては、法定速度を大幅に超えた猛スピードでの運転や、飲酒運転などで死傷事故を起こした場合でも、故意に危険な運転をし、人を死傷させる事故を起こしたと認められる場合にしか適用されず、遺族などから「要件が厳しい」という声が上がっています。
そこで、法務省の検討会では、見直しの議論が進められていて、27日、報告書がとりまとめられました。
その中では、“数値基準を設ける案”が提示され、猛スピードでの運転については、道路の最高速度の「2倍」や「1.5倍」。飲酒運転については、呼気1リットルにつき「0.5ミリグラム以上」や「0.25ミリグラム以上」などとすることが、考えられるとしています。
数値基準を設ける考えについて、長さんは、“危機感もある”としました。
弟を事故で亡くした長文恵さん
「その速度に満たない部分について、悪質なものは拾い上げられるようなものにならなければ、もっと(適用範囲が)狭いものにもしかしたらなるかもしれない、という危機感もある。そこは慎重にすべき」
こうした懸念点に、どう対応するかも含め、今後、法務省では、法改正の必要性などについて検討を進めるということです。
(11月28日放送『news zero』より)
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